KANOという映画
知っていましたか?
かつて甲子園に、
台湾代表が出場していたことを−。
これは台湾で空前の大ヒットを飛ばした映画KANOのキャッチコピーです。
ある時、台湾人の友人からlineがかかってきて「今日KANOを見て、バケツ一杯分の涙が出た」って言うのですよ。
何の事かわからないし説明を求めると、嘉義農林学校の野球部が初めて甲子園出場をして準優勝した実話の映画だとのことでした。
話を聞いても唐突でどうも実感がわきませんでした。「どこかの会社の社長が映画館を借り切って社員に見せてた」とか、lineの向こうで興奮していたのですが・・
つまり・・・
台湾を日本が統治していた時代は台湾も日本の一部だったので、全国高校野球選手権大会(全国中等学校優勝野球大会)には台湾代表として一校が参加していたのです。
ところが台湾人にとって野球は馴染みがないし当然指導も行き届いていないので、台湾代表は決まって日本人の子弟が通う高校(当時は中等学校)でした。
ところが台湾南部の嘉義にある名もない農林学校の野球部を日本人の近藤兵太郎という人が教えるようになってから事態は変わります。
嘉義農林野球部員は日本人・漢民族・原住民という言葉も背景も違う生徒の集合体でしたが近藤はこの違いを長所に変えて、なんと創部三年で台湾代表になり甲子園初出場を果たしいきなり準優勝をしたのです。
KANOという映画は、永瀬正敏演じる近藤監督と野球部の成長プロセスを追ってゆく傍、干ばつで苦しむ地元農民を大沢たかお演じる八田與一が烏山頭ダムを造り救ってゆくサブストーリーなんかを織り交ぜて描いています。
言われて調べて分かったのですが、台湾での盛り上がり方は半端じゃなかったようです。
舞台になった嘉義市では試写会当日、永瀬正敏はじめとする主要メンバーのパレードを6万人以上の人達が歓喜の渦で取り囲み、そのまま野球場に行って大スクリーンで試写会を行いました。
上映までには政治的な壁もあったそうです。
「日本語が多すぎる」。そりゃそうでしょ、セリフの9割が日本語なのだから。台湾人監督が台湾人向けに台湾で起こったことを映画化して、台湾の人がそれを字幕読みながら見るって、そりゃ文句の一つも出るでしょう。
「日本を美化しすぎてる」。国民党政府だから当然の意見です。とは言うものの、もし台湾人と一緒に見たらちょっと申し訳なく思うほど、日本統治時代を批判色無しに描いてるんですね。
しかし、そんなことを物ともせずに非常に大きな興行成績をたたき出しています。どうして台湾の人たちの心をそれほどまでに揺り動かしたのか?
馬志翔監督はインタビューで答えます。馬監督の思いが多くの台湾人の心の中で共鳴しているのだと思います。
- 「台湾では歴史への関心がどんどん薄れている。しかし歴史を理解することは大きな自信へとつながる」
- 「この映画を見て、先人から何を学ぶべきかがわかるはず。それは「永遠に諦めない」精神だ」
- 「日本統治時代には良い事も悪い事もあるが、過去をすべて否定できるはずがない。あの50年があって今の発展がある」
- 「日本は植民統治をしたが、同時にハード・ソフト面で台湾社会全体に近代化をもたらした。それだけでなく過去からあった社会的悪癖をなくし医療面の貢献も大きかった」
- 「私が強調したいのは植民地支配の階級社会、差別問題ももちろんあったが、この映画が描いているように、人種を超えて共に目標に向かった現実もあるということだ」
ということで、今回は映画KANOのふるさと嘉義市でゆかりの場所をご紹介します。そして更には嘉義市に出来たばかりの「国立故宮博物館南院」にも寄ります。
まだ映画を見ていない方は是非観てください。主題歌もとてもいい歌。
嘉義公園
映画の最初の方で近藤先生が呼び出された場所は嘉義神社ですが、実は嘉義神社は嘉義公園の中にある(あった)のです。
