目 次
お供え物か香典か
亡くなった故人が四十九日を経て、初めて迎える盆が初盆です。
一般の盆とは違い、一番賑やかに供養をします。なので、親戚や故人の知人・友人を招待し、坊さんに読経をしてもらい法要を営みます。
そして多くの場合、その後に施主が用意した精進料理をみなでいただきながら故人の思い出話をします。
この記事は、招待された側・お参りにゆく側の人の心得を解説する記事です。心得にも色々とありますが、ここではお供えに重点を置いてお話をします。
お供えには以下の三種類があります。
- 香典(現金)のみ
- お供え物のみ
- 香典とお供え物の両方
法律や決まりがあるわけではないので、明確に「こうだ!」というものはそもそも存在しないのです。
初盆ではなくお葬式での話ですが、受付を何回かやったことがあってその経験上の話をしますと・・・
参拝者に記帳をしていただいて香典をお預かりします。そして、袋からお金を出して合計する一方、お名前と金額の一覧を作成して、それらを喪主にお渡ししました。
その記憶を辿ると、お一人お一人の金額は本当にバラバラです。
それに、過去、香典の金額が話題になったことは、親戚ともそれ以外の人とも、ただの一度もありません。
以上のような経験からも、香典として包む金額にたいし、それほど悩む必要はないというのが私の考え方です。(核家族が多く住む一般的な都会の場合)
注意が必要な場合
お供えをお持ちする上での注意点はいくつかあります。
親戚縁者が多く集まっているような地方(親の故郷とか)の初盆では、地域の特性が非常に強い場合があり、なによりそれに合わせることが大切です。
例えば、香典とお供え物をセットで持っていくのが風習だとすれば自分もそうする必要があるし、お供え物の内容が決まっているならばそれに従います。
香典の金額についてもしかりです。金額が仕来りで決まっているならば、その金額を包みます。
そうするために、必ず事前に施主や地元の親戚などに確認しておくことが大切です。
そういった一手間を省き、香典だけをもってお参りに行った結果、「あの人は手ぶらで来た」などと陰口を言われたりしたら鬱陶しいことこの上ないのです。
また上記とは別に一般論として、お供え物を持参する場合は、事前に施主側のご都合を確認しておくことも大事です。
何が良いのかご希望があるかもしれないし、スペースの問題でお断りをされる可能性もあるからです。
もし、お供え物と香典を両方持っていく場合は必ずしも負担増と考える必要はないでしょう。香典だけなら5千円という予算であったなら、香典3千円・お供え物2千円とか、香典2千円・お供え物3千円としても決しておかしくはありません。
お供え物は何が良いのか
定番品がありますね。
- お花
- くだもの
- 夏の冷菓
- 線香
- ろうそく
- 提灯
などがそうですね。
お菓子なら、参列者に配ることを想定して、個別包装されているものがいいです。
もし神式の初盆であれば線香は関係ないので持っていってはダメです。
また、提灯を贈る習慣がある地方の場合、スペースの関係で現物の代わりに「提灯代(つまり現金)」のほうがよい場合もあります。
昔から提灯をおくる習慣のある九州の知人は、大きな家に住んでいるにも関わらず「提灯代のほうがいい」と言ってました^^
まあ色々と事情があるので、理想は、事前に先方のご都合をお伺いして、そのご意向に沿ったものを持っていくのが一番であると思います。
ネット上の質問ですが、お供え品とは別に手土産も持参したほうがいいか、という質問です。
決まりはないので気持ちの問題です。
一つの考え方として・・・実家・義実家に帰るときは両方あったほうがいいのではないでしょうか。
手土産の内容については、相手の好み中心で選ぶのがいいのか、贈り手の感覚で決めるのがいいのかは、それぞれの事情です。
ただし、手土産とお供え品は意味合いがまるっきり違うので、お供え品には必ず「御供」の表書き(印刷されたものでも)をしてください。
香典
次は香典の金額や袋についてご説明します。
