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雄大な太魯閣峡谷
今回の記事は花蓮県の太魯閣(タロコ)峡谷のご紹介です。まさに絶景中の絶景で、ここを絶景と表現しなかったら「絶景」という単語を使うところがなくなってしまう、というくらいの場所です。

太魯閣国家公園(国立公園)は地図のオレンジ色部分で、花蓮県・台中市・南投県に跨っていますが、太魯閣峡谷は、この太魯閣国家公園の中にあります
太魯閣国家公園は非常に雄大で、その中には台湾百名山のうち南湖大山をはじめとする27座もの美しい山々が連なっており、また立霧渓や陶塞渓、砂卡礑渓といった川が厳しくも美しい渓谷を作っています。
台湾の高山
長い間知らなかったのですが、台湾には3,000m以上の山が実は164座もあるのです。九州ほどの大きさしかない台湾にこれだけ高い山があるのです!

その中で一番高いのは玉山で日本統治時代には新高山と呼ばれていました。玉山の高さは3,952mで、なんと富士山より高い山です。だから日本人から見れば「新高山」ですね。
ちなみに日本の3,000m級は何座あると思いますか? 実はたった21座です。なんか信じられないですけれどね、でも事実なんです。
さて、太魯閣国家公園って「山があって川や谷があって綺麗ね」だけじゃない世界に類を見ない光景が広がっているのです。
それが今回紹介する立霧渓流域に広がる太魯閣峡谷です。

立霧渓流域は河口から直線距離で僅か40kmほどで3740mを誇る南湖大山に到達しますが、水源の標高も3440mと高く、これは一帯が如何に急角度で高低差を作っているかを表しています。
ですから流れが非常に急で侵食をする力が強く、深い峡谷を形作る大きな要因となっています。
しかしそれだけでは、世界に類を見ない景色を形成することはできません。何が世界の人々を引きつけているのでしょうか?

実は、太魯閣峡谷を世界的に有名にしているのが、山一面総大理石という地質です。「天祥」から川下にかけての峡谷で総大理石の贅沢な風景が楽しめるのです。
大理石地層は硬いので風化によってなだらかになってゆくことがなく(遅く)、上下どこまでも切り立った風景が残されています。
今回は太魯閣峡谷観光として定着している中部横貫道路の入り口から天祥あたりまでを、いくつかのスポットとして分けてご説明していきます。
また、この辺は多くの遊歩道があるのですが、そのうち、特に綺麗で、でもほとんどの日本人が知らない白楊歩道についてもお話しします。
その前に・・・まずはアクセスのお話をしなくちゃいけませんね。
花蓮へのアクセス

花蓮への行き方については次の3通りの方法があります。
- 台北駅から花蓮駅まで特急電車に乗る
- 台北市内から羅東駅までバス、羅東駅から花蓮駅まで台湾鉄道の普通列車に乗る
- 松山空港から花蓮空港まで飛行機を利用する
では一つずつ見ていきましょう。
特急列車で行く

事前にネットで購入をしておいて、当日、駅の自動発券機でチケットを受け取り、そして特急列車に乗って花蓮まで行くプランです。
これが一番ポピュラーな方法ではないかと思います。
- 日本でネット購入・カード支払いが完了する(往復とも)ので非常に安心です。
- 本数が多いので時間の都合がつけやすいです
さて、特急列車は3種類ありまして・・・
- 太魯閣号
- 普悠瑪(プユマ)号
- 自強号
このうち自強号(通常の特急)は利用しないことを強くお勧めします。その理由は以下の通りです。
- 太魯閣号と普悠瑪号は全席指定なのですが、自強号は立ち席券(無坐票)があり指定席車両にも立ち席の人が普通に入ってきます。
- もし席が空いていれば立ち席券の人が座ってもよいとの了解があります。
- 土日祝日ともなると立ち席客でぎゅーぎゅーになることもしばしばで、目の前に立っている人が健常者でない場合は座っているのが辛くなる場合もあります。
- 太魯閣号と普悠瑪号は台北ー花蓮間を2時間で結びますが、自強号は2時間半〜3時間くらいかかります。
これだけ条件が異なるのに料金は同じです。なので自強号を選択する理由がありません。もちろん自強号以外に選択肢がなければしようがないですが。
バスと普通電車で行く
- 台北市内からバスで羅東まで行き
- 羅東駅で台湾鉄道の普通列車に乗って花蓮へいく
という方法です。
一見変なチョイスですが、2つの理由で選択肢となりえます。
- 料金が209元〜222元と安い(特急料金440元)
- 乗車時間が2時間半くらいで自強号の利用と比べさほど遜色がない
バス利用は大幅に時間がかかりそうなものですが、そうならない理由は「雪山隊道」という長いトンネルが出来たおかげで、大幅ショートカットをしているからです。
鉄道が四角形の3辺を通るのに対し、バスは1辺を通るような感じです。グーグルマップで確認して見てください。
運行しているバス会社は以下の4社で発車場所と料金を併記するとともに各会社サイトのリンクも貼っておきます。尚、乗車券はそれぞれの発車場所で購入できます。都合のいいバスを利用してください。
帰りの利用
帰路もこれを利用する場合の乗車券購入は、台湾鉄道の花蓮駅か新城駅か吉安駅の発券窓口で購入できます。
紙に書いて窓口に見せて。その際、必ずバス会社名を明示してください。例えばこんな感じで(「全票」は大人、「孩童票」は子供)

