目 次
最初の一歩も分からない
先祖から代々続くお家に大家族で住んでいて、幼少から毎年お盆を見てきているので、段取りについて大凡のことはわかる・・・なんて人はほとんどいません。
ですから、ご家族のどなたかがお亡くなりになって初盆が近づいてきても、何をどう準備していいのか皆目分からないわけです。
そこでこの記事では、初盆の準備のうち、坊さんに関する事柄にスポットライトを当てて説明をしていきます。
この記事を読めば、坊さんに関することは一通りわかるようになりますので、是非最後までお読みください。
お寺へのお願いとお布施の金額
もし菩提寺があって、そこに祖先の位牌もお墓もあるような場合は、当然菩提寺にお願いすることになります。
分からないことがあってもその都度菩提寺に聞くことができるので、おそらくあんまり悩むことはないでしょう。
都会に移り住んでいて自分の菩提寺がわからない場合は、本家や親戚縁者に確認し、判明した段階で近所にある同宗旨宗派のお寺に相談に行きます。
ただ、幼少より先祖代々の地から離れて暮らし、お寺を全く身近に感じられないようなケースでは、お布施その他システムそのものに疑問を感じるドライな思考になっているかもしれません。
確かにお布施の金額は決まっておらず、「お心次第」「お気持ち」とかいわれても、地域社会の一員として共通のコンセンサスを持っていない多くの人たちは戸惑うばかりです。
しかもお布施のみならず、お車代、御膳料、というような名目の支払いも存在するから、「わけわからんわ」と困惑するのも無理からぬ話です。
まあ、それは置いておくとして、仮に初盆法要で読経をお願いするお寺が決まった場合、坊さんにお渡しするお金は用意しなければなりません。
一応、一般的な相場を記しておきますと・・・
- お布施:30,000〜50,000円
- お車代(お寺以外の場所に足を運んでいただく場合):5,000〜10,000円(交通費実費にプラスしてキリのいい数字にする)
- 御膳料(食事会に参加されない場合):5,000〜10,000円
しかし、明文化されているわけではなく何の決まりもないので、「相場」といっても「それぐらいの数字であれば問題ないだろう」くらいの意味です。
事細かにネットで調べても、もともと基準がないので、それぞれの記事に書かれている金額の上限下限も結構バラバラです。
私自身は、分からない場合は(お金の件以外でも)神社やお寺に直接聞きますが、概ね自分基準で金額を決めてきました。
そういうことで基準はあってないようなものなので、必要以上に気に病むことはないと思います。
但し、地方性が強い、人間関係が濃い地域にお住いの場合は、親戚縁者によく聞いて、言われる通りにするのが無難です。「無難」はそこで生活を続ける人にとって物凄く大事だと思います。
上記お布施などのお金に加えてお菓子などをお渡しする場合は、表書きを「御供」とし、坊さんに「食べてください」ではなく、「お供えください」と言ってお渡しします。
一回きりの坊さん手配
「坊さんの手配」という表現はわかりやすいけれど、あまり適切ではないかもしれません。気に障る方にはお詫びいたします。
さて、初盆を迎えるにあたり、菩提寺がなく尋ねる相手もいない場合、読経していただく坊さんをどうやって探すかという問題があります。
そういう場合は、お坊さんの派遣システムを利用するのも有力な方法です。本当に便利な世の中ですね。ないサービスはない^^
そうはいえ、当初資金がそれほどいらないので割と簡単に開業できることもあってやや乱立気味です。また、業界自体が若いので、個々の派遣会社の実績もまだまだでしょう。
なので利用する場合は一定の注意が必要です。たとえ、坊さんやお寺が運営していても、サービス提供者としてのノウハウやシステムが確立してなければ安心とは言えません。
じゃあどういう基準を持ってお願いする業者を決めればいいのか? 選択のポイントを列挙すると・・・
- 法人化された相対的に大きな組織
- 実態がはっきりしておりいつ何時でも連絡が取れる
- 取扱宗派に自分の望む宗派が入っている(信者の絶対数が多い日蓮宗・浄土宗・浄土真宗・真言宗などはどこでもだいたい対応してる)
- 取扱地区に自分の希望する地域が含まれている
- 料金システムに不明要素がない
- 取扱実績が相対的に多い
