目 次
お墓参りに関する疑問点について、一つずつ説明をしてゆく記事です。
不思議なことに、結婚式はキリスト教式でなければ神前結婚式が多く仏前式はほとんどありません。逆に、葬儀やその後の行事については圧倒的に仏式として行うのが多いんですね。
そういう事実に従い、この記事も基本的には仏式としてのお墓参りについてのあれこれを述べていきます。
一番大切なことは故人やご先祖を供養することであり、その気持ちを持って手を合わせる心があるのであれば、それ以外の細かいことは気にしなくてもいい・・・というわけにもいかないんですね。
いろんな行事にはそれぞれに作法や順序というものがあります。変にこだわらなくてもいい部分は沢山ありますが、同時に、知って身につけておくべき知識やマナーもあります。
一度知れば後は一生使える知識なので、この際、覚えてしまうのがいいです。
お墓参りをする時期
年に何回も行けないけれど、行くならいつがいいんだろう? なんか決まりみたいなものがあるのだろうか?
そんな疑問もあると思いますが、実際のところ特別な決まりはありません。ですからあなたのご都合の良い時にお参りすればいいのです。
昔はお墓が身近にあったので、お参りを「わざわざ」するというより日常生活の一部でした。
うちの両親の里なんかも典型的な農村で、村の真ん中にお寺があっていつでもその前を通るしいつでもお参りができるし、ご先祖はごく身近な存在でした。日本中のいたるところがそうでした。
ところが時は流れ、今ではすっかり生活形態が変わってしまってお墓が遠くなった人も多いです。
ですから行ける時にお墓参りをしてください。
ただ、確かに決まりはないものの、過去からの習慣はまだまだ残っているようでちょっとびっくり。
そう感じたのは・・・あるアンケート調査で、いつお墓参りをするか尋ねたところ・・・
- お盆
- 春彼岸
- 秋彼岸
- 命日
という順番でほとんどの方がこの中に収まっていたのです。上記のように、生活形態が昔と比べまるっきり変わってきているので、もっとバラけているのかと思ってました。
確かに日本では、旧暦の節句や雑節や多くの暦注に基づいて古来よりいろんな行事を行ってきました。そして、時代の流れの中で残っていく行事もあれば廃れていった行事もあります。
お盆やお彼岸はまだまだしっかりと多くの日本人の心の中に根付いていますね。それと、お盆は夏休みで彼岸は祝日になっているのも大きな要因でしょう。
お盆
年に一度亡くなった方が地上に帰って来る日です。お迎えをして供養するのがお盆です。
迎え火を焚くのは迷わず帰って来れるように、そして、送り火を炊くのは真っ直ぐ帰れるようにという意味合いがあります。
有名な京都五山の送り火も祖霊を黄泉の国へお送りするためのものです。
お盆はこれからも広く残って行くでしょうね。それぞれのお家の法事やお墓参りだけでなく、花火大会・盆踊り・五山送り火・精霊流し。みんなお盆の伝統行事です。
故人が亡くなり初めて迎える盆を初盆といいますが、これが少しややこしいんです。
8月12日までに四十九日法要が終了していれば、その年の8月13日〜16日が初盆になり、終了していなければ翌年のお盆が初盆となります。
彼岸
彼岸は節分や八十八夜と同じ雑節の中の一つで、春分の日・秋分の日とその前後3日の合計各7日間のことを指します。
- 最初の日を「彼岸の入り」
- 最後の日を「彼岸の明け」
- 春分・秋分を「彼岸の中日」
と呼びます。
春分の日と秋分の日は昼と夜が同じ長さで太陽が真西に沈みます。西に極楽浄土があるので、この両日の太陽は沈む方向が極楽への道しるべになると考えられていました。
春分の日と秋分の日の昼と夜の時間は、実は同じ長さではありません??