注意点
- 乗り継ぎがあるのでトータルでの時間は乗車合計時間よりかかります。
- 土日祝日は道路が混むので、より時間がかかる可能性が大きいです。
飛行機
台湾の友人が「国内線は使うな」とうるさく言うので利用したことはありませんが、飛行機という選択肢も当然あります。
飛行機なら松山空港から花蓮空港まで50分なので大幅に時間節約ができます。
当然特急列車よりも高いです。便数も限られているので、それでも都合が合って且つ時間優先ならいい選択肢でしょう。
但し、最も天気に左右されるので、その点は留意が必要です。
サイト内は英語か北京語しかありませんが、北京語選択で大丈夫です。特に難しいところはないと思います。1回予約手順を踏んで要領を覚えておくと以後助かりますよ。
予約を進めて行くとチケットの種類を選択する画面になります。こんな感じです。それぞれの金額にカーソルを持って行くと詳細説明が出ます。

このうち利用できるのは・・・
- 「全額票」 一般販売価格
- 「促銷優惠票」 プロモーション価格(便変更やキャンセルで縛りがある)
- 「兒童票」 子供料金(2歳未満は無料)
の3種類です。「信用卡優惠票」は台湾国内特定カードの指定があるので利用できません。
さて、花蓮までの交通手段は決まりました。いよいよ太魯閣峡谷の観光にいきましょう。ということで次は観光に使う交通手段のお話です。
太魯閣峡谷観光の交通手段
険しい山の中の観光は台北市内のお気軽観光とは趣を異にします。ですから、根本的な部分で少し考え方を変える必要もあります。
と、前置きをして交通手段の話ですが、いくつかの方法があります。どちらにしても制約が出てくるので、その辺を踏まえて選択してくださいね。
バス
1.乗車場所
花蓮駅の西側(乗ってた列車の進行方向に向かって左側)改札を出て左側に派手なオレンジ色をした花蓮客運の建物があります。ここで乗車券を買い乗ります。まずは、オレンジ色の建物に行ってください。

