インフルエンザワクチン接種の副作用はあまり心配ないけれど注意が必要な場合もある

インフル副作用



凄まじいインフルエンザの猛威とワクチン接種

今年も冬が到来しインフルエンザを警戒しなければいけない季節となりました。インフルエンザは普通の風邪と比較すると結構重症化するケースも多いです。

事実、ギリシャ時代の太古からそれらしき記録が残っていて、今までにずいぶん多くの人が亡くなっています。

特に大流行した年は大変で、20世紀に入ってからも・・・

  • スペインインフルエンザ 1918〜1919年 全世界の約半分の人が感染し2000万人以上が死亡
  • アジアインフルエンザ 1957年 約200万人が死亡
  • 香港インフルエンザ 1968年 約100万人が死亡

なんとも凄まじい破壊力です。

こうやって改めて見てみると、日頃の体調管理や早めのワクチン接種が大切だと感じざるを得ません。

確かにそうなのですが、それはそうとして・・・インフルエンザワクチン接種副作用ってどうなのでしょうか?

  1. 副作用の種類と症状 軽い場合と重い場合?
  2. 副作用の症状と対処の方法?

 

インフルエンザが怖いゆえワクチン接種の効果を期待する反面、こういった副作用の心配をされる方も多いと思います。

そこで今回は、副作用についての理解をしていきたいと思います。

副作用と副反応

ワクチン接種について調べていると、「副作用」という単語は使われず「副反応」というあまり見慣れない言葉が利用されています。

実はこの「副作用」と「副反応」の意味は同じです(内科医に確認済み)。じゃあなぜ使い分けをしているのでしょう?

  • 副作用・・薬のように科学的作用を体に及ぼす場合
  • 副反応・・ワクチンのように生体反応がおこる場合

 

素人は「あっそうなんですね」と言わなきゃしょうがないですが、こんな区別に意味があるのでしょうか?(先出の内科医は「積極的な意味はない」と言ってました)

この記事では「副作用」で通します。

 

 

 

インフルエンザワクチン接種による副作用

ワクチン接種の目的は、ターゲットになるインフルエンザウイルスが体内に侵入してきた時に感染しないよう(しにくくするよう)に抗体を作ることにあります(インフルエンザウイルスの種類は多い)。

しかし、ワクチン接種は都合の良い免疫反応だけを起こすとは限りません。ある一定の割合で、アレルギー反応(のような)を起こすことがあります。

ワクチン接種後の副作用としては大きく分けて・・・

  • 局所反応
  • 全身反応

の2種類があります。具体的には下記の通りです。

 

局所反応

  • 注射をした周囲が赤くなる
  • 注射をした周囲が硬くなる
  • 注射をした周囲が痛くなる

おおよそ接種された方の1〜2割程度で見られます。一番目と三番目は私も経験があります。

 

全身反応

  • 注射をしてから発熱や頭痛や倦怠感がおこる
  • 注射をしてから関節痛がおこる
  • 注射をしてから下痢になる

おおよそ接種された方の0.5〜1割の方に見られます。

何れにしてもこれらの症状はワクチン接種後数日の間にあらわれ、一般的には軽度で特に処置しなくても2〜3日で消滅します。

ただ、ご自分の判断で「ちょっと心配だ」と感じた場合は躊躇しないで医者に行って見てもらいましょう。

 

 

 

注意すべき副作用

現在利用されているインフルエンザワクチンは従前に比べ大幅な技術進歩によって重い副作用は相当に減っています。そして現在も改善のための研究努力は日日なされています。

とは言え、極めて稀ではありますが、非常に深刻な副作用が完全になくなったわけではありません。一応知っておいた方がいいと思います。

 

ギランバレー症候群 

ギランバレー症候群の代表的な症状は、まず手足の痺れから進行的に筋力が低下していき、四肢が不自由になっていくというものです。

最初は手に力が入らない、腕を上げてられない、階段を登りづらいなどの症状が出て、やがて少しずつ進行していって、症状が重症化して行きます。

ピークは発症後だいたい2週間から4週間後で、症状が呼吸筋に及ぶと、人工呼吸器による管理が必要になったり、誤嚥(飲み込んだものが食道に行かずに肺に行く)対策が必要になったりします。

 