このヤシの木が印象的な嘉義公園はめちゃくちゃに広いです。もう圧倒されます。地元に住んでいる散歩好きには楽園でしょうね。
しかもただ広くて美しいだけではなく写真のように、史跡資料館(嘉義神社)、孔子廟、射日塔(展望台)、植物園、子供アスレチック公園、嘉義市立棒球場(野球場)、忠烈祠、阿里山森林鉄道21号蒸気機関車などなど。
ですからなかなか楽しめるんですよ。すごくいい場所で、もし嘉義にきたら必ず寄りたい場所です。散歩すると日本との違いを肌で感じます。草木が日本とは全く違うんですね。
実は嘉義には北回帰線が通っています。亜熱帯と熱帯の境目ですね。ですからこの公園の豊かな緑も実にそれっぽいです。植物オンチの私が見ても明らかに日本の山や公園とは違います。
今回は詳しく述べませんが、嘉義市の下寮村というところには北回帰線標塔があります。
さて、正面を入ると右手に噴水池があって、台湾には珍しい小便小僧(台湾では「尿尿小童」)が立っています。そうして、嘉義の有名画家・陳澄波の絵が何枚もイーゼルにキャンバスといった感じで飾られています。
さらに小川やそこにかかるアーチ型の橋なんかを渡って緑の中をしばらく歩きますが、この風情がまた実にいいです。そうして進んでいるとほこっと孔子廟が現れます。
奥に続く道がどの道がどう続くのかちょっとわかりにくいのですが、大きくは、入り口から左道の植物園側と右道の文化遺産と射日塔側だと思います。
ここの孔子廟は台南の記事に詳しく書いている孔子廟敷地の典型的な配置とは異なり、所謂大成殿があるのみでこじんまりしています。
さてさらに奥に進むと、忠烈祠の大門が見えてきます。そして大門をくぐると、なんと神社の参道が現れ灯篭が並んでいて、左手には手水鉢がそして右手には神社社務所が!
そうです、ここが嘉義神社の名残なんですね。社務所は現在歴史資料館となっていますが、私が訪れた時は工事中で閉まってました。
そして、この神社の境内こそが映画KANOの頭の部分で近藤監督が嘉義農林の野球部部員と顔を合わせた場所です。今ある場所は元より少し移動していて本殿もなくなっていますが。
しかし、忠烈祠の大門の隣に嘉義神社って、まあなんというミスマッチ! これも日本統治そしてそれに続く中国国民党統治という歴史そのものですなんですね。よくぞ嘉義市は保存してくれていましたね。
参道をまっすぐに歩いて行くと、目の前には射日塔が現れます。入り口には勇猛で怖そうな雲豹が左右にいます。雲豹って架空かと思ったら、ちゃんと実在するネコ科の動物なんですね。別名台湾トラだとか。
実はこの敷地に元の嘉義神社があったんです、それが忠烈祠に変わり、さらにその跡地に建っているのが射日塔なのです。
階段が2階に続いていてそこが入り口になっているために気づきにくいですが、1階は今も忠烈祠であり烈士の位牌が眠っているそうです。
2階のサービスカウンターのお姉さんがとっても気さくな方で、下手な英語ともっと下手な北京語でしばし楽しくおしゃべりをしました 。
この射日塔の高さは65mとさほどでもないのですが、結構嘉義の街をパノラマで一望できるんです。もちろん嘉義公園もよく見渡せて、なんというか落ち着いたいい眺めですね。街に高いビルがないからかもしれません。
展望台の床の一部が透明で下を見下ろせるようになっているのですが、これが妙にこわくて、ちょっと変な感覚です。足がすくむな〜と思いながらまた見てしまう、みたいな^^
さて公園もだいぶ奥までやってきたわけで、結構体が熱いかもしれません。展望台にはカフェがあるので冷たい飲み物で一服しましょう。
展望台を出たら、植物園を回って入り口まで戻りましょうか。その反対側からなら、野球場の側を通ることになります。
この野球場の前に立ってましたよ。「威震甲子園」と書かれたバットが。ここは昔の嘉義農林の側なんですけど当時は何だったのでしょうか。部員はこの辺りで練習したのでしょうか?