2.路線と時刻表
台鉄花蓮駅から太魯閣峡谷へ行く場合のバスは、(新型コロナ以降かなり変わってしまって、花蓮客運のサイトも閉鎖されていてこの先どうなるのかわかりませんが、とりあえず今調べた限りでは)台湾好行の310ですね。
花蓮駅↔天祥なのでこのバスで大丈夫です。
バスは費用的には安くて済むのですが、ちょっと難しい点もあります。
太魯閣峡谷はなかなか広いです。ですから初めての人が太魯閣峡谷の入り口までバスで行って、そこからさっさと歩いて巡るというわけには行きません。
どうしても峡谷内の観光スポットから観光スポットへはバスを利用する必要があります。距離だけではなく、道路の大部分は歩行には適しておらずしばしば落石もあり危険です。(歩けないということではありません)
しかも、バスは1時間に1本程度で更になかなか時刻表通りには来ません。なので思うように行きたいように巡るのは難しい可能性が大です。
実際バス停で待っていると、望みのバスが行ってしまったのかまだ来てないのか不安になることがあって、まして天気が悪かったりするとかなり気が焦ることもあります。
更に、バス停がなかなか見つけにくい可能性もあります。
一番困るのは観光途中で道に迷うことです。判断に迷い、誰かとすれ違っても全く北京語を話せなくて、知りたいことの確認ができないのは、厳しい環境の中では辛いです。
以上のような事を含みつつ、あらかじめ乗り降りする停留所と観光スポットについて予習しておくことは必須です。
タクシー
太魯閣峡谷観光においてはタクシーを利用するのが一番いい方法だと思います。上の「留意すべき点」で述べたような不安事項が全て消えます。
しかし、タクシーを利用するにあたり非常に大切なことがあります。それは「運転手の資質」です。それが全てと言ってもいいくらい重要です。
- 日本語で意思疎通ができて(片言を喋れるだけでは話にならない)
- あなたの希望を理解してくれて
- 要所で丁寧に説明してくれて
- 注意すべき点を教えてくれ
- 急な悪天候や溢れる観光バスで渋滞を起こしても適切に対処でき
- 優しい運転ができる
こういう運転手が見つかればベストです。しかし、花蓮の駅前で見つけられるかどうかはわからないし、運も絡みますよね。
でも、簡単に諦めずに探す努力は必要です。
駅前では交渉になりますが、もしあなたが「いつまでも心に残る感動」を求めてくるのであれば、「最初に価格交渉」はダメです。
日本語が喋れる運転手に今日の希望などを話ししてみて、一日この人に任せられるかどうかを見極めることが先です。いい運転手はなかなか見つからないでしょうが・・・。
ネットを見ていると、よく絶対金額を話題にしている人がいます。「2,000元は安い」とか「3,000元は高い」とか。これは間違っていると思います。
価格の高い安いは受ける価値によります。たとえ3,500元であっても、その運転手から感動の一日をもらえるのであれば高くはないでしょう。
逆に酷いのに当たったら、たとえ1,000元でももったいないです。
有力な手段としては、ホテルに手配をしてもらうことです。
もし泊まりで行けば宿泊先でお願いをすることができますね。あなたの意思をはっきりと伝えることができれば、かなり質のいい運転手がくるでしょう。(この方法が最有力)
泊まりでなくても、ダメ元で駅前のホテルに「タクシーの手配をお願いできますか」と聞いてみるのも有力な案です。今グーグルマップで確認したら駅の東側すぐそばに3件くらいありますね。
山道は舗装こそされているもののそんなに広くなく、観光スポットだけれど車が駐車できないというケースが多々あります。
そういう場合はタクシーから降りて観光して、駐車地点まで歩いていく必要があります。1本道だから迷うことはありませんが。
晴れていれば適当に歩ける方がむしろ楽しいのですが、なんらかのご事情でそれが辛い場合もあるでしょう。
こういう時にちゃんと意思疎通ができないと、ちょっと困ったりする可能性が出てきます。
日本人による案内
バスでもタクシーでもありませんが、花蓮に住んでいる日本人に案内してもらう手もあります。花蓮に精通しており且つ日本人目線で説明をしてくれるので、観光になるし勉強にもなります。
もし条件が合えば、最高の一日を体験できるでしょう。一番安心して満足を得られるでしょう。
観光ツアー
すべての面倒から解放されたいあなた。そんなあなたには観光ツアーがオススメです。
台北の宿泊しているホテルでピックアップされ、特急列車(飛行機)も予約されており、現地では専用バスで観光案内(日本語)され、また台北のホテルまで送られ、というコースです。
まさに究極のおまかせ、面倒くさがり屋には重宝します。ここではトラベルコで検索した8件とJTBの商品1件をご紹介しておきます。
- 当然ながら自由が利きません。お仕着せですから。
- 純日本人構成はないと思っておいた方がいいです。他国の方と一緒になります。
- 案内役の日本語は喋れるというより文章を暗記している程度と割り切っておいた方が無難です。それ以上ならラッキーです。
当日朝になってから宿泊した民宿Ing B&Bのオーナーにお願いしました。
条件は「日本語をきちんと理解できる紳士」
民宿オーナーは日本語が全くダメなのでちゃんと通じてるか心配でしたが、来てくれた運転手と話をして納得。

