目 次
相続は大変
人が亡くなると、その方の権利義務を相続手続きを経て、相続人が引き継ごことになります。
- 土地・建物といった不動産
- 物や現金や無記名債券などの動産
- 預金や借入などの債券・債務
これらは全て相続の対象であります。
従って「故人の借入は知らんが預金だけ相続する」って、そんな都合の良いことはできないのです。プラスも相続財産なら、また、マイナスも相続財産です。
さて、相続の手続きはとってもややこしいです。相続人が被相続人の子一人であれば簡単ですが、そうでないケースの方が圧倒的に多いのです。
手続きが複雑な上に、複数の相続人がいれば感情的に揉めたりして、手続きが全く進まないケースもあります。
相続財産を確定出来たまでは良かったのですが、そこから全く前進しないことがありました。理由は分配をめぐる話し合いが暗礁に乗り上げたことです。
- 故人との関わり
- 故人に対する生前中の貢献度
- 遺言はないけれど故人が生前、分配について語っていた話の解釈
3人の相続人は、まるで人が変わったように、誰も妥協点を探そうとはしませんでした。その上、各人の後ろには夫や嫁がいて隠れて口を挟むから、余計に糸は絡まります。
そうしているうちに相続税の督促が来るようになって、なんと、銀行から借り入れをして税金を支払ったのです。相続財産は山のようにあるのに・・
三竦みになって、3人ともがしたくない「借り入れ」というありえない事態を招いたのですね。
そんなわけで、事務的にも感情的にも大変な相続手続きですが、今回は預金に限定した説明をいたします。
法的なことや手続きは、ケースに応じて非常に細かく枝分かれしていきます。ここではそれらを全て網羅できないのでご了承ください。
さてその前に、まず相続の種類について、これを簡単に解説します。具体的な分配などを相談する前に・・
- 相続するのかしないのか
- するのであればどういう相続の形を選択するのか
話はここからスタートです。もっと手前のこととして相続人の確定がありますが、この記事ではそこまでは掘り下げません。
相続3つの選択肢
相続をするか否かは自分の意思で決めることができます。そして、相続する場合には3通りの方法があります。
- 故人が保有していた一切の権利・義務を受け継がない「相続放棄」
- 故人の有していた権利義務の一切を受け継ぐ「単純承認」
- 故人の有していた財産の範囲内で故人の債務を引き受ける「限定承認」
この3つのそれぞれについて順に説明していきましょう。
相続放棄
相続放棄をする理由で多いのは、故人の有する財産がトータルでマイナスになる場合です。
もし相続をして、結果的に個人の借金を背負うことになるなら、誰も相続はしたくないでしょう。そこで、故人(被相続人)の一切を相続しないで放棄する方法があります。
それは、故人が最後に住んでいた住所地の家庭裁判所に、相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内(←これ大事!)に、必要書類を提出して申述手続きをします。
相続放棄で一つ非常に大きな問題があります。たとえ残された財産が大幅にマイナスで、家族全員が相続放棄をしたとしても、相続権自体がなくなるわけではありません。
第二順位、第三順位・・と繰り下がっていくだけです。
ですから、相続放棄で故人の大きな負債から逃れられてホッとしていても、その負債は故人の両親や兄弟にかかっていく可能性があります。
そのことを念頭に、相続放棄をする場合は関係親族に連絡をしておかないと、後で大きく揉める可能性を残してしまいます。
単純承認
相続財産の合計がプラスになるならば単純相続という選択肢でいいです。
単純承認は相続開始から3ヶ月を過ぎると、自動的に確定しますので、特に手続きをする必要はありません。
しかし、ここで忘れていけないことは・・
単純承認とは、故人が所有していた一切の権利と義務を相続すること
なのです。ですから、「多分幾らかは受け取れるだろう」というような安易な気持ちで「単純承認」してはいけないのです。
「自己のために相続が開始したことを知ってから」から3ヶ月が過ぎ単純承認が確定したのちに、気がつかなかった故人の借り入れの返済催促が来て慌てても逃げようがありません。