そういえば、嘉義農林野球部は台湾代表として日本に行くので、映画KANOでも当然甲子園球場の激闘シーンがありますが、実は全部台湾での撮影なんですよ。よくできてますよ〜。
実寸大の甲子園球場を高雄市内で作って大勢のエキストラを動員しての撮影だったそうです。台湾の台湾人による甲子園だけれど違和感がまるでないです。もちろん要所は日本人俳優が固めてますが。それにしても頑張ったな〜って拍手したくなります。
中央噴水池と噴水雞肉飯
嘉義農林の野球部員が「こ〜し〜えん」と叫びながら走っていたシーンに出てくるのが、この噴水広場です。
映画の最初の方では噴水が工事中でまだ出来てはいませんでした。ここから水が噴き出すのは烏山頭ダムが完成して放水が始まった時でした。
また甲子園出場をかけた台湾予選で優勝した時の凱旋パレードに登場した場所でもあります。このシーンはオススメで、よく当時の街並みが再現されています。
というのも、統治者が国民党になってから学校の歴史の時間は中国の歴史だけで日本統治時代のことなど全く教えなかったからです。台湾の友人から何度も聞いてます。
従って日本統治時代を再現した映画もほとんどないそうです。しかし今回のKANOの時代背景はマトモに日本統治時代ですから、町並みの再現一つとっても苦労したんだろうなと思うわけです。
そういうわけで噴水広場だけではないんですが、映画の中で当時の街並みが非常に心に残ります。今は写真のように噴水の真ん中で呉明捷投手が投げています。
このロータリーを東に行くと嘉義公園が、そして元嘉義農林だったところがあります。また西に行くと台湾鉄道の嘉義駅に至ります。
さて、噴水ロータリーといえば「噴水雞肉飯」というお店です。嘉義市の代名詞になっているほど超有名店です。
この店に限らず嘉義市といえば雞肉飯のふるさとで、街を歩けば「雞肉飯」とか「火雞肉(七面鳥)飯」の看板だらけです。
そんなわけで非常に期待して入った「噴水雞肉飯」ですが、はっきり言って印象最悪です。あんまりお店の悪口なんて書かないんですけどねぇ・・
- 写真では伝わりにくいかもしれませんが汚い。
- 注文票がなく値段もわからない(壁に値段一覧があるらしいが見えない)。
- すべて口頭なので滅茶苦茶注文しにくい。
- 支払いも言われるがままで正しいかどうかもわからない。
超有名店になってしまって激混み状態が続くので、すべてがぞんざいになってしまったのでしょうか。初代は苦労したでしょうに。
決して昼時に行ったわけではないのに食べている気がしませんでした。味はちょっと食べつけない香辛料が入ってますがまあまあです。それ以上のことはありません。
嘉義市滞在中に他の(火)雞肉飯の店も何件か行ってみました。そのうち推薦できるのは、台鉄嘉義駅の前にある「嘉義火雞肉飯」かなあと思います。
ここでは火雞肉飯ではなく、写真のように雞腿飯を食べました。食べ比べた店の中では一番食べやすく美味しかったです。雰囲気も家庭的に良かったです。
檜意森活村
比較的最近できた施設で、日本統治時代林業に携わった人たちの木造家屋を移築して28棟集めた場所です。歩けば懐かしい風景に包まれます。日本国内でも似たような施設はあったような。
敷地面積が約1万坪と相当に広く、各家屋にはもういろんなテナントが入っており、雰囲気を活かし工夫を凝らして様々な展開をしています。
地元や原住民関係の或いはそれ以外の民芸品やお土産やお茶。アクセサリー・小物。カフェに飲食店、日本の食堂みたいなお店もあります。
それから各種展示館。世界の古い玩具とか日本時代の文化を集め展示しているところとか、そういえば和服展示のお店は着付けをしてましたね。もう色々。
一見「日本のなんとか村」みたいでも、じっくり観察すると台湾色が随所に発見できて楽しいです。商品や展示品もそうですが、なんて言うんでしょう、感性の違いが面白いです。
ここに私が目当てだった「KANO故事館」もあります。
「KANO故事館」は近藤監督の自宅セットを再現しており、映画を見ていてこそ価値のある場所です。見てから来れば、きっとシーンが蘇りますよ。
私は、近藤監督の妻・近藤カナヱを演じていた坂井真紀さんの顔を思い出しました。この家の中でそういうシーンがあるのですよ。
