目 次
花粉対策は早期開始がポイント
私は長年、花粉症に悩まされてきました。毎年シーズンが来れば必ず発症するし、それ自体は変えられませんが、つらさの度合いはかなりコントロールできます。
花粉症の症状は「悪化の積み重ね」できつくなる
花粉症は突然ひどくなるわけではありません。花粉への曝露が続くことで粘膜の炎症が強まり、反応が過敏になり、徐々に悪化していきます。
飛散そのものは止められません。仕事や生活も簡単には変えられません。それでも、症状を抑えることは可能です。
体内に免疫システムがある以上、アレルギーを完治することは基本的に出来ません。したがって対策の目的は、症状の悪化をできるだけ緩やかにすることになります。
早く対策することが最重要
飛散が本格化する前から備えていると、
- 症状のピークが抑えられやすい
- 薬の効きが安定しやすい
- 生活の崩れが少ない
という大きなメリットがあります。
対策を、シーズンに入る手前で始めるのが苦しまないポイントです。まずは、ここを押さえて実行しましょう。
花粉予報と準備そして初期療法
第1章で述べた通り、花粉対策は「早く始める」ことが決定的に重要です。
では、
- いつを基準に動くのか?
- 何を前倒しするのか?
ここを具体的に整理します。
花粉予報から飛散開始日を知る
花粉情報には三段階あります。
- シーズン全体の飛散予測(前年秋〜年明け)
- 飛散開始予測(およそ1〜2週間前に具体化)
- 日別飛散量予報(1〜3日前が最も精度が高い)
ここで重要なのは、飛散開始予測です。
飛散開始日が示されたら、その日の1週間前を行動開始日とします。
シーズンイン前にやるべき準備
この段階でやることを具体的にお話します。
生活面では、
- マスクの本格使用開始
- 洗濯物の外干し中止
- 換気時間の短縮
- 帰宅後すぐに花粉を落とす
を始めます。
初期療法を初める時期
医療的対策も同じです。
第2世代抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイド薬は、症状が強く出る前から開始することで効果が安定しやすいとされています。
一般的な目安は、
- 飛散開始予測の数日前〜1週間前
からの開始。
なぜなら、症状が出てから飲むのではなく、炎症が強まる前から抑えにいくのが効果的であり、これが初期療法の考え方です。
もちろん、具体的な開始時期や薬の種類は個人差があります。自己判断せず、医師や薬剤師に相談するのも大切です。
屋外での花粉対策
第2章では、花粉予報を基準にシーズン直前から準備と初期療法を始める話をしました。ここからは、実際にシーズンが始まった後、外でどう防ぐかの具体策に入ります。
花粉の飛散そのものは止められませんので、出来るだけ体内に取り込む量を減らすことが大切であり、これが屋外対策の目的です。
マスクは密着がポイント
花粉対策で基本になるのは不織布マスクです。
マスクには大きく分けて、
- 不織布
- 布製
- ウレタン
があります。
花粉(約30マイクロメートル)は比較的大きな粒子ですが、布製やウレタン製は繊維の隙間が広く、遮断性能が不安定です。
防寒や飛沫対策としては一定の意味がありますが、花粉対策としては不織布が推奨されます。
ただ、不織布でも密度に違いがあり、密度が高いほど防御力が上がる反面、その分息苦しくなります。
防御力と呼吸のしやすさはバーター関係にあるので、長時間つけ続けられるあなたのあったものを選ぶことが重要です。
そして性能以上に重要なのが装着精度です。隙間があれば効果は大きく落ちます。
- 鼻のワイヤーをしっかり曲げる
- 頬の浮きをなくす
- 顎まで覆い上下の隙間を作らない
不織布を選び、正しく密着させることが屋外対策の基本です。
花粉対策用メガネは「目の粘膜」を守る
目のかゆみが強い人は、専用メガネを装着することを考えてみてください。
花粉は鼻だけでなく目の結膜からも侵入します。フレームの側面が覆われている専用眼鏡は、かなり効果が期待できます。
ただ、商品によっては、マスク併用で曇りやすくなる場合も考えられます。曇りが気になる場合は、曇り止め加工眼鏡を使うか、曇り止めスプレーを併用するといいでしょう。
