目 次
はじめに
長期借り入れ前提で家の購入計画を立てていると、フラット35という単語がよく目に入ってきますよね。国の施策としての長期住宅購入用貸付。
これって民間の固定金利型長期住宅ローンと比べてどうなんだろうって疑問に思ったことありません?
そこで今回は比較検討をして、それぞれの特徴とメリット・デメリットを確認していこうという趣旨です。
金利推移グラフで確認するまでもなく現在が歴史的な低金利時代であるとあなたはよくご存知なわけです。だからこそ非常に魅力的に感じる超長期固定金利住宅ローン。購入意欲をより一層後押ししますね。
しかし一方、住宅購入には本体価格以外に唖然とするほど多くの出費が付いてきます。だから、予算を組む時にはその辺を心得て金融機関を選ぶ材料にして、他方、絶対に省いてはいけない費用もあることを理解してください。
ではその辺も踏まえながら早速見て行きましょう。全て2015年10月の資料を基にしています。今回は超長期の固定金利住宅ローン商品の比較を中心にした様々な問題を解説します。
フラット35と住宅ローンの具体的な比較
銀行の住宅ローン金利が銀行ごとに違うように、フラット35の金利も取扱金融機関によって違います。今回は漫然としないように且つ借り手に有利だと考えられる金融機関を2つ選んで、まずそこで比較検討をします。
フラット35取扱金融機関として楽天銀行、住宅ローン取扱銀行としてソニー銀行を選びました。特定の地域ではより有利な条件の金融機関があるかもしれません。
各金融機関が期間限定で次から次へと優遇措置を打ってきていますので、まめにチェックする必要があります。
- 借入期間 30年
- 借入金額 3,000万円(物件価格100%借入とする)
とします。
- 年利 1.872%
- 事務手数料 43,200円
- 保証料 0円
- 団体信用生命保険料 0円
- 総支払金利+当初手数料等=9,241,758+43,200=9,284,958円(ボーナス返済なし)
- 年利 1.72%
- 事務手数料 324,000円(3,000万円×1.08%但し返済口座を楽天銀行に指定が条件)
- 保証料 0円
- 団体信用生命保険 最初107,300 月平均4,954円(合計1,783,400円)
- 総支払金利+当初手数料等=8,423,520+324,000+1,783,400=10,530,920円
以上から 10,530,920円-9,284,958円=1,245,962円 という大差でソニー銀行が有利になりました。
意外なところや細かいところに変な縛りがあったりして自分の希望どうりにならない、或いは申し込みそのものができないケースも普通にあります。その辺のところを詳しく次に見て行きましょう。
比較検討する際のポイント
フラット35や金融機関を比較検討する際に、いくつか覚えておくべき或いは気をつけるべきポイントがありますので、それを述べて行きます。
審査基準(勤務年数・最低年収)
フラット35では特に基準はありません。一方銀行は細かい基準を設けています。
具体的には、フラット35では年収が基準に達しているかどうかが問われ、勤務年数や勤務先については重要視していないようです。
一方銀行では、今ある年収が今後も安定しているかどうかを重要視します。ですから、勤務年数や勤務先は重要になってきます。
この差でフラット35の方が審査基準が低いと言われてるんだと思いますが、直接電話で確認した感じでは一概に低いとも思えませんでした。
ただ審査基準が違うということは、銀行の住宅ローンはダメでもフラット35は借りられる、ということはあると思います。
審査基準(建物)
銀行の住宅ローンの建物に対する条件は各行まちまちですが
- 法的に制限のかかっている土地
- 借地
の上にあるといった場合を除いては、基本、特にないはずです。
ところがフラット35では
- 建物の床面積
- 耐久性
- 断熱性
などに基準を設けていて検査を受けなければなりません。そして検査の結果「適合証明書」の発行を受けられることが絶対条件です。
そういう意味では銀行住宅ローンの方が審査基準が低いと言えます。
融資形態
一般的にフラット35は検査合格済みの完成した住宅に対して融資を行いますが、それでは注文住宅のように土地を購入してから家を建てる場合はどうなるのでしょう?