黄鎮農さんという日本語世代(日本統治時代に生まれ日本語教育を受けている)の方でした。丁寧語を喋り、私の話は完全に理解してくれました。

タクシーの運転手ではなく、会社を退職後、観光案内を専門にやってこられました。
条件は9時から17時までで、料金は3,000元でした。
8時半に来られ、私が車に近づくと傘をさしかけてドアを開けてくれました。これは最後までそうで、降りるときも必ず傘をさしかけてドアを開け、そして傘を手渡してくれました。
そうそう、写真を撮っているときも傘をさしていてくれました。
地元民として太魯閣峡谷を熟知されていて、説明はとてもわかりやすく、質問にも丁寧に返してくれました。
花蓮駅と太魯閣峡谷入り口の中間地点あたりの露天商で、アップルマンゴー(まだ出回る時期ではないのでびっくり)や釈迦頭を買ってくださって、民宿のオーナー家族とありがたくいただきました。めちゃ美味しかったです。
そんなわけで、当日はかなりの悪天候であったにもかかわらず、黄さんの素晴らしい案内で楽しく過ごせました。最高のお人柄です。車を降りた時は5時半でした。
本当にラッキーで、とても価値ある3,000元でした。
一つだけ今でも引っかかってる別れ際の黄さんの言葉「最近は日本のお客様が少なくなって、喋りたくもない言葉を勉強して仕事しているのですよ」
ここまで、交通手段・観光手段についてあれこれ述べてきました。さあ、これ以降はいよいよ観光スポットのご案内です。
観光スポットの紹介

太魯閣峡谷の入り口

上の写真は「太魯閣峡谷」関連の記事には必ずセットになっていると言っても過言ではないほど有名な場所です。
ここから太魯閣国家公園がスタートすると同時に、台中への伸びる「東西横貫公路」の出発点でもあります。
横浜中華街の出入り口にあるような「牌坊」と呼ばれる門がとても印象的ですね。
個人も団体バスもここを素通りすることはありません。必ずここで写真を撮ります^^

写真右奥の橋を渡っていくと「太魯閣遊客中心」があります。「太魯閣遊客中心」は博物館のようなもので、太魯閣の自然について生態について学べます。とともに軽食とカフェも併設されてます。
展示内容はなかなか面白いのですが、スタート地点であまり時間を取られたくはないと考える人が多いのかな、地元の方の駐車場の意味合いが大きいのかな・・・のような気がします。

「太魯閣遊客中心」からは立霧渓に沿って上流方向へ砂卡礑隊道が伸びていて、トンネルを抜けたところが砂卡礑大橋です。

砂卡礑大橋は立霧渓から分岐した砂卡礑渓にかかっており、これを渡らず下に降りると砂卡礑渓に沿って上流に砂卡礑歩道が伸びています。
ここらに一泊してじっくりと太魯閣を観光する人にとって砂卡礑歩道は絶好の散策小径です。三間屋まで約4.5kmに亘って続いており、そこで行き止まりです。
かつては太魯閣族が通った道、そして日本統治時代に拡張して物資輸送に利用した道。ここはそういう道です。
太魯閣遊客中心
電話:03-8621100
住所:花蓮県秀林鄉富世村富世291号
料金:無料
開館時間:8:30〜16:45
休館日:毎月第二月曜日(祝日の場合は翌日)
観光局ホームページ:太魯閣遊客中心
台湾を東西に抜ける道路として、そして「牌坊」で有名な中部横貫公路。1957年7月に着工し1960年5月に全線開通しています。
これがあるおかげで私たちも太魯閣峡谷観光をできるわけですが、この道路はいろんな意味で強烈なインパクトがあります。
素掘り
道路を入り口から少し進んでいくと、ノミと金槌だけで素掘りしたトンネルに入りますが、あり得ないですよね。いくら人海戦術とはいえ、これは厳しかったでしょうね。
落石
落石が極めて多いです。台湾に来る台風は花蓮あたりから上陸するので太魯閣峡谷は風雨に思いっきり晒されますよね。いつもそこかしこが進入禁止になっていたり工事中だったりします。
高山越え
中部横貫道路は、台湾を南北に貫いており台湾アルプスと言っても過言ではない高い山を越えて台中側に出る全長193kmの道路です。

その最高点は「武嶺」というところで、なんと海抜3275mもあります。なんの予備知識もなくバスに揺られてここを通過するとえらいことになりますよ。空気は薄いし寒いし。
前身
中部横貫道路の前身は日本統治時代に作られた「理蕃道路」です。「理蕃」とは原住民に対する制圧政策を意味し「理蕃道路」はそういう目的で作られた道です。
燕子口