その時点では既にあなたは返済の義務を相続しているのです。
ですから、故人の残した総財産がはっきりと確定しない場合は(プラスになるかマイナスになるかわからない)、別の相続方法を考えなくてはなりません。
限定承認
別の相続方法とは「限定承認」を指します。
故人が最後に住んでいた住所地の家庭裁判所に、相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に、必要書類を提出して申述手続きをします。
もう一度「限定承認」はどういう時に利用する手段なのか、ですが・・
- 相続財産の中に負債などのマイナス財産がある
- 全財産が確定しない場合
- プラスになるかどうかわからない
というようなケースです。つまり、最終確定した時の財産がプラスになるかマイナスになるか不明な場合の選択肢です。
もし、借金が預貯金や有価証券や不動産売却益よりも多い場合は、全部返済に充当されますが、なお不足していても相続人の財産にまでは及ばないのです。
これをうっかりして、単純承認してしまうと負債がゼロになるまで責任を持たなければならなくなりますので注意が必要です。
ここでもう一つ大切なポイントですが、限定承認は全員がそれを選択しないと申述手続きできないのです。相続人の中で、一人でも単純承認を選択する人がいると限定承認手続きは不可能になります。
ただし、相続人の中に「相続放棄」する人がいても限定承認はできます。なぜなら相続放棄した相続人は「元から相続人として存在しない」扱いになるからです。
また、相続開始から3ヶ月を過ぎると自動的に「単純承認」が確定するので(例外規定はあるが)早々に相続人同士が意思を決定しておかなければなりません。
重要ポイントなのでおさらいです。
「相続放棄」は「元から相続人ではなかった」と見なされます。ですから、本来その人が相続するはずだった財産は残りの相続人が相続するのです、それがプラスであれマイナスであれ。
これに対して「限定承認」をした人(達)は相続をします。ただし、負担の上限はプラスの相続財産の範囲ですよ、ということです。
故人の負債を清算しようと借金取りが「限定承認」した人(達)の財産にまで手を出そうとしても、そこは守られるのです。
一方「相続放棄」した人のところには借金取りは来ません。
さて、それではいよいよ「銀行預金の名義人が死亡した時の相続手続き」についてご説明していきます。
銀行への通知とロック
まず一番最初になすべきは・・・
金融機関への連絡です
金融機関はその連絡を持って、該当する名義人の全預金をロックします。
もし、ロックをせず、それ以降に預金が減ったりしたら、権利を有しない人が引き出したということになりますから、金融機関は二重請求を受ける可能性が高くなります。
ですから、事実を知った時点で必ずロックをかけますし、原則的には、手続きが完了しない限り預金の引き出しは出来なくなります。もちろんキャッシュカードも使えなくなります。
死亡した名義人の預金=遺産=相続対象 ということです。
残高証明書(明細書)請求
次に、ロックによって確定した預金の残高を元にして相続の手続きをするので、残高証明書発行を受ける手続きをします。
これをしないで、通帳や証書を元に残高の確定をすると、もし・・・
- 認識漏れの預金が後で発覚した場合
- 確定残高と通帳残高に食い違いがあった場合
そういったケースが発生すると、手続きが大幅に遅れるので、トラブルの元になるし、心労も重なります。是非手順を遵守してください。
銀行所定の書式
相続手続きには、戸籍関係書類や遺産分割協議書などの他に、必ず銀行所定の書類があるので、これを残高証明書とともに受け取り、必要事項を記入し、相続人全員の署名と実印押印をします。
銀行が書式をくれるときには、おそらく、合わせて、手続きに必要な書類の一覧をくれると思います。
これを、読まず理解せず持って帰るのではなく、その場でじっくりと読んで、わからない部分は質問し、十分に理解してから銀行を離れてください。
預金ロック後に引き出しができる特例はあるか?