フラット35でも取り組み自体は可能ですが、完成して適合証明書が発行されるまでは、そもそも申し込み自体ができません。
そこでその間に必要な資金は、つなぎ融資として取扱金融機関に依頼します。条件はそれこそまちまちなので、必要な場合はあなたに合った銀行を探しましょう。あくまでも取扱金融機関次第です。
最初にそういう計画要望で申し込みができて審査さえ通れば、つなぎ融資でその都度実行してゆくので、困ることはありません。
借地権付き住宅ローン
地主がいる借地に立てた住宅を購入する場合です。
一般的に銀行住宅ローンでは厳しいケースが多いです。公共団体など安定安心できる地主であれば通りやすいですが。実際にできたケースもたくさんあるので否定しているのではありません。
フラット35の審査はそこまで厳しくはありません。土地に抵当権設定ができるか、或いは火災保険に質権設定ができるなどの条件が揃えば可能です。
借入総額の限度
フラット35は家の購入価格が上限です。それに対し、銀行の住宅ローンはまちまちで、購入価格以外にかかる手数料や登記費用や保険料や引っ越し代まで融資するところもあります。
上の具体例では購入価格を100パーセント借りることにしてますが、フラット35は借入金額が購入金額の9割を超えると金利が上がり審査も厳しくなると言われています。
これは恐らく貸し倒れ比率が上がるからだと思われます。
限度の違いは、フラット35は優良住宅購入推進目的の国の施策で住宅ローンは民間企業の事業というスタンスの違いでもあります。
金利について
フラット35では、
- 借入期間が20年を境にして変わり21年以上だと高くなります。
- 借入金額が物件価格の90%を超えると金利が上がります。
基本的には同じですなのですが、各行で少しづつ違いがあります。特に借入比率は要件にならないところもあります。
借入金利そのものが毎月動く可能性があるので、比較サイトの情報などを鵜呑みにせずに、必ず各金融機関のサイトで確認することが必要です。
基本的に、今回対比させている超長期金利は銀行の住宅ローンよりもフラット35の方が安いです。
何らかのディスカウントについて
取引内容により金利がディスカウントされる場合があります。今回の例に使っているソニー銀行は
- 外貨普通預金口座開設
- 積み立て定期預金
- 円定期預金
- 給与振込
のいずれかをすると、なんと1%もディスカウントを受けられて1.872%になります。
楽天銀行は返済口座を楽天銀行にすることで手数料率の減免が受けられます。
これも各行いろいろなので、個別に確認する必要があります。
保証料について
一般的に銀行個別の商品である住宅ローンでは保証会社に保証料を支払わなければならないケースがあります。メガバンクなんかはほぼそうですね。
保証料はだいたい借入金額の2パーセント(+税金)が目安で、かなり大きな支払金額となります。そういう意味では今回ご紹介したソニー銀行のように保証料なしは大きな魅力です。
というか、保証料だけで何十万円も取られるのであれば、もうそれだけで選択肢から外れるのではないでしょうか。
手数料
いづれにしても必ず徴求されます。ふた通りの決め方があって、最初から決まっている固定金額である場合と融資金額に一定の料率を掛けた金額です。
各取扱金融機関によって相当にばらつきがあるのでよく見なければなりません。
保証料に加えて保証会社手数料とか、今回の例のような超長期固定金利を使う場合は固定金利手数料とか、ほとんど意味不明な手数料まで取られるケースもあるので要注意です。
フラット35の手数料は今回例示した楽天銀行のように融資額に一定率をかけた金額の場合と定額のふたとおりですが、適用金利と手数料の定額・定率が選べる金融機関もあります。
死亡保険と火災保険
死亡保険
いわゆる団体信用生命保険(略して団信)に関してですが、これはどんな住宅ローンでも必ず加入する必要があります。
その料金が金利に含まれているのでほとんどの人は負担感・違和感がないはずです
問題はフラット35。今回の例でもわかるように実費です。今回の例では総額 1,783,400円です。初年度支払いが107,300円で借入残高の減少に伴って少なくなっていきます、月平均にすると4,954円になります。
総支払金額が大きいので申し込み人としては非常に躊躇するところです。
しかも困ったことに
住宅金融支援機構の利用条件には「ご加入をお勧めしています」と絶対条件にはしていないんですね(取扱金融機関で条件にしているところはある)。非常にわかりにくい!