しかし、こういった重症化の可能性にも関わらず、多くの場合はピークを境に回復に向かいます。

一方、重症化したり回復しても「疲れやすい」などの症状が残る場合もあります。

その他症状としては(発症の割合はともかく)体の様々な部分に及び、

  • 顔面であれば顔面神経麻痺・眼球運動障害など
  • 自律神経系に症状が出れば血圧や脈拍など

というような異常が出ます。

ワクチン接種をして100万分の1〜2例程度の確率で発生すると考えられていますが、症例が極めて少ないために明確な因果関係を特定・結論づけるのは難しいという状況です。

 

発症の原因

どうしてこのような症候があらわれるのでしょうか。

一説には、ウイルスを攻撃するためにできた抗体が自分の体の末梢神経に異常な免疫反応を示すというのがあります。いわゆる自己免疫ですね。

自己免疫は自分の体(の細胞)を攻撃すべき敵と間違えて免疫効果を発揮しようとするもので、非常に厄介です。

しかし、原因全体については不明な点がまだまだ多いようです。

いずれにしましても、おかしいなと感じたら重症化する前に主治医に相談に行くことがもっとも大切なポイントです。

 

 

 

アナフィラキシー

臓器の症状を伴う全身にあらわれるアレルギー症状です。

  • 血圧低下
  • 呼吸困難
  • 腹痛

などを伴い、全身の発疹や浮腫が現れます。そして、単発で発症する・・

  • 喘息や息切れ
  • 頻脈やパニック
  • 血圧低下や失神

などとは区別されます。

ワクチン接種が原因で発症する場合は接種後30分程度という早い段階が多いので、もしできるのであれば接種を受けた場所(病院)で一定の時間はそのままいた方が(様子見)いいです。

アナフィラキーの恐ろしい点は、非常に短時間のうちに(激しい)全身アレルギー症状が出て、場合によってはアナフィラキー・ショックといって生命が危険に晒されることです。

 

発症の原因

アレルギー症状の一種なので一般のものと原因物質はかぶります。

  • 食物
  • 虫刺され
  • 医薬品
  • 身体的な要因

インフルエンザワクチン接種の場合は、ワクチンにアレルギー反応を示しているわけです。

インフルエンザワクチンと鶏の卵

インフルエンザワクチンは鶏の有精卵を使って製造されるので、鶏卵アレルギーがある人には使わない方がいいという考え方があります。

しかし実は、出来上がったワクチンに残存する卵白量は10ng/mlという超微量です。ちなみに1ngとは10億分の1gのことです。

したがって接種してもアレルギー反応を起こす可能性はほとんどなく、事例もほとんどない、という医者もいます。

老齢者や幼児がインフルエンザにかかった場合には重篤になる可能性が高いので、考え方として「何を選択するのが大切なのか?」ということでもあります。

もちろん医者から十分な説明を受けて納得して治療の選択をすること(インフォームドコンセント)が大前提なのはいうまでもありません。

 

副作用疑いとして報告義務のある症状

ここでご説明しました「ギランバレ症候群」と「アナフィラキシー」も含め、ワクチン接種後の副作用疑いとして報告が義務付けられている症状は次の通りです。後ろの数字は発症までの期間。

  1. アナフィラキシー 4時間
  2. 喘息発作 24時間
  3. 痙攣 7日
  4. ギラン・バレ症候群 28日
  5. 急性散在性脳脊髄炎 28日
  6. 脳炎・脳症 28日
  7. 脊髄炎 28日
  8. 視神経炎 28日
  9. 血小板減少性紫斑病 28日
  10. 血管炎 28日
  11. 肝機能障害 28日
  12. ネフローゼ症候群 28日
  13. 間質性肺炎 28日
  14. 皮膚粘膜眼症候群 28日

出典「厚生労働省 インフルエンザQ&A」

 

 

 

副作用による死亡例と因果関係

インフルエンザワクチン接種に起因する死亡として医師から報告されているのは、2009年10月から2016年4月の間で、新型季節性を合わせ15例です。

しかし、これらについて副反応検討部会における検討では、ワクチン接種との明確な因果関係が認められる症例はありません。

これらの死亡例につきましては、その多くが基礎疾患を持っている高齢者でした。

ちょっと脱線になりますが、ここから基礎疾患と新型インフルエンザ予防について少しお話をします。

 

基礎疾患と新型インフルエンザ予防

基礎疾患とは色々な疾患の原因となっている病気のことです。

非常に種類が多いのですが、その中で新型インフルエンザのワクチン優先接種の対象になる基礎疾患があります。

それは9つに分類されており、かつ通院中or入院中の方が対象になります。優先される理由は、もしかかってしまった場合重症化するリスクが高いためです。

 