特に、子どもを介して夫婦で将棋をしているシーンとその後のお茶のシーンは非常に印象的です。
亭主関白たる日本男児はそれが独立して存在しているのではなく、しっかりと支え続ける妻がいればこそ成立する、みたいな。坂井真紀さん、名演技でした。
「KANO故事館」は映画関連品のショップもあり、私はTシャツとマグカップを購入しました。スタッフがとってもフレンドリーで楽しいひと時でした。
各種展示館は全部調べたわけではありませんが、大体30〜100元程度の入場料が必要です。
「KANO故事館」以外で嬉しかったのは、「森珈琲」というカフェで飲んだ阿里山珈琲です。あんまり美味しいから、ちょっと質問したら阿里山珈琲というじゃないですか。
まさか、こんなところで阿里山珈琲を飲めるとは! こういった施設ではいい加減なものしか食べられない、適当なものしか飲めないといった意識があったのでしょうね。本当にすいません。
その他、「KANO故事館」を含め展示館は時限的なものが多いようです。また、不定期にイベントや撮影会なども行われているようなので、運が良ければ出会えるでしょう。
それとは別に、台湾人は結婚記念写真を撮るのが大好きなので、きっとここでも見られるはずです。何回か経験がありますが、そういう場面に出会うのもいいものですよ。
さて、外観だけさらっと見て回るのと、時間や多少お金がかかってもじっくり体験するのとでは、かなり印象や評価が変わると思います。
もう一つ、台鉄嘉義からは歩いて20〜25分前後ぐらいで、バスも駅正面(西側)から出ています。私はタクシーで行きました。メーター倒さずに「100元」というので、まあいいか^^です。
住所:嘉義市林森東路1号
電話:(05)276-1601
HP:http://www.hinokivillage.com.tw/
八田與一と烏山頭水庫
烏山頭水庫の場所は、台鉄台南駅から北へ7つ目の駅又は台鉄嘉義駅から南へ7つ目の駅、そう、ちょうど真ん中にある隆田駅まで電車で行きます。
従って、今回の記事は映画KANOゆかりの地の記事として嘉義市中心になっていますが、烏山頭水庫だけは嘉義市からは随分離れていることになります。所在も嘉義市ではなく台南市です。
映画でも描かれていますが嘉南平野一体は年間降水量が少なく灌漑設備もないために農家は大変だったんですね。
この問題を解決するために作られたのが烏山頭水庫そして嘉南大圳、その技師として日本から送られたのが八田與一です。
苦難の連続を乗り越えてダムを完成させた八田の凄さは別記事(今も台湾に残る日本統治時代の建物と心を紹介します)に書いています。
映画では、完成したダムの放水口を始めて開けて勢いよく水の吹き出している様が、また、水路に流れ始めた水に乗って、大沢たかお演じる八田が嘉義農林野球部の生徒たちに手を振って話しかける様が印象的です。
八田は1942年にフィリピンに向かう船上、アメリカ潜水艦に撃沈されなく亡くなりました。妻外代樹は1945年9月1日ダム工事開始25周年のまさにその日に放水口に身を投げて後を追ったのでした。
繰り返しになりますが、嘉南平野にとっての水問題がいかに大きかったか、映画でもサブストーリーとして割と丹念に追っていることからよくわかります。
さて、八田與一の座った銅像がダムを見下ろすようにあります。この銅像は1931年に制作されたものですが、再び日本を語れるようになるまでまで地元の人が隠しておいて1981年に元に戻されたそうです。
銅像の背後には八田夫婦のお墓があり「八田與一・外代樹之墓」と刻まれています。墓も地元の方達が建てたものです。
これほどまでに地元の人たちに愛され尊敬され、教科書にさえ載っている人物を日本ではほとんど語られないって、なんか不思議ですね。
八田與一像のそばには工事当時に活躍した蒸気機関車があります。そして車の通れない堤防上の歩道を歩いて行くと、中正公園や遊覧船乗り場や管理事務所があります。
(車の通れない堤防部分は結構長いです。堤防の下の道は車が通れるので歩行部分をカットしても問題はないですが、風景がとてもいいので是非歩いてみてください。)
そこから吊り橋を見て天壇公園へと行き、シャンゼリーゼ通りと呼ばれる南洋桜の並木道を抜けて送水センター(放水口)へと到達します。晴れた桜の頃のシャンゼリーゼ通りは綺麗でしょうね。天壇内は資料室になっています。