太魯閣峡谷は一面大理石と申し上げましたが、正確には、そこにいくつかの変成岩も混ざっています。
さて、ここでご説明する燕子口で峡谷の地質が変わっており、それより下流はV字型で、燕子口ではU字型になっています。岩の硬度が違うんですね。

燕子口では崖壁にポットホールと呼ばれる沢山の穴が空いています。ここにツバメが巣を作るという伝説から「燕子口」と言われてますが、実際にはツバメは巣を作りません。
その理由は・・・
- 穴が浅すぎる
- 穴の湿度が高すぎる或いは湿っている
という2点にあります。もし燕が舞っているのを見たら、それは峡谷を気流に乗って飛ぶ昆虫を取りに来ているのです。

ところで、この燕子口はよく見ると、やや上を向いているものとやや下を向いているものがあって、それぞれ出来る過程が違います。
- 上向きの穴 昔、比較的柔らかい地質の川底が、水流や運ばれて来る大小の石・岩により削られて次第に窪みができ、これが地殻変動によってガバッと持ち上がった。
- 下向きの穴 岩壁中に雨水が溜まって、それが滲み出て来ることを繰り返し、その浸食作用で穴ができた。
当然一朝一夕にできるはずもありませんが、上の方の穴は、なんと今から500万年以上前に出来たそうです。
もし現地に行かれたら、よく観察してみてください。こんな景色はそうそう見られるものではありません。
旧道遊歩道
燕子口観光の区間は1.1kmくらいの歩きとなります。
入り口となる下燕子口から車専用の新しいトンネル道路ができており、旧道は今は遊歩道担っていて車は入れません。

ですから、燕子口もさることながら、まさに血と汗の結晶である素掘りの跡をじっくりと見ることができます。
あなたを下ろした観光バスやタクシーは1.1km先、遊歩道終点の錐麓断崖のところで待機しています。なので特にタクシー観光の場合、もし歩くことが出来ない或いは嫌な場合は、燕子口や九曲洞到着前に運転手に伝えておく必要があります。
錐麓断崖

旧道遊歩道の終点に広がるのは高さ600m幅1200mの巨大一枚岩。この強烈さはあまりにデカすぎて写真ではお伝えできません。
しかもこの巨大岩、垂直を通り越して更にこちら側に10°傾いています。
動画を撮影したりもしたのですが、その圧倒的な凄さをお伝えすることが出来ません。もうこれを感じるためにはあなた自身がそこに立つしかありません。
九曲洞

錐麓断崖に続いて、九曲洞です。ここも旧道の歩行専用遊歩道で長さは(全部歩ければ)約2kmです。
峡谷の幅が次第に狭くなってきて、この辺が一番狭く、言い換えれば向こう側が一番近くよく見えるポイントになります。
向こう側の岩壁の幾重にも重なりうねった層を見ていると、加わった力の強さと年月の移り変わりを感じずにはおれません。
また、下を見ると、川の中には無数の大小さまざなな岩が「これでもか」というくらい溢れており自然の脅威を見せつけられる思いです。
現遊歩道についてですが、九曲洞の名が示す通り、素掘りの厳しさが一段と身にしみる場所でもあります。


1.落石名所
太魯閣峡谷は落石が多いことで有名ですが、とりわけ九曲洞は特に落石が多い場所です。
山から岩が落ちてきて峡谷に沈んでいくなんてものじゃなくて、破壊を伴って景色そのものを変えてしまいます。
そんなわけでこの近辺はしょっちゅう復旧工事を行なっています。全行程歩ければラッキーです。
今回案内役の黄さんも、安全に気を払うよう私にだいぶ注意されてました。
2.途中乗車はできない
燕子口から九曲洞は全行程だと3km強歩きます。歩いて間近にそのダイナミズムを感じられるのが最大の魅力です。
ですからタクシーの場合も観光バスの場合も、何も伝えてなければほぼ必ずその区間は徒歩になります。一旦おりたら、車は新道を通って先に到達点まで行ってますから否が応でも歩いていく必要があります。
なぜこんなことをクドく書くかというと、ある日本人が「タクシーから降ろされて延々歩かされて辛かった」という書き込みをしていたからです。
これから太魯閣峡谷に行かれる方は頭の片隅に記憶しておいてくださいね。
慈母橋
九曲洞を抜け車に乗ってしばらくいくと、道路が左に直角に曲がり慈母橋を渡ります。