- 事前に来られる坊さんと打ち合わせができる
以上のような点が揃っていれば、信頼の基準はクリアしていると考えていいでしょう。
料金は全て込み込みの業者もあれば、お車代別とか、宗派指定すれば別料金とか、まちまちです。
ですが、だいたいトータルで35,000程度が多いようです。
当然ながら実際に利用される場合は、サイトにある記載事項と、電話でのやり取りの中で疑問は払拭しておいてください。
業者については、僧侶派遣でググればたくさんヒットしますので、上記選択のポイントを参考に各サイトをよく読んでください。
サイトに入って一番最初に確認すべきは事業主体の内容です。一番下までスクロールして該当箇所をタップして見てください。概要すら記載がないところは全然ダメです。
それから、サイトのデザインに惑わされないでください。
例えば、一般社団法人お寺さんの会というのがあります。各地の僧侶を組織員として活動しているように説明されています。
しかし、組織概要を見ても判断根拠になるような記載がありません。それに、法人名称はに一般社団法人がなく、代表者の肩書き代表理事もありません。
組織も参加者も料金も非常に不明確で、どれほどカチッとしたことをやってもらえるのか、どんな時にでもサービス業者として連絡が取れるのか、さっぱりわかりません。
ですから、この事業に参加されている個々のお寺自体には問題がないのかもしれませんが、事業をなす組織としては信用に足るものを確認することができない、と判断せざるを得ないのです。
こんなふうに一社ずつ見て信頼にたるところを見つけてください。
いずれにしても、お盆の時期は坊さんに依頼が集中するので出来るだけ早くお願いしておくのが大切です。
私も調べてみました。その結果として、大丈夫だと思われる二社を紹介しておきます。
てらくる
小さなお葬式で一躍有名になった株式会社ユニクエストが運営している僧侶派遣事業で、株式会社ユニクエスト自身のサイトもあります。
会社の概要も必要事項はきちんと記されています。
知名度の点ではおそらく一番高く、その分依頼側も安心できるかなとは思います。
当然明朗会計。
- 初盆(新盆)の法要は45,000円の定額で追加料金なし
- 宗派指定無料
- 全国対応
- 依頼後寺院から打合せの電話あり
- お墓に移動する場合距離によっては別途10,000円必要
と記されています。(尚、混むから2ヶ月前から準備を、と書かれてますね)
それから特筆すべきは、派遣される坊さんについては・・・
- 全員を僧籍簿で確認している
- 所属寺院も確認している
とのこと。きちんと基準を設けて間違いのない坊さんを派遣するのですよ、という事でしょう。
お坊さん便
こちらも業界では有名どころで 株式会社よりそうが運営しています。もちろん会社概要も必要事項はきちんと押さえてあります。
こちらの特徴として、サイトでの説明が簡潔で非常にわかりやすい点が挙げられます。まっすぐに簡素に説明されているとそれだけ誤解する余地がなくなり安心です。
また、サイト下に予約フォームが用意されており、希望日も含め入力していけば、確認後電話をもらえるので、利用者側からすれば心理的にも楽でしょう。
もちろんいきなり電話でのお願いもできます。
- 法要費用は初回一律 35,000円
- 追加料金は一切なし
- 2回目以降の法要からは 45,000円
- 僧侶から打ち合わせの電話あり
- お墓に移動する場合距離によっては別料金発生(都度要確認)
てらくる・お坊さん便とも、お墓に移動するときは別料金がいるようで、逆に言えば、一ヶ所で法要が済むのであれば所定料金のみということです。
また、お布施は事前振込とかではなく、来ていただいた坊さんにお渡しします。
いずれにしても、派遣業社を通しての依頼は、檀家になるならないといった問題は発生せず、坊さんとは(特に望まなければ)その場限りのお付き合いになるのが特徴です。
こういった特徴が核家族化が進む社会で大きく受け入れられる要因であると思います。
お布施等の袋と書き方と渡し方
お布施を入れる袋
今まで述べてきたように、お布施だけで済む場合があれば、お車代・御膳料などが必要な場合もあります。
派遣業社にお願いすれば幾つも袋を用意しなくても済むでしょうが、それとて裸でお渡しするわけにないきません。では、どんな袋に入れればいいのでしょうか?