例えば、預金者が突然死をしてしまって、その家族にはお金がないために、その預金を葬式代に充当したい場合、相当分を引き出し可能か? という問題です。
残念ながら、自分が現役の頃の、そういう事例に遭遇した記憶がありません。
そこで、私自身が今、取引をしている銀行に聞いてみたところ、以下のような回答でした。
必要書類を提出した上で問題がなければ、銀行から直接葬儀会社に振り込みをする、という条件で払い戻しに応じる。事務手順書に書かれているので応対者による差はない。
どこの銀行においても、例外的な措置は、多少の差異はあるとしても、極めて限られた範囲において認められる可能性が高いでしょう。
しかし、相続財産として確定されたものを触る以上、厳格さを要求されるのは仕方がないものだ(そんなに簡単ではない)、と理解しておいてください。
これが、もし仮に、預金者が長期入院をしていて、家族が普段から引き出しを任されていた、というようなケースであれば、何の問題もありません。
銀行に連絡をする以前に、回数を分けてキャッシュカードで葬式代相当を引き出しておけばいいのですから。
そして出費の領収書は全て保管しておきましょう。
手持ち現金=キャッシュカードでの引出し金額ー葬式代出費総合計
と合うようにしておけば、後日揉めることもありません。
さて次に、銀行所定の書類以外に揃えなければならない書類についてのお話です。
遺言書の有無、遺産分割協議書の有無などによって、揃えるべき必要が変わってきますので、それぞれにケース別に説明します。
遺言書があった場合
遺言書があった場合に取揃える書類は以下のようなものです。
- 遺言書
- 遺言検認調書or検認済証明書(公正証書遺言の場合は不要)
- 死亡者の戸籍謄本(若しくは全部事項証明)
- 相続人全員の印鑑証明書(遺言執行者を選任している場合は執行者の印鑑証明書)
- 遺言執行者選任審判書謄本(遺言で遺言執行者を選任していないケースで、相続人がこれを選任する場合は、家庭裁判所に申し立てをする必要があります)
ややこしそうですが、整理して覚えておけばそうでもないですよ。
上記の1. 3. 4. はわかりますね。2. と5. に関しては・・・
- 2.の検認に関する書類が必要なのは、被相続人が自筆の遺言を密かに残していた場合です。
- 5.の選任審判書は、遺言の内容に従って、これを実行する人を立てる場合に必要です。
さて、遺言書と一口に入っても、種類があるんですね。そう、3つの種類があります。この違いを理解しておくことも非常に大切です。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
一つづつ説明していきます。
自筆証書遺言
紙と筆記具があれば特別な費用をこけることもなく、いつでも作成することも作り直しもできます。が、自筆証書遺言にはいくつかの問題があります。
1. 専門家の関与なく作成した場合、法律に定める要件が満たされない可能性があって、遺言自体がが無効になる可能性もあります。求められる要件ですが・・
- 全てを自署すること。PCで作成しプリントしたもの或いは代筆したものは無効。
- 作成日を記入すること。和暦でも西暦でも良いが必ず「日」迄記入すること。
- 署名捺印をすること。印鑑はなんでも良いが実印が無難。拇印はダメではないが避けるべき。
なお、要件ではありませんが、後日の改竄を避けるために、封に入れ割印をしておくのが良いでしょう。
2. 自筆証書遺言は、内容の特定をするために、家庭裁判所において検認を受ける手続きが必要があります。
但し、改ざんされたりする可能性を消すなどの効果はありますが、遺言書の内容についてはチェックされません。
相続人はこのために必要書類を揃える必要があるし時間もかかります。もし内容に不備があれば、それこそ何をしているかわからなくなります。
3. 被相続人は遺書の存在を公言しないケースが多く、死後、発見した人が隠したり破棄したりする可能性もあり、そうなったら遺言の意味がなくなってしまいますし、被相続人の意志は永遠に闇に葬られます。
以上3点を勘案すると、自筆証書遺言は必ずしも良い方法とは思えません。
公正証書遺言
これは、遺言を公正証書として作成するものですが、被相続人がこの労を取っておくと、その意思が相当確実に伝えられる素晴らしい手段です。
手順としては、被相続人が・・
- 証人二人(以上)を選任する
- 公証人役場で証人に立ち会ってもらう
- 公証人に内容を公証人に説明する
- これを公証人が文書化します
公証人は法律の専門家なので手続きを進めながらアドバイスを受けることもできます。
こうして作成された原本は公証役場に保管されます
遺言によって被相続人が確実に自分の意思を反映したい場合は非常に有効な手段となります。なぜなら公正されて原本が役場に保管されているので・・・
- 偽造・変造の恐れがない
- 紛失や相続人故意の破棄などが起きない
以上から確実な遺言になることがわかっていただけると思います。但し、問題点があるとすれば・・・
- 少なくても3人の人には遺言の内容がわかってしまう
- 証人と公証人に対して相応の費用支払いが発生する
ということなんです。しかし、遺言の本来の目的を考えれば、多少の問題点や出費を伴っても、これに勝る方法はないでしょう。
一つ注意点として、被相続人は役場から受け取った謄本を保管し、相続人がその存在に気づくような計らいをしておく事が必要です。
もし、見つけられなければ遺言がなかったのと同じになってしまいます。役場からのお知らせは一切ありません。
しかし、相続人は被相続人との関係を証明できれば、全国どこの公証人役場においても、被相続人の公正証書遺言が作成されたかどうかの検索をすることができますし、あれば手続きをした役場にて謄本の発行を受けられます。
秘密証書遺言
ほぼ誰も利用しないので説明は省略します。
遺留分
遺留分とは、相続人が受け取れる最低限の財産取り分です。そしてその請求を遺留分減殺請求と言います。
例えば、遺言状で「被相続財産を全て愛人に渡す」と書かれていれば、その通り愛人の元へ全財産は行きます。これに対して以下表に示す相続人は、その愛人に対して遺留分減殺請求をもって遺留分を請求できることを、権利として民法は認めているのです。
上の表で、総遺留分1/2とは相続財産の半分を意味します。これから分かる通り、遺留分として請求できる金額は最高で総相続額の1/2が上限なのです。
そこからわかりますように「愛人の例」では、いかに悔しくても1/2は愛人のものになります。
注意点1
- 相続人が配偶者と子供の場合の取り分は、相続財産の1/2を半分ずつしたもの、つまり1/4づつとなります
- 相続人が配偶者と被相続人の父母である場合、配偶者の取り分は1/2の2/3つまり2/6、父母の取り分は1/2の1/3つまり1/6となります
注意点2
遺留分を請求できる相続人は配偶者の他には・・
- 直系尊属
- 直系卑属
なのですが、特に代襲相続が絡んできた場合など重要な問題になるのですが、本記事では詳細説明を省略します。
さて、ここで重要なポイントについてお気づきでしょうか?