これは微妙なので直接機構に問い合わせをしました。その結果を申しますと「加入しなくてもいい」ということではなさそうです。
健康上の理由で団信に加入できなくても、それだけを理由として拒否することはないということで、つまり健康に問題がなければ入ってください、ということらしいです。じゃあそう記載すればいいのに。
もし、団信非加入で申し込みをしたら審査は厳しくなると思います。
私見ですが、もし健康であるならばこれは必須です。申し込み人が任意で死亡保険に入ったらいいというものではありません。
借入人が死亡しても借入残額を保険会社が代替支払をして相続人に及ばないようにする仕組みを作っておくことが大切だ、という認識は是非持っておいてください。
機構の利用条件の文言には首をかしげるし、団信の支払総金額が大きいこともキツイなと思います。でも、どうしても必要な経費であってこれを削るわけにはいきません。
火災保険
火災保険については、ほとんどの銀行住宅ローンでは借り手の任意です。だから加入してもしなくても、それが借入要件にはなりません。
以前は火災保険加入は必須で、更にこれに質権の設定をされていました。
つまり、住宅ローン成立必須要件として火災保険契約が必要であった理由は、火災にあった時に借入金残額を保険会社が銀行に返済するためだったのです。
これは相当に酷い話で、ローンは消えても、家は焼失しているしどうやって生活するのだ、ということになります。もちろん現在は違います。
これに対しフラット35については火災保険は必須です。しかし火災保険の契約は借り手が自分ですることなので、その内容については保険金額が借入金額以上であるかどうかのチェックを受けるだけです。
そしてフラット35でも、借地権付きの土地に建つ家というような例外を除いては、火災保険に質権を設定されることはありません。
しかし、具体的な手続き確認についてはまたもや曖昧に感じたので機構と取扱金融機関の両方に聞きました。その結果
- 機構は、火災保険についての直接の関与はしない
- 取扱金融機関は1件に聞いただけですが、火災保険申し込み書のコピーをもらうとのことでした
「必須」という割には管理が甘い気がします。焼失した時に家を再築し、借入人やそのご家族が困らない手続きを「必須」とするなら、せめて保険証書のコピーぐらいはとってもいいように思います。
火災保険契約についての詳しい考察記事は別に作成していますので、そちらをご覧ください。
(→本当に役に立つ火災保険の選び方 オススメのポイントとは)
比較サイト
たくさんありますが、見やすいサイトとして下の2つを推薦します。
フラット35取扱金融機関の比較サイト。金利の低い順や総支払額の低い順でソートできるので見やすいです
http://www.flat35.com/kinri/index.php/rates/top
一般的な住宅ローンの比較ではこちらが見やすいと思います。
http://kakaku.com/housing-loan/
まとめ
超長期の住宅ローンを、フラット35と銀行住宅ローンの比較で考えてきました。今回例示した中ではソニー銀行の圧勝でした。
もちろん双方横綱級を選んだつもりですが、すべての人にフィットするわけではないでしょう。たくさんある条件を確認して、あなたに合ったローンを選んでくださいね。
比較考慮すべきは大別して、総支払経費の大きさと審査条件の2つです。
総支払経費は
- 金利だけではなく
- 各種事務手数料
- 保証料
- 団体信用生命保険料、
- 火災保険料などがあります
一方審査条件に関しては、
- 借入金額
- 借入年数
- それにプラス自分の属性ですね。勤続年数、年収、既婚もしくは未婚などなど
必ずしもあなたの思うように申し込みができない可能性もあります。そのような場合は、
- 金融機関を変更したり
- 住宅ローンをフラット35にしたり
- 住宅の購入金額を落としたり
変更を検討する必要が出てくるでしょう。
しかし無理をしないでください。後悔先に立たず、とも言います。いつでも立ち止まって仕切り直しをする勇気を持ってくださいね。
住宅ローン関連記事
コメントを残す