目 次
咳・鼻水・痰に対する基本的な理解
私達の最も身近な生理現象として「咳や鼻水が出る」ことが挙げられます。しかし、一口に咳や鼻水といっても症状は単純ではなく程度も千差万別です。
今回は、この身近だけれど場合によってはとんでもない事態のサインにもなる咳や鼻水や痰について調べてみました。
常に外気と接している体内の呼吸器官には、ゴミや体にとって都合の悪い細菌やウイルスも侵入してきます。
そういった異物を体外に取り除くために私たちは咳をします。咳として体内から勢い良く空気を放出することで異物も体外へ出しているのです。
また、気道は異物が直接触れないように粘液で覆われ保護されています。粘液はゴミや細菌やウイルスと絡んで、痰として咳をすることで強い空気の流れとともに体外へ排出されます。
咳が体を守るために必要であるのはよくわかりますが、一晩中続いて非常に苦しく睡眠不足になったり、激しい咳を繰り返して肋骨を骨折してしまったりした例もあります。
一方、鼻に塵や花粉やウイルスなどの異物が侵入してくると、これらを体外に排泄するために鼻水が出ます。
鼻水も咳と同じで体を守るために必要であるのは理解できます。
しかし、一定期間以上続くと「鬱陶しい」と感じ集中力を欠きますし、呼吸もしずらくなります。酷い鼻炎だと鼻水を制御できなくなって仕事どころではなくなってしまいます。
このように、咳が出る・鼻水が出ることは大切な生理現象なのですが、同時に普通に日常を生活をする上でのかなり大きな阻害要因でもあります。
ですから、症状を緩和したい、なくしたいとは思いますが、積極的にそうして良い場合と良くない場合があります。
以下に咳や鼻水を伴う症状について調べてみましたので参考にしてください。
どんなときに咳がでるのか?
出だすと辛い咳ですが、その原因はとっても多種多様です。また症状も一様ではなく、最初はカラッとした咳だったのが、やがて鼻水が出だして痰が絡んだりする事があります。
ここでは、その主な原因を列挙してみました。
- ウイルス感染 最も多いのが風邪とインフルエンザ
- アレルギー 多いのは花粉症や気管支喘息
- 細菌感染 副鼻腔炎、気管支炎、肺炎など
- 肺気腫
- 肺がん
- ストレス 夜中になると体調に異常がないのに咳が出るような場合
- 大気汚染
- 喫煙 煙は容赦なく他人を襲うという意味で最悪の原因
もっともっと数多くの種類があります。さらに、例えば「ウイスル感染」の具体的病名もものすごくたくさんあります。
以下では、咳と鼻水と痰に関連する比較的身近な病気をあげました。一緒に見てゆきましょう。
単なる風邪
- 鼻水が出る 異物排出
- 咳がでる 異物排出
- のどが痛い(炎症) 免疫反応
(以上、風邪の症状3点セット)
更に
- 痰は出ない(初期)
- 黄色がかった痰が出る ウイルスの死骸
- 発熱 免疫力が発揮しやすい温度
というよような症状であれば、一番可能性の高いと疑われるのは「風邪」です。風邪は鼻や喉がウイルス感染することで発病します。
風邪にかかったら確かに鬱陶しい日々が続きますが、普通に体力・免疫力があれば、だいたい一週間くらいで治るのは誰しも経験上知っていますね。
そして大切なことは「風邪を治す薬はない」ということです。ないんです。もし風邪を治す薬を作れたらノーベル賞確実っていいます。
もう一つは、鬱陶しい上記症状は全て回復のためには必要なんですね。必要である以上、出来れば止めるような対処はしないほうがいいわけです。
知り合いの医者も「風邪引いても薬は飲まない」と明言しています。
そこで、風邪をひいた時に心がけることを並べますと「風邪を追い出す6か条」
- 寝るのが一番 体内では頑張って戦っているので、その間は出来るだけ暖かく安静にしているのがいいです。
- 食事も大事 消化で負担をかけないために、栄養豊富な吸収しやすい食べ物を摂る。
- マスクをする 乾燥を避けます。マスクによってある程度の湿度を確保します。冬であれば室内で加湿器を稼働することも有効です。
- うがいの励行 塩水やイソジン溶液でまめにうがいをして、ウイルスを体外に出しましょう。