コンタクトレンズ使用者は、花粉がレンズ表面に付着することで症状が悪化することがあります。症状が強い日はメガネに切り替えるほうがよいでしょう。
衣服への花粉付着量は素材と帯電で差が出る
花粉は繊維の凹凸に絡みつき、さらに静電気によって引き寄せられます。起毛素材は表面積が大きく絡みやすいため、付着しやすい傾向があります。
一方で、表面が滑らかな素材は花粉が落ちやすいですが、乾燥した環境では静電気を帯びやすいものもあります。
したがって選ぶ基準は、
- 起毛していない
- 帯電防止加工がある
- 払いやすい表面素材
この三点です。
ウールやフリースは避け、ポリエステルやナイロンなど滑らかな素材を選ぶと扱いやすくなります。帰宅前に軽く払うだけでも持ち込み量は変わります。
外出時の注意点と帰宅後の習慣
花粉は衣類だけでなく、髪や顔にも付着します。とくに髪は表面積が広く、花粉をため込みやすい部位です。
外出時は、
- 晴れて風が強い日は帽子を着用する
- 花粉が多い日は屋外滞在時間を短くする
- 目がかゆくても強くこすらない
など、曝露を減らし炎症を悪化させないことが重要です。
そして帰宅後の行動も大切です。
- 玄関に入る前に衣類の花粉を払う
- 玄関に入る前に髪や肩を軽くはたく
- 手洗い・洗顔を行う
- 目を洗う
屋外で付着した花粉をその日のうちに落とす。これが屋外対策最後のポイントです。
室内での花粉遮断術(掃除・換気・洗濯)
第3章では、屋外での花粉対策を解説しました。この章では、室内での対策について解説します。
室内対策の目的は明白ですが、一応箇条書きにすると以下のとおりです。
- 滞留させない
- 再浮遊させない
- 溜め込まない
この三点に集約されます。
室内花粉の正体は「再浮遊」
屋外で付着した花粉は、室内で歩く、ソファに座る、布団を叩くなど、それだけで再び空中に舞い上がります。
症状が室内でも続く人は、外で呼吸により体内に入った花粉に加え、この再浮遊花粉の影響を受けている可能性があります。
したがって重要なのは、室内で花粉が舞い上がる前に処理することです。
掃除のコツは順番を守ること
やみくもに掃除機をかけるのは逆効果になる場合があります。
基本は、
- 乾拭きではなく湿らせたクロスで床を拭く
- その後に掃除機をかける
- 最後に空気清浄機を回す
という順番です。
いきなり掃除機をかけると花粉が舞い上がることがあります。まず湿らせたクロスで表面の花粉を拭き取ります。
ただし拭き取りだけでは床の目地やカーペットの繊維奥までは除去できませんので、最後に掃除機で残存分を吸い取ります。
換気のコツは時間とタイミング
日常生活を送る上で換気は大切です。しかし、換気は花粉を呼び込むことにもつながります。では、どのように換気をするのが合理的なのでしょうか?
そのポイントは、時間とタイミングにあります。
花粉は、
- 気温の高さ
- 風の強さ
- 空気の乾燥度
によって舞い上がりやすさが変わります。
なので、晴れて風が強い日中よりも、気温が上がりきる前の時間帯のほうが比較的少ないので、これが換気には適しているタイミングです。
- 花粉飛散が比較的少ない早朝
- 短時間で一気に空気を入れ替える
この考え方が合理的です。
花粉の季節は外干しをやめよう
外干しは大量の花粉を付着させます。症状が強い人は、シーズン中は室内干しを推奨します。
どうしても外干しする場合は、
- 花粉飛散量が少ない日を選ぶ
- 取り込む前によく払う
- 取り込んだ後に軽く乾燥機を回す(性能に依存するので機種次第)
などで付着量を減らします。
一番望ましい方法は、室内干しや全自動洗濯乾燥機を使い、外干しを徹底してしないことです。
寝具は特に重要です。布団に付いた花粉は、就寝中に顔周辺で再浮遊します。なので、カバーはこまめに洗濯することが大切です。
外干しすると意味がないので、洗濯乾燥機で洗濯・乾燥することがポイントです。
症状を抑える薬の選び方(市販薬と処方薬の違い)
第4章までは、花粉を体内に入れない工夫でした。ここでは、体内に入ってしまった花粉に対して、薬で対処する話をします。
薬選びで最も重要なのは、症状を見極めることです。
- くしゃみ・鼻水型
- 鼻づまり型
- 目に顕著な症状