ここは荖西渓という川が立霧渓と合流する地点です。橋から下流(立霧渓)を見ると大理石の峡谷が、上流(荖西渓)を見ると片麻岩の峡谷が見えます。

荖西渓の両サイドがまたよく落石を起こすので川の中は岩だらけです。実はこの慈母橋は2代目で、初代は1990年に大洪水で崩壊しています。
橋を渡る手前には慈母亭があります。慈母橋にしてもそうですが、この「慈母」という名には諸説があって、蒋介石や蒋経国にかけた説もありますが詳細は不明です。
大理石をふんだんに使われた「慈母橋」、そしてダイナミックな流域の上流側と下流側、ぜひ写真に収めてください。
天祥
太魯閣峡谷を観光するほとんどの人が折り返し点にしている場所が天祥です。

ここは立霧渓と大沙渓が合流する地点です。川の水が運んできた大量の堆積物と侵食そして今も続く隆起が、長い時の経過とともに太魯閣峡谷一大きく平らな場所を作りました。
当然、過去、原住民も大きな集落を作っていましたし、日本統治時代には行政機関や学校や宿泊施設・飲食施設などが作られました。

現在は観光客用に大きな駐車場や旅客センター、郵便局や食堂やお土産屋さん等があります。
また、太魯閣峡谷で唯一のホテル、リージェント系五つ星の太魯閣晶英酒店もありますね。
台北のリージェントもいいけれど太魯閣晶英酒店は最高の環境の中にあるので、これはまた別格ですね。値段もそこそこしますが、一度は宿泊したいホテルでしょう。

更にはキリスト教の教会兼宿泊所もありますよ。

せっかくここまでいらっしゃったので、落石の心配もないここで、豊かな太魯閣の自然にゆったりと浸っていってください。
昼食

太魯閣峡谷観光での昼食は、天祥か若しくは2km強下流にある「綠水地質景觀展示館」の下にある原住民食堂みたいなところ、この何れかで摂ると良いです。

岩の顔
川底や対岸の岩をガイドさんは「〜に見えますよ」と、動物(ライオン・ワニ・カエル等)やインディアンなどの顔にたとえます。世界中どこにでもある話ですが^^
白楊步道

天祥から上に車を進めるとすぐにトンネルに入るのですが、そのトンネルの中に人だけが通れる別のトンネルが左側に直角に貫かれています。
実はこれが白楊步道のスタートで、私も全くの初体験でした。

案内人の黄さんが「2km歩けばその先に素晴らしい滝があるから是非見に行ってください」みたいに言われまして。
見に行くったって、いきなり人っ子一人いない本当に真っ暗なトンネル380mですからね、そりゃビビりますよ。そしたら見透かしたように「怖いですか?」と来る。
でアホな私は「いえいえ、ワクワクします」とか言って、渡されたLED燈を照らしながら前進して言ったわけです。ドラクエ勇者は祠を行く^^
トンネル内は本当に真っ暗で足元と前を交互に照らして確認しながら歩かないと危ないです。

この道はもともと水力発電が計画され、その資材を運ぶために作られたものですが、景観保護のために計画は頓挫し道だけが残りました。
この一帯は植物昆虫の宝庫でバードウォッチングにも最適です。

歩道は案外高低差がなく野趣溢れるわりには歩きやすく、まさにこれが素掘りだ!というトンネルを幾つかくぐって、いくつかの滝を見て或いは音だけ聞いて(姿は見えない)歩いて行きます。

そして最後のトンネルを抜けるといきなり豪快な渓流に橋がかかり、これを渡ると左手に吊り橋が見えます。

吊り橋を渡ると観滝所というか休憩所があって、向こうには見事な二段の滝が見えます。これは綺麗わ。まじ綺麗わ。
黄さんからもらったビニールガッパが雨でびしょびしょでも暑くて汗いっぱいでも、あ〜来てよかったなぁ! と感激する瞬間です。

吊り橋を渡らずに更に進むと、水のカーテンが素敵な水簾洞があるのですが、通行禁止になっていました。白楊步道自体が落石で通行禁止になっていることもあります。
太魯閣峡谷の遊歩道
ここ以外にもたくさんの遊歩道があって、中には申請しないと入れない道もあります。ここはそうでもないですが、中には滑落の危険度の高い道も結構多いです。