- 手洗いの励行 こまめに手を洗いましょう
- お酒とカラオケ禁止 喉が荒れて炎症を起こしているので悪化するような行為は控える。タバコは論外。
そうして回復してきて諸症状が収まってきても、喉が過敏になっていて咳だけが残る場合もあります。
もし、できることをやって過ごしてもいつまでも改善しない場合は、別の病気が疑われる可能性があります。「おかしいな?」と感じたら耳鼻咽喉科や呼吸器内科で受診するのがよいです。
もちろん忙しい社会生活の中で上記すべてができる人は少ないかもしれません。事情に合わせ、できることを励行しましょう。
風邪をひくと更に・・「急性副鼻腔炎」
鼻の穴(鼻孔)の周りには空洞部分が4ヶ所あります。これが左右にあるので合計8ヶ所で副鼻腔といいます。
副鼻腔の名称
- 前頭洞(ぜんとうどう) 眉毛の横・上にある
- 篩骨洞(しこつどう) 両目の間、目の横にある
- 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう) 篩骨洞の奥にある
- 上顎洞(じょうがくどう) 目の下にある
風邪の原因である細菌やウイルスで副鼻腔が炎症にかかると急性副鼻腔炎になり、鬱陶しい鼻づまりやネバネバの鼻水、咳や痰といった症状になやまされます。
慢性化すると更にやっかい→蓄膿症
また、風邪が治りきらずにぶり返したりして炎症状態が3ヶ月以上続くと慢性化して蓄膿症(慢性副鼻腔炎)になる可能性があります。
よく御存知の通り、ぼ〜っとして集中力を欠くような状態になり、更に放置すると中耳炎を併発することもあり、完治しにくくなっていくので早めの治療が必要です。
副鼻腔炎 その他の原因
副鼻腔炎は、実は細菌を伴わないアレルギー性の鼻炎や喘息も大きな原因となっています。また、遺伝的要因もあるとの研究結果も報告されています。
風邪引くと鬱陶しい鼻水
鼻水というと鬱陶しいイメージしかないのですが、鼻の粘膜保護をしなければならないので重要です。
一日の生産量は想像以上に多くて1リットルを超えると言われています。そして加湿保護に使われる以外の不要な鼻水は喉の方へ流れていきます。
喉側に落ちていくことを後鼻漏(こうびろう)といいます。実は、構造上鼻水は喉側に落ちていくようになっていて前には出てこないんですね。
健康体でいる時には気にならない後鼻漏ですが、風邪をひいて上記の急性副鼻腔炎になったり、下記のアレルギー性鼻炎になったりすると一気に問題が表面化します。俄然鬱陶しくなります。
いろいろ出てくる症状とは・・
- 鼻水の量が多くなる
- 花粉症のようなアレルギーの場合は水のようなサラサラの鼻水になって、起きた状態だと鼻からポタポタ落ちてしまう
- 風邪の様な場合は鼻水の粘性が増す
- 喉に絡む、膿が混じる
- 吐き出そうとすると咳を呼ぶ、喉が痛む
- 喉に落ちてくる鼻水の量が多くて睡眠を妨害される
- 口が臭くなる
治療
異常な鼻水を正常に戻す方法は、炎症を治すことです。根本的な原因が風邪なら風邪を、アレルギーならアレルギーを治すことが大切です。
長く放置すると、
- ウイルスの混じった鼻水が気道の奥に落ち込んで気管支炎や肺炎を起こす可能性があります
- 鼻の粘膜が変性してしまいます
風邪にかからないことを含め、長い人生を健康に暮らすためのよく知られた「健康4か条」を再度ご確認ください。
- 8時間程度の睡眠をとる
- バランスの良い食事をする
- 適度な運動をする
- 規則正しい生活をする
毎日の積み重ねは大きいです。自分に言い訳をして不摂生を続けると、いつかは体のバランスがどこかで崩れていきます。今日からでもできることを続けていくことが大切です。
インフルエンザ
インフルエンザは冬に流行します。その理由はウイルスの活動条件や人体の免疫力の動向に関係があります。つまり・・
- インフルエンザウイルスの生存率は低温・低湿度・低紫外線という環境で非常に高くなる
- 体温が一度下がると免疫力が3割下がるといわれており、冬は免疫力が下がりやすい
ということで冬になるとインフルエンザが流行するのです。