金額の相場
多くの方が悩むのは包むお金の額を幾らにするかですね。先に述べましたように、そんなに気に病む必要はないのですが・・・
悩まねばならない理由は、基準が明確ではないこと、人並みでありたいと思う心が働くこと。だいたいはそういうことでしょう。
では、どれくらい包むのがいいのか? その金額とは・・・
- ご近所の初盆で誰でもお参りできるようなケース
- 2千円か3千円
- 知人・祖父母・叔父叔母・従兄弟の初盆
- 20〜30歳代:3千円か5千円
- 40歳代以上:5千円〜1万円
- 父母・兄弟の初盆
- 20〜30歳代:1万円〜3万円
- 40歳代以上:3万円〜
以上で問題ありません。年齢差による金額差は、単純に可処分所得が増える前提です。ですから、そうでないご事情であれば、できる範囲の金額を包んで供養すればいいのです。
自分の方で初盆法要を行った際に供えられた金額と同じ金額を持っていく、という考え方もあります。
人によっては、金品のやり取りを正確に記録しておいて、その記録を参考にする方もおられ、これはこれで一つの考え方です。
金額や数字についての注意点
しきたりが存在する場合
先にも述べましたが、地域によっては香典の金額にしきたりが強く影響する場合があります。
そういうことが考えられる場合は、必ず事前に親戚などに確認して、差し障りのない金額を包むようにします。
会食に参加する場合
会食(お斎)に参加する場合:香典金額に食事代として3千円〜1万年を上乗せします。夫婦で参加した場合は2倍上乗せします。お参りのみの場合は夫婦でも頭数は考慮する必要がありません。
使えない数字
4(死)と9(苦)は縁起が悪いので使いません(9千円とか4万円とか)。
香典の整理計算に何度か携わった時の事を思い返すと、数字の頭が6〜8の金額も見たことがありません。
金額のお話はこれくらいにして、引き続きお金を入れる香典袋の疑問を解いていきます。
お金の入れ方
香典袋にお金を入れる方法ですが、これも決まりがあるわけではありません。この記事中、一番軽視しても良いかもしれませんが、一応書いておきます。
- 袋には裏向き(人物像のないほう)になるように入れる(袋を開いてお札を見たときに表向きになる)
- 複数枚を入れる時は全て同じ向きにしておく
- あまり古いお札は使わず、新札をそのまま入れるか一度折り目を入れた上で袋に入れる
旧札にこだわる方もおられるようですが、旧札はより綺麗ではありません。新札を一回真ん中で折って入れてください。
香典袋の水引の色
水引は袋を巻いて中央で綺麗に結んであるものを差しますが、これは紙縒をノリでくっつけて平たいひも状にしているもので、色は慶弔に合わせ、金から黒まで何種類もあります。
初盆用としては・・・
- 関西・北陸・山陽:黄と白
- 関東:黒と白
と、一応はそうです。が、これも地域性の強いものなので、拘る必要性を感じるのであれば、地元の方に確認した上で用意すればいいと思います。
それと、水引も含めた袋の豪華さですが、基本的にはシンプルなものがいいです。何度か計算や整理に関わったものの感想として、あまりに豪華なものは嵩張って整理にも困ります。
香典袋の表書き
- 仏式でも神式でも使える表書き:御供物料
- 仏式:御仏前(御佛前)
- 神式:御玉串料または御神前
上記のうち適切なものを袋の中央、水引の上側に書きます。これはよくご承知ですね。そしてその下(水引の下側)に氏名です。
夫婦の場合は夫名の左隣に妻名を書いてください。連盟の場合は3名までなら氏名を並べて書いてください。
それ以上の場合は、〜会社・・・部 一同などと記し、袋の中に具体的な氏名を列記した紙を入れておいてください。
仏式のお葬式を何回も経験すると、表書きをする回数も増えて「御霊前」という単語が記憶に残りますが、これ、初盆の表書きには使えないのです。必ず「御仏前(御佛前)」と書いてください。
金額と住所
これは香典袋の裏面に、もし中袋がある場合は中袋の表に絵のとおりに書きます。
墨の色は濃い?薄い?