自然と歴史が好きな方は興味が惹かれる宝庫みたいな世界ですが、この看板に示されるように
- 毒ヘビ
- 毒虫
- 落石
には絶対要注意です。それからビニールガッパや懐中電灯は必携です。
長春祠
太魯閣峡谷最後の紹介は長春祠です。割と太魯閣峡谷の入り口付近にありますが、こちらを先に回るルートは取りません。
なぜなら、長春祠への道は中部横貫公路から別れて、太魯閣峡谷の入り口方向へ一方通行になっているからです。
以上のような理由で長春祠は太魯閣峡谷観光の最後に訪れるのが普通です。

さて、長春祠はいかにもな建物ですが、中部横貫公路の工事中に亡くなった作業員212名が祀られている場所です。建物の中央下から落ちていく長春滝が綺麗です。
しかし祠のあるあたり全体がまた崩落の多い場所で、今ある長春祠は1997年に再建されたものです。
長春祠から山の斜面沿いに観音洞があり、更に進むと太魯閣楼、鐘楼、禅光寺へと進むことができ、途中の道では「これが立霧渓だ」という壮絶雄大な景色を見下ろすことができます。
しかし・・・

その岩の崩落のおかげで今回私は長春祠へすら行くことができませんでした。全行程通行禁止です。少し離れて眺めるだけ。当分進入路の閉鎖は続くようです。

でも太魯閣では常にどこかが通行禁止でどこかが補修中です。太魯閣峡谷一帯がそういう危険な地域なのです。これから行かれる方もその辺の事情はよく理解しておいてくださいね。
Ing BnB(花蓮民宿~穎居民宿)

Ing BnBは今回私がお世話になった民宿です。こちらは民宿用に数件が連棟建てになっており、こういうのは初めての経験です。
最初、中に入るまでは、見た目広くないし「どうなんだろう?」と少し不安になりましたが、大正解でした。

部屋は新しく広く快適で静かで言うことなし。

そして何と言ってもオーナー夫妻の人の良さが際立っています。この夫婦、本当にいい人たちです。幼稚園に通う娘さんも人懐っこくて可愛いです。私に抱かれてもニコニコ。

案内人の黄さんから頂いた果物はオーナー家族と4人で一緒に食べました。
やっぱり民宿はこれですよね。暖かい心が一番。そういえば、オーナーの淹れてくれるコーヒーも美味しかったですね。
朝食は歩いて1分のところにある朝食屋さんでいただきます。朝食券はIng B&Bでくれます。もちろん宿泊費に入ってます。
ただ、日本語は不可なので、北京語か英語での会話になります。奥さんは日本語勉強中。
場所は前が学校でごく普通の住宅街で観光客に特別アピールするところはないです。駅からは400mくらい、飲食店が並ぶ表通りまで徒歩10分くらいです。
料金は2泊で4,000元でした。いい線だと思います。
オーナーは借金だらけと笑っておられましたが、頑張って成功してほしいです。
facebook:花蓮民宿~穎居民宿
(おまけ) 東大門夜市

夜市の事をIng BnBのオーナーに聞いたら「東大門夜市ができてる」と言われたので行って見ました。えらい海辺の方で、タクシーで140元でした。
ところがこの時の運転手さんがおばちゃんで、「日本人です」と言ったらなんと100元にしてくれたのです。長い台湾訪問歴でもこんなことは一度もなかった。嬉しい(お金のことじゃなく)。

東大門夜市ですが、行ってびっくり。こんなところにデカイ夜市ができてたんですね。しかも過去あった幾つかの夜市が合体しているようです。
平面図を見ればわかりますが、福町夜市・原住民一條街・大陸各省一條街などと通りごとに特色付けされておりわかりやすいです。


約27,000坪の敷地に400件のお店。道が広く非常に歩きやすい上にトイレがあってゴミ箱も設置されていて兎に角綺麗です。しかも、通りの裏側が広い飲食スペースになっていて座って食べられます。

そして敷地のあちこちでライブをやってます。私が行った時は、ドラムソロのお兄ちゃん、サックスのおじさん、カラオケのお姉さんなどが演奏していて場を盛り上げてました。
これは誰が行っても安心して楽しめると思いますよ。

行ったのが日暮れ前で、到着時はガラガラでしたが、日暮れとともに人は多くなってきました。人の集まり具合をお店の人に聞いたら、多い時は身動きが取れないこともあるとのこと。

そしてなぜか通りの裏の広場に戦闘機や戦車が展示されてました。
もし、あなたが泊まりで花蓮に来られるならここはマストでしょう。台北の夜市とは一味違います。ただ胡散臭さはゼロなので、それを望まれる方には不向きです^^