優先接種の対象となる9つの基礎疾患

  1. 慢性補給機疾患
  2. 高血圧を除く慢性心疾患
  3. 慢性腎疾患
  4. 慢性肝炎を除く慢性肝疾患
  5. 神経疾患・神経筋疾患
  6. 一部を除く血液疾患
  7. 糖尿病
  8. 疾患や治療に伴う免疫抑制状態
  9. 小児科領域の慢性疾患

 

優先接種グループの中での最優先接種グループ

ワクチンの供給量が十分でない場合は、以下の最優先グループを対象に先に接種します。

  • 基礎疾患を持っている1才から小学校3年生の子供
  • 「新型インフルエンザワクチンの優先接種の対象とする基礎疾患の基準」における該当者

以上、基礎疾患と新型インフルエンザの優先接種に関する詳しい説明が厚生労働省から出ています。

 

今回の副作用を含め、以下の厚労省の説明文が非常にわかりやすく役に立ちます。

「平成29年度インフルエンザQ&A」

インフルエンザに関する様々な疑問に対し、厚生労働省が34の質問と答えとしてまとめています。

 

 

 

「危険」過大アナウンスの功罪

ワクチン接種に起因する副作用は確かにあり、ごくわずかの割合で重篤な障害も発生しています。

しかし、「ごくわずかの割合」にのみスポットライトを当てて強調し、それがインフルエンザワクチン否定に繋がるならば大きな問題ではないでしょうか。

実際に日本では過去、マスメディアがインフルエンザワクチン不信や不要論を垂れ流し、これがきっかけとなってワクチン接種率が大幅に下がったことがあります。

 

インフルエンザは一般的な風邪とは違い非常に危険です。過去世界的な大流行で恐るべき数の人たちがなくなっているのは上述の通りです。

一方、残念ながらインフルエンザワクチンは完全ではありません。ワクチン接種をしても感染し発症する人はいます。

でも研究によると、ワクチン接種を受けずに発症した人の75パーセントが、もしワクチン接種していれば発症せずに済んだ、と説明しています。

ワクチン接種の効果が一定以上に大きいことは世界的にわかっています(特に高齢者)。

 

完全を求めて多くの人を危険に晒すより、不完全でも大勢を危険から守り、死者を増やさないことの方がよっぽど大切ではないでしょうか。

 

 

 

(おまけ)マスク着用で予防できる?

インフルエンザウイルスの多くは4μm(0.004mm)以下の大きな(小ささ?)だそうです。これの出入りをマスクが妨げられるか?という話ですね。

ウイルスを含むツバ飛沫(目の前の人のくしゃみなど)などに含まれるウイルスは防ぐことができるでしょう。

しかしそうした場合は、マスクの取り扱いに気をつける必要があります。

マスクを取り外す時には手を使いますから、マスクに付着したインフルエンザウイルスが手に付着する可能性があります。したがって手をよく洗わなければなりません。一緒にうがいの励行も必要ですね。

一度使用したマスクはインフルエンザウイルスが付着している可能性があるわけですから、取り外しのつど即捨てて(その手を洗い)、次回は新しいマスクを着用する必要があります。

ということから、単に「マスクをする」だけではなくそれ以外のこともセットで励行して、初めてマスクの予防効果が発揮されるのではないでしょうか。

 

 

 

まとめ

インフルエンザウイルスのワクチン接種と副作用についてお話ししてきました。

どのようにお感じになられたでしょうか?

副作用は確かに発生します。でも、ほとんどは2〜3日に症状が消える軽症で、稀に重症化しても体がもとどおりにならないことは殆どないようです。

医師に報告義務がある重篤例や死亡例は、数が少なく且つ因果関係も明確ではないケースがほとんどのようです。

 

一方繰り返しになりますが、インフルエンザにかかって多くの人たちが命を落としてきた歴史を鑑みると、ワクチンが果たしてきた功績がとても大きいのは間違い無いでしょう。

私見ですが、特別な例に当てはまらない限り、インフルエンザワクチン接種は積極的に受けるべきだと考えています。

もちろんその際、事前に質問シートを渡されたら自身の状態は正確に記すべきですし、不安が少しでもある場合は十分なインフォームドコンセントに基づいて接種を受けるのがベストです。

そして接種後、何か気になる異変が体に生じた場合には躊躇わずに医者に判断を仰ぎましょう。

 

最後に、手洗い・うがいと早め早めの対処で、辛い風邪ひきやインフルエンザで苦しまないよう、健康で冬を乗り切りましょう。



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