その大きな理由は、現代の日本人の平熱が低くなっているからです。体温の低下は免疫力の低下に繋がると申しました。
平熱が低くなってきた理由は・・
- 平熱が低くなった大きな要因は基礎代謝量の低下です。
- じゃあ、基礎代謝量低下の大きな要因はといえば筋肉量の減少です。
- 最後に、筋肉量低下の最大の原因は運動量の低下です。
つまり、日本人は運動量が極端に少なくなってしまったのです。健康4か条を再度ご覧ください。「適度な運動」は本当に大切なのです。
インフルエンザと風邪は違います。初期症状も風邪が「おだやか」ならインフルエンザは「激烈」です。
もしかなり突発的に次の初期症状が出た時はインフルエンザを疑います。
- 38℃を超えるような高い熱が出る
- 激しい悪寒・関節痛・頭痛などの全身症状が出る
- 風邪の症状3点セット(初期症状からやや遅れて出てくることもある)
インフルエンザの場合は症状が激しいのが大きな特徴です。「風邪の症状3点セット」は発症後2〜3日たってから来ることも多く、治りかけの兆候とも言われています。
一方、体力や免疫力の低下している高齢者などは急性気管支炎や肺炎などの二次感染・合併症を起こす可能性がありますので注意が必要です。
医者に行くか?
基本的にはインフルエンザウイルスと戦う免疫力勝負です。もし健康な成人であれば一般的には「風邪を追い出す6か条」で自力回復をします。
しかし症状の酷さによっては、或いは仕事の事情もあるでしょう。もし病院に行く場合は矛盾するようですが、早期に専門医(耳鼻咽喉科や呼吸器内科)での診察が必要です。早期が大切な理由、それは・・
- インフルエンザウイルスの増殖スピードが極めて早い
- よって抗インフルエンザ薬の投与は早いほど効果が期待できる
- 二次感染や合併症を未然に防ぐ意味でも早期治療が大切
ということです。
インフルエンザ感染を重篤化させない、死亡率を低減する、そういう意味において欠かせない存在がウイルスワクチンです。一方、その副作用についてもある程度の理解は必要です。関連記事ではウイルスワクチンの「副作用」についてお話ししています。
マイコプラズマ感染症
マイコプラズマ・ニューモニアエという病原体が原因で起こる肺炎の一種です。
その特徴は
- 潜伏期が2〜3週間と長い
- 咳がしつこい 初期は乾いた咳で長期化すると痰絡みの咳へ変わる。熱が引いても咳は残るケースが多い。
- 熱がしつこい
- 全身がしんどい
- 初期は聴診器で聞いても呼吸音にノイズがない
ということです。比較的若年層・青年層に多い病気で、非常に診断が難しい病気です。
診断が難しい理由は
初期症状は風邪と似ており「マイコプラズマ肺炎」であるという特有の症状がないんですね。
一般的に、菌に感染した状態で血液検査をすると、白血球値や炎症反応値に変化が見られますが、マイコプラズマ肺炎の場合は判別できるほど値が変化しません。
つまり、血液検査では容易に判明しないのです。
正確な検査には時間がかかる
というわけで、やっかいです。しかも代表的な抗生物質であるマクロライド系の薬が効きにくくなっています。それは、菌が耐性をつけてきたからです。
そういう事情も踏まえて、専門医は効きの具合を見ながら薬を選定・変更していきます。
しかし普通の健康体であれば重症化することは稀です。
注意しなければならないのは、高齢者をはじめとする体力や抵抗力の落ちている人です。さまざまな合併症があるので、重症化する前に完治することが大切です。
アレルギー
免疫反応は外敵から体を防御して健康に生きていくためには必要不可欠なものですが、常に体に有利に反応するわけではなく不利な反応もすることがあり、これをアレルギーと呼んでいます。
本当にたくさんのアレルゲン(抗体)がたくさんの症状を引き起こしているのはご承知のとおりです。
ここでは「咳」と「鼻水」と「痰」に関係するアレルギーについて触れていきます。
アレルギー性鼻炎
一番多いのはアレルギー性鼻炎で国民の約2割がかかっていると言われています。アレルゲンによって季節性のものと通年性のものがあります。両方がアレルゲンの人は大変です。