四十九日を過ぎたら薄くなくても良いという説と、いやいや、やはり薄墨が良いという説がありますが、現在ほとんどのケースでは普通の黒色筆ペンが使われており何の問題もありません。
ただ、薄墨の筆ペンもあるので、拘る必要があればそれを使います。
香典以外の表書き
- お供え物の表書き:御供
- 提灯現品に代わり現金とする場合の表書き:御提灯代
ここで香典に関する説明は終わり、後、ネットで目についた質問について解説します。
お供え品や香典を贈る場合の文面
ご招待をいただいてもお参りに行けない時があります。
そういう場合は、お供え品や香典をお送りするのですが、お供え品の場合は必ず施主に了解を得て送ってください。
また、香典は現金書留となりますが、水引が封筒に引っかかって入れにくいので、印刷されたものを使うようにします。
デパートやネットからの直送はいかにも事務的なので、できれば短くていいので自筆の便箋を一枚入れて贈ります。
文例は例えばこんな感じです
「初盆をお迎えされるにあたり、改めて衷心より哀悼の誠を捧げます。
この度はお参りに行くことが叶わず大変に申し訳ございません。
つきましては、ささやかながら心ばかりの品を送らせていただきますので、御仏前にお供えいただきますようお願い申し上げます。
故人のご冥福をこころよりお祈りいたします。」
数珠は必要か
仏事に関しては、どんな時でも数珠はあったほうがいいです。
場所取らないし、常に持ち歩くのもいいと思いますよ。そうすれば急なときにも対応できます。
数珠玉の数は本来は108個です。煩悩の数と一緒で、その一つ一つが煩悩を引き受けてくれると言われています。
宗旨宗派によって違いはあるのですが、一般的には、そういうことを気にする必要はありません。
服装はどうしたらよいか
何度も申しますように決まりはありません。
地域の仕来りがなければ、おとなしい暗めの色のスーツかジャケット上下、略礼服でもいいし、女性なら一番無難なのは黒地のワンピースです。
また、キラキラする装飾品はNGです。派手なネールもNGです。
初盆が重なった場合の優先順位
このような質問もありましたね。
まあほとんどないケースとは思いますが、万が一重なってしまった場合は血族優先です。自分に近い故人のお参りを優先します。
その後で可能であれば、別の方もお参りに(だけでも)行くのがいいでしょう。
こういった場合に大切なのはしっかりとした意思疎通です。きちんと筋道を立ててお話をしておけば揉めたりはしません。
まとめ
初盆でお参りに行く人の立場に立って、多くの方が疑問に思っているであろうことについて一つずつご説明しました。
文中何度も申し上げてますが、法律や決まりがあるわけではありません。なので、きちっとした正解と言えるものはそもそも存在しません。
たまたま友人に寺の僧侶がいたり葬儀会社の経営者がいたりして、多くのことを教えてもらっていますが、記事はそういうことを主軸にはしてますが、私自身は自分の考えで取捨選択して行動しています。
ただ、これも繰り返し申し上げていますが、地域の仕来りがある場合は、とにかく合わせることが大切である、というのが私の考え方です。
初盆で呼ばれてお参りに行く故郷なんかは、それっきり付き合いがなくなるのではないので、角が立たぬように丸く収めておかないと、あとあとめんどくさいことになる可能性があります。
生まれてこのかた両親の故郷(すごい田舎)を離れたことのない従兄弟でさえそう言ってます。
最後に、私の香典の金額を申し上げます。95%が・・・
- 3千円
- 5千円
- 1万円
のどれかです。判断基準はあるようなないようなで、血縁の有無と故人との距離感です。その時の閃きで決めています。
コメントを残す