「請求権がある」事と「相続財産が入ってくる」事はイコールではありません。そこには限りなくややこしい人間模様が無限とも言える阻害要因になる可能性があるのです。
ドロドロになって縺れまくった責任を被相続人は取ることができません。なぜならもうこの世にいないから。
であるなら、遺言書には、残された人たちが揉めぬように、法に従って最大限の配慮をすべきです。私はそう思うのですが、いかがでしょうか?
遺言執行者は必要か?
もしここまで読んでこられたなら、頭が痛くなった方もいるでしょう。また、諸々を合わせ考えたら、とっても当事者だけで全てが進められると思えない方もいるでしょう。
そこで登場するのが遺言執行者です。
遺言執行者とは、法律に則り煩雑な手続きを一手に受け、遺言の内容を実現してくれる人です。
ですから選任にあたって一番いい方法は、被相続人が遺言書にて指定しておく事です。
もし、遺言書に指定していない場合や指定された人が拒んだ場合は、主に相続人が裁判所に選任の申立てをします。
しかし・・・
- 子供の認知
- 特定の相続人の廃除
が発生しない場合は絶対に必要ということはありません。そうなのですが、相続手続き自体が非常にややこしいので・・・
- 相続財産の種類が多い
- 相続財産の額が大きい
- 相続人同士の関係が複雑
といった場合は、手数料・報酬を支払ってでも、不要なトラブルなく事を運ぶために選任するのがベターでしょう。遺言執行者に任せれば相続人は圧倒的に楽です。
適任者は特定の相続人と利害関係のない司法書士や弁護士です。
★先に説明しました遺留分減殺請求は遺言執行者に対してできるのか? という疑問が出てくるのですが、これは実はとっても難しい問題なので省略します。
以上で遺言書があった場合の説明を終わります。 引き続き、遺言書がなかった場合についての説明に入ります。
遺言書がなく遺産分割協議書を作成した場合
ここで銀行所定の書類以外に必要になる書類は以下の通りです。
- 相続人全員の署名と実印押印がある遺産分割協議書
- 死亡者の(出生から死亡までの連続性がわかる)除籍謄本、戸籍謄本(or全部事項証明書)
- 相続人全員の戸籍謄本(or全部事項証明書)
- 相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書を作成するにあたり、「銀行への通知とロック」でご説明しました通り、まず先に銀行に連絡をし、ロックをかけてもらってください。
そして、残高の変動がない状態にした上で、残高証明書(及び明細書)の発行を受けて、それを元に遺産分割協議書を作成してください。
以上は手続き上非常に重要です。再度、以下の理由をよく理解してください。
- 残高を確定できる
- 相続人の既知未知を問わず、一つの銀行取引の全てを把握することができる
- 発行された残高証明書や明細書に基づいて遺産分割協議書を作成すれば、銀行との不要のトラブルが避けられる
遺産分割協議書と相続放棄
よくある勘違いですが、遺産分割協議書に相続放棄の意思を表示しても、それだけでは第三者に対して対抗できません。
どういうことかというと、「相続放棄した」と思い込んでいる人にも、被相続人の借り入れの返済を請求できるということです。
あくまでも家庭裁判所に申述手続きをしなければなりません。
遺言書がなく遺産分割協議書を作成しない場合
この場合に、銀行所定の書類以外に必要になる書類は以下の通りです。
- 死亡者の(出生から死亡までの連続性がわかる)除籍謄本、戸籍謄本(or全部事項証明書)
- 相続人全員の戸籍謄本(or全部事項証明書)
- 相続人全員の印鑑証明書
裁判沙汰になっている場合
揉めて家庭裁判所に調停や審判を求めた場合はケースに応じて・・
- 調停調書謄本
- 審判書謄本
- 審判確定証明書
などが必要です。加えて・・
対象になっている預金を相続する人の印鑑証明書が必要です。
遺産分割協議書を公正証書にするメリット
公正証書にするメリットは、遺言書を公正証書にするメリットと同じく、非常に大きいです。その理由は・・・