映画での放水式は感動的でしたね。記憶に鮮明だったのでいい角度で見たかったのですが、工事中でそこまでいい角度では見ることができませんでした。
しかし側にある八田技師記念室で見せてもらった、日本人用に作られたダムの歴史動画にはいたく感動しました。その内容とそれを製作した台湾人の感性に対して。
最後に八田與一記念公園に行きました。ここには八田與一一家が実際に住んでいた建物と何件かの官舎が復元されています。
非常に綿密に考証されているそうで、中を見ることもできます。私が行った時は、雛人形と武者人形が飾られており、桃の節句と端午の節句が一緒に来てました^^
建物全体が良く管理されておりとても綺麗でした。そういえば池を含む庭も日本の美が良く再現されてましたね。
また、公園内にはちょっとした飲食ができる休憩所もありました。
実際に回った順番にお話をしましたが、巡る範囲が広くてタクシーなしには無理です。仮にダムまでバスがあったとしても無理です。
隆田駅にタクシーがいるので行き先を伝えれば運転手さんもよくわかっています。料金についてですが、私の場合は、運転手さんに「3時間800元」と印刷されたA4の紙を見せられました。
高雄市の友人に「値段は交渉すればいい」と教えられていましたが、しませんでした。事後交渉でいいならしたかもしれませんが。
移動ではなく案内してもらうとなると、運転手さんの良し悪しがかなり記憶に残ります。言葉もろくにわからない不案内な場所に行く日本人にどれだけ親切でどれだけ気を利かせてくれるか。いつもそこが気になるんですよね。
結果的にはものすごく親切にしていただいて、とても良かったと満足しています。
ちょっと不便で時間もかかるのでお気軽にというわけにはいきませんが、あなたもいつかは行ってみてくださいね。映画を見てからなら尚いいです。
住所:台南市官田區嘉南里68-2号
電話:(06)698-2103
HP:http://wusanto.magicnet.com.tw/
園内:7:00〜18:00(11月〜2月は17:30まで)
年中無休
八田技師記念室:9:00〜17:00
八田與一記念公園:9:00〜17:30(月曜休み)
天壇:9:00〜17:00
以上で映画KANOゆかりの地は終了です。最後に、新しくできた国立故宮博物院南部院区についてのお話をします。
国立故宮博物院南部院区
台湾南部にも文化の中心地を作りましょうというコンセプトで、2004年12月に国立故宮博物院南部院区の建設が決まりました。
台北市にある国立故宮博物院は主に国民党が中国から持ってきた品々を展示していますが、こちらは台湾のもの、そして広くアジアの芸術・文化をテーマとするそうです。
当初の計画では2008年竣工の予定でしたが、それが伸びに伸びて、2016年4月にやっと正式オープンの運びとなりました。
2015年12月28日から2016年3月31日迄は試験開業期間中で完全予約制ながら無料です。私は2016年2月に行ってきたのですが、建物こそ完成しているものの敷地一帯はまだ工事中でした。
敷地総面積はとにかく広大です。奇美博物館の敷地も物凄く広かったですが、ここも広い! 完全完成した暁には再度行ってみようと考えてます。
平面図を見ると出入り口は3か所あるみたいですが南側がメイン玄関です。奇美博物館と一緒で、入り口から建物までが遠いです。
まっすぐ歩いて少しすると至善湖という人造湖に行き着き、そこで左に曲がって更に進むと至善湖にかかる至美橋を渡り博物館へと入ります。
この至美橋と博物館は相当に意を凝らしたデザインで当博物院の自慢でしょう。
至美橋は文字の草書体をデザインに生かしているとのことですが、なるほど優美な曲線を描いています。
博物館の建物は、中国水彩画3つの技法が展示空間・収蔵庫・公共空間を結ぶ連結空間によって形成されて、また、中華・インド・ペルシャの三大文化を象徴している、とありますが事前学習もないまま行ったので全くわかりませんでした。
ただ、曲線を描いた二つの建物が一体になっていて「斬新だなあ」とは感じました。またこの建物は地震対策や水対策には最新の設備・装置を備えているそうです。