- 季節性のものは殆どが花粉症ですね。アレルゲンとなる草木の花粉が飛ぶと発症します。
- 通年性のアレルゲンはハウスダストが多く、部屋を閉めきってしかも乾燥している冬が悪化しやすい季節です。
いづれにしても
- 目や鼻やのどが炎症を起こし
- 充血して痒みが来て
- 猛烈な鼻水洪水に襲われ
処置をしなければホント仕事どころじゃなくなります。
また、適切な処置なく更にひどくなると喘息などの重い症状へ悪化することもあるので要注意です。
対処法
抗原検査
自分に悪さをする抗原は何か? これは知っておくに越したことはないし、一度は検査した方がいいでしょう。
簡単で多くの抗原がわかり且つアレルギーの程度のわかるのが血液検査です。
もし、あなたがアレルギーに悩まされていて、まだアレルゲンを特定できていない場合は抗原検査はするほうがいいと思います
抗原を避ける
つまり塵やゴミ、花粉といった抗原に触れないようにしましょうということなんですが、毎日徹底するのはなかなか大変です。
花粉対策
- 花粉に対してはマスクにゴーグルのようなメガネ。
- 室内に入る前には衣服や体についた花粉を落とし、
- 入室したら目の洗浄と手洗いうがい。
- またその季節の間は寝具や衣服を外に干さない。
ハウスダスト対策
- 毎日のこまめな掃除と換気
- 性能の良い掃除機を使う(特に排気に微細塵が混じらないことが重要)
- 寝具は防ダニのものを使う
- 寝具はよく干す
薬
治療薬として、
- 抗アレルギー薬
- ステロイド吸入薬
- 点鼻薬
などが処方されます。
下記の私のようにもともと季節性の症状が通年性に変わってしまう場合もあります。状況経過の観察結果を継続的に医者に伝えて理解してもらうことも重要です。
典型的な花粉症で、かつ寒冷蕁麻疹です。
花粉症は、もし何の処置もしなければ上記のごとく大変なことになります。ずっと以前は春限定の症状だったのに、ここ数年は年中突発的に襲ってくるのでたまりません。
寒冷蕁麻疹は、特に関節周りを中心に、とにかくひたすら痒くなります。長年の掻き跡がとても汚いです。以前は寒い時期限定だったのが、いつの間には年中かゆくなっています(温度差アレルギー)。
処方されているのは、朝晩に飲む抗アレルギー薬と塗布薬です。年中飲んで年中塗布してます。薬を使用している限りは症状が殆ど出ずに安定しています。
症状が出た時に飲んだり塗布したりしても即効性はありません。なので、継続的に使用する必要があって、嫌ですが医者の管理下でやっているのでしょうがないと思っています。
気管支喘息
夜半から夜明けの時間帯にかけて喉が鳴り始め(喘鳴)苦しくなり、そして咳がでてなかなか止まりません。
ひどいと呼吸が苦しくなり、もっとひどいと呼吸困難に陥る場合もあります。痰は粘り度合いが強く吐き出しに苦労します。
とにかくしつこいです。発作と発作の間はごく普通である場合が多いので、それで油断しているとどんどん慢性化していきます。
慢性化が進むと気管など空気の通り道(気道)が分厚くなって、それに伴い内側が狭くなります。その分空気も通りにくくなるわけで呼吸がしんどくなっていきます。
ここまで来ると元の健康な状態に戻すのがほぼ困難ということになってしまいます。
原因
多くの説があるのですが、一番一般的で多いのがアレルギーによる気道の炎症が原因ということです。
アレルギーという限りはその原因であるアレルゲンが存在しますよね。
アレルゲンはそれこそ無数にあって、
- ハウスダスト
- 食べ物
- 花粉
- カビ
- 薬
- 動物の毛
- もみがら
などなど。そんな中で多いアレルゲンがダニです。ダニは特に要注意です。
検査
呼吸機能検査
スパイロメーターを使い、思い切り息を吐き続けた推移や肺活量を曲線グラフで確認します。
喘息の場合、息の流れの最大値(ピークフロー)が健常者と比べて低いです。それは気道が狭くなっているからであり、痰が詰まっているからです。
また肺活量も健常者と比べると少なくなっています。
気道過敏性試験
喘息発作を起こしやくすなる薬を使って、発作の起こしやすさの程度を調べます。