その理由は・・・大気の屈折が影響して、まだ出ていない太陽が見えて、もう沈んでしまった太陽も見えるからです。
だから見かけ上は昼が長くなってしまうのです^^
さて、昔から彼岸にはご先祖を敬いお墓参りをする風習がありました。
また、故人となられて初めての彼岸を初彼岸といい法事を開く場合もあります。
自分にとって特別な日
旧暦の雑節に合わせて行動するのは上述のようにとっても意味のある事ですね。
でもそれとは別に、というか拘らずに、自分の特別な日にお参りに行くのも全然ありだと思います。
- 自分の誕生日
- 学校に入学した日
- 初めて100点をとった日
- 大学に合格した日
- 結婚した日
- 子が生まれた日
- 住宅を購入した日
などなど・・・お参りというより報告とかお礼かな。
迷える日とかでもいいですよね。
- 進路で悩んでいる日
- 結婚すべきかどうかで迷ってる日
- だれかと大げんかをした日
などなど・・・これは相談の意味合いとかがあるのかな。それとも誰にも言えないことを故人に告げているのか。
いずれにせよ、事あるごとに故人と繋がりを持つのは供養になると思います。・・・そうはいっても、お墓が近くなければ難しいんですけれどね。
お墓参りの服装
決まりはないので基本的には平服でいいです。
ただし、法要で人が集まる場合はそれなりの弔意を表す服装で、また、地方・地域に独特のしきたりがある場合は、それに従った服装がいいです。
うちの場合は、父が他界した時に私たちの墓として建立したので、一番気楽なパターンです。
気を使う人がいないので、納骨の時以外はいつもジーパンにTシャツです。
お参りの時間帯
これも決まりはないので都合の良い時間帯でいいです。ただし、足元の危険を勘案したら、当然明るい時間帯がいいでしょうね。
そして、掃除やお供えやを考えるとそれ相応の時間が必要なので、「明るい時間帯」とは言っても、やはりそこそこ早い方がいいんじゃないでしょうか。
だれかと一緒に行く場合で何か配慮すべき事情があれば、或いは、地方・地域の慣習があるのであればそれに従います。
昔、生活とお墓が密着していた頃は、午前中にお参りして作業に出かけるという習慣があったようですが、何度も申し上げますように、今は環境や事情が変化しています。
お参りに持参するお供えその他
お墓参りをする上で持って行ったほうが良いもの、持って行ったら便利なものなどを並べてみます。
- 掃除道具
- ろうそく
- 線香
- 点火ライター
- お花
- ハサミ
- 食べ物
- 半紙又はお皿
- 防虫スプレー
お墓の掃除
次の記事で詳しく説明していますのでそちらをお読みください。
五つのお供え
仏教でのお供えは・・・
- 香(線香)・・・心身の浄化、仏様の慈悲
- 花・・・清らかな心でご先祖に感謝
- 灯明(ローソク)・・・煩悩を消し去る
- 浄水・・・清らかな心
- 飲食・・・ご先祖への感謝
以上の五供(ごくう)が基本です。
五供のなかで・・・浄水は清らかな自然水ですが、今は普通の水道水やお茶をお供えすることが多いです。
飲食は普段食べているものですが、故人の好きだったものを供えるケースが多いです。
線香ローソク立・ライター
もしお参りするお墓にローソク立てや線香立てがない場合、携帯用の品を持って行って代用することもできます。
又、最初に火をつけるのに役に立つのが屋外用の着火ライター。外は結構風があって、マッチでは用をなさないことも多いので、一つ買っておくのがいいです。
チャッカマン ともしび 2年保証付き (ソフト着火・注入式)
それからローソクは風に弱くすぐに消えるので屋外用ローソクを用意するのがいいです。すぐ消えてまたつけ直したりする手間がなくなります。
線香は香りの良いものにします。良い香りを漂わせるために線香を焚くのです。
- 天台宗 3本
- 真言宗 3本
- 浄土宗 2本
- 浄土真宗 1本
- 臨済宗 1本
- 曹洞宗 1本
- 日蓮宗 1本
さらに、立て方・寝かせ方があります。しかし、地方の習慣やお寺の伝統や住職の考え方などがあって、必ず絶対上記の通りというわけではありません。
ローソク・線香・ライターがセットになった商品もあるので、これを持っておくものいいかもしれません。
お花の選定
四十九日までは白い花がいいとも言われますが、その他も含め特に決まりはありません。
しかし、一般的には・・・
- 日持ちがよく
- あまり香りが強くなく
- 品があり
- 枯れた時に花びらが散らない
- 枯れた時に花ごとごそっと落ちない
というようなものが良いとされ、代表格が菊の花になります。
その他・・・
- 春はカーネーション
- 夏はユリ
- 秋はリンドウ
- 冬はサザンカ
なんかが無難なのではないでしょうか。
不適正な花
次に避けたほうがいい花は・・・
- 毒性のある花
- トゲのある花
- ツル植物の花
樒は毒性が強くて有名です。昔は、その毒性で墓荒らしの動物から守っていたと言われたくらいですから。
イリチンやアニサチンが多く含まれ、いずれも猛毒で劇薬指定です。しかし、皮膚から吸収されることはほとんどないので、口に入れなければ大丈夫です。