- 文書は法律の専門家である公証人が作成するために、正確で信頼性が高く、銀行もその認識で事務処理ができます。
- 文書作成の過程で相続人全員の意思を確認し、その上で公証人が作成するので、後で揉めたりトラブったりすることが、ほぼ回避できます。
- 公正証書にすると、原本が20年間役所に保存されるので、紛失や改竄の可能性が完全になくなり、非常に安心安全です。
したがって・・
- 相続財産の金額が大きい
- 相続財産の種類が多い
- 相続人の関係が複雑
といった場合は、揉め事回避のために活用するのがベストです。
遺産分割協議書は絶対に必要か
結論から言うと「絶対」に必要ということはありません。
しかし「揉めて当然」という前提に立てば、後になって「ああ決めた」「こう決めた」と喧嘩するよりも、明文化しておく方が、相続人全員にとって100倍安心です。
そして、その究極の形が上記の「公正証書」です。
書類を提出する
今までに述べた全ての書類が揃ったら、代表相続人が銀行に届出をします。もし、全てにおいて瑕疵がなければ、数日から10日後くらいに払い戻し(指定口座へ振込)されて、手続きが終了します。
書類に不足や不備があればそれだけ時間がかかるし、銀行担当者の能力に依存する割合が高いので、それで時間がかかることもしばしばあります。
事務手順表を全く見ずに、一度も本部に問い合わせずに、全てができる行員が担当してくれれば相当早いでしょうが、そんな人はほぼいません。
それに、預金役席者に知識がなければそこでストップしてしまう場合もあります。
相続手続き自体が複雑であることに加えて、銀行の事務としても日常業務ではないので、かかる日数については最初からある程度は覚悟しておいた方がいいです。
それもこれも含めて、気に入らないと窓口で大声を出して文句を言う人がいますが、窓ガラスが割れる大声でも、事態は一歩たりとも前進はしません。それどころが、銀行はますます慎重になるでしょう。
気持ちはわかりますが。
どの金融機関も同じというわけではありません。少しずつ違います。
- 預金名義人が取引をしていた支店で手続きをするのが原則
- どこの支店でも受け付け又は手続きができる銀行もある
- 支店にて本部の専門部署と直接テレビ電話で相談をする銀行もある
- 郵便局は少額(100万円以下)であれば、上に示したような謄本関係を持参し、死亡した事実や相続人の確定ができれば、そして代表相続人の印鑑証明と本人確認書類と通帳やカードがあれば、即日解約払戻がされます。
大きく変わろうとする相続法をわかりやすく解説しました。
まとめ
ここまで読んでこられたあなたは、さぞかし頭が痛くなったことでしょう。とにかくややこしいし、悩ましいですもんね。
預金の相続の手続きに限っての説明、と冒頭に申し上げたものの、どうしてもそれ以外の部分についても言及せざるを得ませんでした。
さて、書類については・・・
- 被相続人を特定するため
- 被相続人・相続人同士の関係を特定するため
- 意思を確認するため
というように、大きく必要書類の目的を理解しておけば精神的には少しでも楽になるのではないでしょうか。
それから、揉める要素をなくすため、或いは、誤認をなくすための手段として・・・
- 遺言書の作成
- 遺言執行者の専任
- 公正証書の活用
などにも言及しましたが、状況に応じては、さらに司法書士や弁護士にお願いする事も考えた方がいいでしょう。
以上のような、大変ややこしくはありましたが、諸々のことをある程度事前に理解しておくと、かなり役にたつと思います。
- 手続きミスで大きく時間を食うことを防いだり
- 人間関係の泥沼化を防いだり
そういう手段はあるのです。
あなたは、もうちゃんと理解されてます。
この記事は相続をされる方に向けて作成しましたが、むしろ、被相続人の方に理解していただいた方が、よりベターな気もします。
最後に、相続には様々なケースがあって具体的な手続きは本当に多岐にわたります。今回の記事は当然そういった一つ一つの細かい部分に言及はしていません。その点はご了解ください。
銀行での手続き関連記事
コメントを残す