この夜、私が食べた中の一押しは原住民のお店のトビウオ。台東や花蓮といえばやっぱりトビウオでしょ。これ肉厚でうまいんですよね。その他美味しいものが一杯。特に海鮮と特有の野菜かな。肉もいっぱいあるよ〜。

もちろん台北の夜市と同じように、服屋も小物屋も占いも金魚すくいもなんでもあります。そういえば何故かゲーム屋が多いですね。

ということで、大満足の夜市でした。
(おまけ2)花蓮駅の弁当

写真をみてください。花蓮駅で買った台鐵のロゴ入り謹製駅弁です。美味しそ〜でしょう!? 事実うまい。過去たくさん食べた中でもトップクラス。しかもボリューミー。値段は110元だったかな。
一番美味しいのはお米です。温かいから味がよくわかるんですね。台湾のお米美味しい。そして、かまぼこが親近感を抱かせますね。柄がちょっと雑いけど^^ 肉や煮卵もよく味がしみてたまりません。
あなたも台湾に来られたら駅弁食べてみてください。価格は私の経験では50元〜130元くらいです。さすがに50〜60元のやつはちょっと厳しいかも。100元なら安心して美味しく食べられるはずですよ。
まとめ

最初は花蓮観光について作成するつもりでしたが、字数が多くなり、ほぼ太魯閣峡谷だけの案内記事となりました。
内容を大きくまとめますと・・・
- 花蓮までの交通手段の説明
- 観光手段の説明
- 観光スポットの解説
- 私が宿泊した民宿の案内
- 新しくできた東大門夜市の案内
などをいたしました。
文章や写真でわかっていただけたと思いますが、太魯閣峡谷はなかなか見ることのできない迫力ある美しい大自然です。
今回の説明から漏れた数多くの遊歩道も歩いて初めてわかる魅力がいっぱいです。

しかし反面、地域全体の状態が非常に不安定で、落石による被害を多く受けている場所でもあります。当然人的被害も起こっていまし、常にどこかが通行止になっています。
来られる時は「危険な場所なんだ」という認識は絶対に持っておいてください。落石がなくても滑落事故も起きています。
特に女性は自由に動けるハイキング装備(特にシューズ)でお越しくださいね。
最後に太魯閣の話ではないのですが、花蓮について一つ触れて起きたいことがあります。花蓮は日本人とのつながりが大変深い場所です。
50年も植民地にしていたので台湾中に日本人の足跡があり、またそれが多くの悲劇を生んでいるわけですが、花蓮は入植者である日本人の悲劇の場所でもあります。
「湾生(わんせい)」という言葉をご存知ですか? 台湾で生まれ育った日本人のことです。この人たちにとって故郷は台湾です。なのに終戦と同時に強制的に日本に連れ帰らされたのです。
その悲哀を描いたドキュメンタリー映画があります。「湾生回家」。これを製作したのは日本人ではなく台湾人です。
実際に台湾へ飛んで肌で歴史を感じるのも、また、素晴らしい旅行です。台湾でそれをできるのは日本人だけです。
はじめまして!
タロコ観光の際、こちらの記事を大いに参考にさせていただきました。
何より役立ったのが観光ガイドの黄さんの情報です。
日本から国際電話で依頼したのですが、タロコの案内はもちろん、日本を発つ前から花蓮を離れた後も本当に色々と気遣ってもらい、3000元では申し訳ないと思えるほどのサービスでした。
たくさんの良い思い出を残すことができたのは、ゆう様と黄さんのおかげです。ありがとうございました!
また台湾に行く時は、他の記事も参考にさせてもらいますね。
さとう様、タロコ観光のご報告ありがとうございます。
黄さん、とっても良い方だったでしょ。
善意の塊みたいな人だったでしょ。
日本そして日本人に対する思い入れが半端じゃないんですよね。
それから、素晴らしいと感じたのが国際電話。
きっと旅慣れていらっしゃるんでしょうね。
タロコを見て回るリスクもちゃんと汲み取られて。
それだけ記事に織り込んだ情報を信じていただいたんだ、ととっても嬉しく思います。
ご満足されて本当になによりです。私も黄さんに「ありがとう」と言いたいです。
こんなに嬉しい素敵なコメントを送っていただき、心からお礼申し上げます。
今後も、台湾でたくさんの感動を作ることができたらいいですね。