一番無難なのは、何にも印刷されていない真っ白な封筒(表書きが印刷されているものでも当然いい)を使うことです。
来ていただいた坊さんに不幸があったわけではないので、不祝儀袋を使う必要はありません。
水引のない無地で押し型のついた金封を利用したり、お金を中包みしてそれを奉書で包むというような体裁のいい方法もあるにはあります。
でも、私は白封筒が一番無難だと考えております。何も印刷されていないそっけない封筒で本当に問題ありません。
中に入れるお札は、香典とは違い坊さんに悲しいことがあったわけではないので新札がいいようです。しかし、知り合いの業界関係者はどっちでもいいと言ってましたし私も気にしません。
次に、坊さんにお渡しするタイミングです。
決まりはありません。法要が始まる前でも後でもお帰りになる前でも、ご挨拶を添えてお渡しします。
お渡しの仕方ですが、直接の手渡しは無作法とされています。
一番無難なのは、無地の切手盆(金子を渡す専用のお盆)に、表書きがお坊さん向きになるようにおいてお渡しします(複数の包みがある場合は全部一緒に重ねて)。(無地の切手盆なら慶事にも使えるので一つ買っておくと便利)
もしくは、袱紗に包んでおいて、お渡しする時にこれを取り出して坊さん向きになっていることを確認して、袱紗の上に乗せたまま差し出します。
逆に絶対に使用してはいけない袋が熨斗袋です。
熨す(のす)とは延ばすこと平らにすることで、ここでは干して熨したアワビのことで、不老長寿の象徴です。
そんなことから、昔は慶事に干しアワビとお酒を持って行ったりしたのです。
現在の熨斗とはその名残であり、袋の右上に貼っている(印刷している)六角形の赤白がそれになります。
つまり、熨斗袋は慶事に使うもので、初盆の読経に来てくれた坊さんにお渡しするには不適切なのです。
もう一つ誤解の多いのが、「水引のついている袋を熨斗袋」とする勘違いです。上記の説明でわかっていただけると思います。
表書き
表書きはどんな場合でも中央やや上部分に書きます。当然筆が望ましいですが、私は使えないので(小学生時代から大の苦手)筆ペンばっかりです^^
坊さんに不幸があったわけではないので、字の色は普通の濃い黒です。
次に文言ですが、用途に合わせて3つで以下の通りです。その通り表書きとして書いてください。
- 御布施
- 御車料
- 御膳料
裏書き
裏には、
- 金額
- 住所
- 氏名
を書きます。氏名を表書き下に記す場合は、当然、裏に再度書く必要はありません。
その場合は上記裏書きをそのまま中袋の表に書いてください。
裏書きをきちっと書いておくと坊さんが助かります。坊さんでも一般の会社でもお金の管理をしっかりしなければいけない、という意味では同じです。
裏書きは記録であり証拠でもあるのです。
記載する金額は旧字体の漢字を使います。
- 壱・弐・参・四・伍・六・七・八・九・拾
- 佰・阡・萬
- 圓
- 5,000円 → 金伍阡圓也
- 10,000円 → 金壱萬圓也
- 30,000円 → 金参萬圓也
- 50,000円 → 金伍萬圓也
- 100,000円 → 金壱拾萬圓也
書き方に決まりはありませんが、まず真ん中やや右寄りに金額を書いて、あとはハガキと同じように左側に住所・氏名を書きます。
お布施とは読経していただいた対価(料金)ではありません。本来「与える」という意味なので、お寺が金額を提示することは矛盾なのです(だからお聞きしても金額は仰らない)。
托鉢という概念と深い関係があります。しかし、逆にそれによって我々が戸惑い判断に迷ったりするので難儀な話ではあります。
でも、現実世界では、僧侶手配業社がお布施の金額を明示するように、どんどん本来性が利便性に押し寄られています。
その方がいいような楽なような、でもちょっと考えてしまうような・・・
まとめ
初盆で読経していただく坊さんにお渡しするお金の話をしました。かなり詳しく掘り下げたので、疑問点はほぼ解消されたのではないかと思います。
- 坊さんを手配する方法
- 菩提寺がある場合
- 僧侶派遣業社を利用する場合
- お渡しするお金の名目は何か
- 各名目に適切な金額はいくらか
- お金を包む袋はどんなものがいいのか
- 表書きと裏書きはどうすればいいのか
- お供え物をお渡しする場合の心得
- お渡しするタイミングはいつがいいのか
- よく誤解されている事についての説明
これだけの事を理解していただけば、坊さんへの依頼方法とお布施関連で困ることはありません。
坊さんとお布施についてだけでもこんなに知ることがあるわけですから、核家族化された社会での初盆の準備は大変です。
でも、故人を初めてお迎えし、そして再びお送りする、その心の大切さは大変さとは比べようがないのではないでしょうか。
心に残る故人が喜んでくださるような初盆を心がけたいです。
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