トゲは取り扱いに難があるから、又、朝顔のようなツル植物は伸びるので避けたほうがいいのでしょう。
しかし現在では、必ずしも上記に拘らずに、故人が世話をしていた或いは好きだった花が一番供養になる、とする考え方の方がむしろ一般的かもしれません。
飲食(おんじき)
食べ物と飲み物で、故人の好きだったものがいいです。
基本的には、去る時に持って帰らなくてはいけないので、そうしやすいお菓子や果物がいいです。
お参りの手順
必要なものを忘れずに持ってきました。では掃除とお参りをしましょう。手順は以下の通りです。
- 一番最初は手水で手を洗い清める。
- 墓前で手を合わせてから墓掃除を始める。墓掃除の詳しい説明はこちら。
- 左右の花立にバランスよく花を飾る。
- ライターでろうそくを灯す
- 線香を人数分束にして火をつける
- 線香をそれぞれに分けてお供えする
- 飲食を供える。食べ物は用意してきた半紙の上に置くか皿のような器を持って行っても良い。
- 酒やジュースなどの飲み物も一緒に供える
- 数珠を手にかけて両手を合わせて頭を垂れ合掌する。
以上が大体の手順です。
お参りの注意点
親戚がお墓のお守りをしている場合は必ず事前連絡をしてよくすり合わせをしておきましょう。
そうしないと、先にお花が飾られていて持っていったお花を飾れないというような事も起きる可能性があります。
それとともに、事前連絡というちょっとした気配りで不要な摩擦は避けられます。
寺院内の墓苑であれば先に本堂の御本尊にお参りし、できるのであれば住職にご挨拶をします。
管理事務所があるなら、先にご挨拶をしておきます。
霊園の規則がある場合はそれを一読しておきます。知らなければ、無意識にせよ違反行為をしてしまうかもしれません。
故人が可愛がっていた動物を連れて行くときは、それが可能かどうか事前に確認しておくことが必要です。
ライターで火をつけるのはあくまでもロウソクです。線香に火をつけるのはローソクの火です。
ろうそくのロウは墓石のシミになるので落としてはいけません。もし墓石についてしまったら綺麗に拭き取ります。
もし線香が炎を上げた場合は吹き消してはいけません。持った手をスッと下に引いてください。それで消えます。
その理由は仏教のどの宗派でも同じで、人間の口から出る息が不浄だとされているからです。
数珠は不要だとする考えがありますが、仏教における合掌では必要不可欠です。でも、一人でお参りするなら、あってもなくても誰もとがめはしません。
後片付け
基本的には何もない元の状態に戻します。
ロウソクや線香は消して持って帰るので、水をかけて袋に入れられる温度にしてください。火の気を残して帰るのは、火事の危険を残して帰るのと同じです。
食べ物や飲み物も持って帰ります。置いたままにしておくと、カラスや野生動物に食べ散らかされて汚くなるし、墓石のシミの原因にもなります。
飲み物を墓石にかけるのはNGです。墓石によくないし、お酒類ならアルコール臭が漂います。故人が好きであった事と墓石にかけることはつながりがありません。
また、霊がついてくるので持ち帰らないほうがいいという考え方もあるようです。が、ついて来られて何が嫌なのか?と逆に問いたいです。
でも、もし嫌であれば、その場で故人とともに食べればいいんです。それができるくらいの量に、最初からすればいいのです。
お花も同様に持ち帰ります。放置するとやがて枯れ、雨水に色素が混じり落ち、墓石のシミの原因になります。虫が湧く原因にもなって衛生上も良くないです。
持ち帰った花は仏壇以外のところに飾ります。
墓苑で借りたバケツや柄杓は、ちゃんと元の位置に戻しておきます。
管理されている霊園であれば、管理規則に従います。そして、管理事務所やお寺で後片付けをしてくれるのであれば、何をしてもらえて何をしてもらえないのかをよく聞いた上でお願いするのもいいでしょう。
親族がお墓の近くで暮らしていてお墓をお守りされているのであれば、お花の処分などはその親族と相談します。感情が伴うので、よくよくすり合わせするのが大事です。
まとめ
お墓参りについての疑問を解きほぐす記事でした。
お供えする五共やお参りの意味を知ることは大切です。理解しているからこそ、ろうそくの火を吹いて消したりはしなくなるのです。全てがそうです。
その一つ一つをきちんと守っていくことは、結局、亡くなった大切な人やご先祖に対する敬意や供養に繋がっていくのではないでしょうか。
そしてもう一つ大事なのは後片付けですね。墓苑という施設を状態良く存続させていくために、訪れるみんながお参りの後をきちんとしておく必要があります。
もちろん火災の原因をなくしておくことも大切ですね。
最後に・・・
最低限の決まりやマナーはよく理解し守ることが必要ですが、その上で一番大切なことは、故人やご先祖を敬い供養することです。
お墓というドアを開けると、大切な人たちがそこにいるのです。
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