症状にあった薬を使うことが大切です。
市販薬でもよいケース、処方薬がよいケース
症状が軽く、毎年パターンが読める人は市販薬から始めても構いません。
例えば、最近の第2世代抗ヒスタミン薬は眠気が比較的少なく、日常生活に支障が出にくいものも増えており、ドラッグストアで気軽に購入できます。
しかし、
- 鼻づまりが強い
- 仕事や運転に影響が出る
- 毎年ピーク時の症状が重い
- 市販薬で安定しない
こういう場合は、病院で診察を受けたうえで適切な薬を処方してもらうほうがよいでしょう。
根本改善を目指す免疫治療法の実際
これまでの章では、花粉の侵入を減らす工夫や、薬による症状コントロールについて解説してきました。
この章では、花粉に対する反応の過敏さそのものを変えたいという人向けに、根本改善を目指す免疫療法(アレルゲン免疫療法/AIT)の実際と最新事情を整理します。
花粉症の根本改善とは何か
免疫療法とは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつ体に入れて免疫系を「慣れさせる」ことで、反応の強さを下げる治療法です。
単なる症状緩和ではなく、アレルギー反応そのものを起こりにくくする「体質改善」を目指す唯一の方法とされています。
代表的な方法は次の二つです。
- 舌下免疫療法(SLIT) … アレルゲン含有の錠剤または液を舌の下に置き、体を慣れさせていく方法。
- 皮下免疫療法(SCIT) … アレルゲンを皮下注射で投与し、体の反応性を下げていく方法。
どちらも単発で終わる治療ではありません。通常は3~5年以上の継続が標準とされ、効果がじわじわ実感できるタイプの治療です。
誰に向いているのか
免疫療法が向くのは、一般的に次のような人です。
- 毎年症状が強く、薬だけでは安定しない
- マスクや室内対策をしてもピーク時がつらい
- 根本的な改善(薬に依存しない生活)を望む
- くしゃみや鼻水だけでなく目の症状も強い
薬による対症療法は短期的に効果を出すものですが、免疫療法は体の反応そのものに働きかける治療です。
免疫療法の実際と最新情報
舌下免疫療法(SLIT)
日本でもスギ花粉に対する舌下免疫療法が普及しています。治療は飛散シーズン終了後(多くは初夏以降〜冬前まで)の期間に開始するケースが多く、数年かけて体を慣れさせていきます。効果が出る割合は高く、多くの人で症状の軽減が期待できるとされています。小児でも対象となるケースがあり、一定年齢以上なら舌下免疫療法が可能です。
※先程紹介したSCITも現在行われていますが、体質改善を目的とする免疫療法としては、近年は舌下免疫療法が主流になっています。
生物学的製剤(抗IgE抗体)
従来の免疫療法とは別方向の最新選択肢として、抗IgE抗体製剤の活用が増えています。例えば「ゾレア」(オマリズマブ)は、従来の治療で十分な効果が出ない重症・最重症のスギ花粉症に対して、皮下注射での治療が行われるようになっています。この治療は花粉シーズン中に使用されることもあり、重い症状でも改善が得られる可能性があります。適応には医師の診断や血液検査が必要です。
免疫療法のメリットと注意点
メリット
- 薬に依存しないような改善が期待できる
- 長期的には薬の量を減らせる可能性がある
- 治療終了後も効果が持続する可能性を期待できる
注意点
- 数年以上の継続が必要
- 即効性は期待できない(体質改善型)
- 全ての人に効果が出るわけではない
- 副作用管理と医療機関での継続フォローが必須
免疫療法の副作用について
免疫療法には副作用の可能性がある。
舌下免疫療法(SLIT)では、
- 口の中のかゆみや違和感
- 喉の軽い腫れや不快感
- 軽度の胃腸症状
などが初期に出ることがあるが、多くは数週間で落ち着く。
一方、皮下免疫療法(SCIT)では、
- 注射部位の腫れや赤み
- 全身性アレルギー反応(まれ)
といったリスクがある。このため医療機関での管理が必須となる。
いずれの方法も、重篤な副作用は頻度としては高くないが、それでもゼロではない。












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