博物館の入り口は2階だと思います。そしてエスカレーターで3階に上がって、そこから鑑賞スタートです。各階は天井がとても高くて気持ちがいいです。
そして2階・1階へと降りてくる順路ですね。なんか2階が1階で、1階が地階のような錯覚を起こします。
建物が上記のように2棟が絡んで1棟になっていて、白っぽい方が受付やロッカーやサービスセンターがあって、黒っぽい方が展示館です。
1階にはお土産ショップやレストランがあります。また、快適に鑑賞できるように各設備は非常に充実しており、バリアフリーなので身障者の方も安心して鑑賞できます。
展示の方は、常設展示、特別展示、他国文化品を借りてきての展示という大きなくくりになっており、常設以外は一定の期間ごとに変わってゆくものと思います。
何せ世界に通用する大博物館なので、展示スペースも半端なく大きく広く、従って展示のテーマも物も多いです。
写真のようにテーマごとに部屋ごとに長方形の説明書が置かれており、日本語の説明書きが入っているので、これはとってもありがたいです。移動の電車の中や、帰りの飛行機で読むことができます。
そんな中で印象に残っているのは、嘉義発展史。映像での説明がわかりやすかったです。そして日本の伊万里焼と中国明代の青花磁器です。目の覚めるような見事な展示でした。
また特別に台北から翠玉白菜を持ってきて展示しており、これは本当に見られてラッキーでした。
さて、予約が必要なことすら知らないで行ったのですが、しかもその日中に台北に行く日程で大きなキャリーバックを引いていたのですが、追い返されることもなく無事入れてもらえました。
というか滅茶苦茶親切で「とにかくちゃんとしてあげるからね」という姿勢がありありと出ていて、プレオープンで練習中なのに、よく訓練されていてちょっと感動しました。当然のように日本語喋れる方もいましたし。
おそらくは嘉南平野の農耕地を埋め立てて出来たんだと思いますが、駅からず〜っと新しく整備された道が続きます。
地図で確認するとわかりますが市内からは遠いです。高鉄(新幹線)嘉義駅からはバスで10分くらいです。バスはシャトルバスも路線バスもあって、駅の西側に出ると乗り場はわかります。
不安でしたら駅で確認してから出るといいでしょう。
国立故宮博物館南部院区
参観品質を維持するために、日時指定の予約制となっています。事前にホームページで予約してください。参観当日にチケット売り場で入場券を受け取り、入館します。
住所:嘉義県太保市故宮大道888号
電話番号:05-362-0777
開館時間:本館エリア 09:00-17:00 (休館日:月曜日)
景観園エリア 08:00-21:00 (休園日:月曜日)
入場料:一般入場券NTD250
割引入場料NTD150(国際学生証所持者or青年旅行カード所持者)
無料:障害者とその介護者一名まで(国籍は問わず)
映画KANOゆかりの場所と故宮博物院南部院を訪ねて
写真集です。各場所、たくさん撮っています。ぜひご覧ください。
まとめ
今回は映画KANOゆかりの地がテーマで、映画の中でもそうですが、訪ねた場所場所の多くで、図らずも日本人と台湾人との関わりの歴史を感じることができました。そしてプラス出来立てホヤホヤの故宮博物院南部院の紹介です。
彼らが歴史をこれほど前向きに評価してくれていなければ、こんなに気軽に行くことは出来なかったでしょうし、行く気もしなかったでしょう。
台湾は南下してゆくとどんどん日本を感じます。もしご存知なければ、映画KANOとゆかりの旅がそのきっかけになればいいなと思います。
何度も申し上げていますが、台湾の見どころ食べどころは台北だけではありません。嘉義市はハード・ソフト両面で日本が色濃く残っており感動的な街です。
今回は紹介しませんでしたが、嘉義文化路夜市のような賑やかな夜市も当然ありますし、何より火鶏肉飯が美味しい。
また台湾鉄道の嘉義駅は阿里山鉄道の出発駅でもあります。今は土砂崩れにあって一部区間が不通ですが、世界3大高山鉄道の一つです。阿里山もいいですよ〜。
そいうわけで、是非嘉義観光へいらしてください。
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