アレルゲンの特定検査
血液検査やアレルゲン塗布検査などで特定します。
治療
「喘息予防管理ガイドライン」に沿って、重症度を判断し、状況に適合した薬の種類や強さ・量が決められます。
基本的には
- 毎日の治療と
- 発作発生時の治療
に分けられます。
- 抗炎症薬で炎症を抑え
- 抗アレルギー薬でアレルギー対策を
- 気道確保のために気管を広げる薬を併用します
生活上の注意点
毎日の生活で注意しなければならない点がいくつかあります。他のアレルギー症とかぶりますが
- 出来るだけアレルゲンを除去する。アレルゲンに近づかない。
- 市販風邪薬の成分にアスピリンがあれば、発作が悪化する可能性があるので飲まない。
- タバコは論外、厳禁
- 「アルコール誘発喘息」という言葉があるくらいなので酒も控える
- 健康4か条を実践する
肺気胸
肺の胸膜に穴が開く病気。
一番多い原因は、肺内に出来た空気の袋(ブラ)が破裂して胸膜に穴が開くケースです。原因は不明ですがヤセ型の若い男性に発症が多いです。特別な理由がないので自然気胸とよびます。
なんの前触れもなく、急にに胸が痛みだして空咳が出て息苦しくなります。肺に穴が空くので空気が漏れますが、多くの場合は一時的なものですぐに塞がれます。軽度の場合は特に問題はありません。
問題になる場合は
- 再発を繰り返す場合
- 空気が漏れ続ける場合
検査
- レントゲン検査と
- CT検査です
治療
重症度に応じて
- 経過観察
- 空気を抜く 肺に針を指したり胸腔ドレナージを行って肺に漏れた空気を抜きます。
- 手術 再発する場合或いは上記治療結果が思わしくない場合。主流は胸腔鏡をつかった手術です。
肺気腫(COPD)
肺胞間の壁が破壊されると多くの肺胞が弾力性をなくした一つの袋のようになります。こういう肺胞の集まり(機種性嚢胞)が多く存在する状態を肺気腫といいます。
肺気腫になると肺胞が破壊され、その結果正常な肺胞が少なくなって呼吸に難が生じてきます。
原因
ほとんどの人は長期に亘る喫煙が原因です。その他大気汚染、呼吸器系の疾患、年齢・体質などが原因として複合する場合もあります。
症状と急性増悪
肺気腫になると常に咳・痰・息切れといった自覚症状がでます。50歳以上、特に60歳以上に多く見られる病気です。
そして、感染症や気温変化や過労などをきっかけとして、症状が急に悪化することがあり、これを「急性増悪」といいます。
急性増悪になると
- 咳・痰・息切れがひどくなり
- 肺や全身の状態が著しく悪化し
- 生命の危機に瀕することもあります
また、その際に
- 脳卒中
- 腎不全
- 心不全
などの余病併発にも繋がる可能性があります。
検査診断
今までの風邪やその他の解説を思い出すと、症状に似たような部分があると感じますよね。肺や気道に関する疾患は同じような症状が出るので切り分けが大切です。
そのために
- レントゲン検査
- CT検査
- さらに上記のピークフローの検査
なども合わせて行います。
治療
恐ろしいことに肺気腫を治す薬はありません。
したがって
- 薬によって気道を広げたり
- 痰の切れを良くしたりするとともに
- インフルエンザが急性増悪を要因となるのでワクチンを接種するようにします。
そして急性増悪になってしまった場合は
- 酸素吸入
- 人工呼吸器装着
- 点滴
などの措置を取ります。
生活上の注意点
進行のスピードを上げないために絶対に守らなければいけないのが「禁煙」です。
実は私の従兄弟がこの肺気腫で亡くなりました。彼は酸素ボンベの生活を余儀なくされて、尚タバコが止められず残念な結果を招きました。
絶対にタバコはやめなければなりません。
抗生物質と風邪薬に対する誤解
風邪に効く薬はありません。
また、風邪の原因はそのほとんどがウイルス性ですが、抗生物質は細菌は殺せてもウイルスには役立たずです。
そんな意味のない抗生物質を飲むことがどれだけ危険か。
- 殺す必要のない細菌を殺してします。しかも飲んだ抗生物質は全ての細菌に効果があるわけではないのです。
- 風邪を引いて抗生物質を飲んで、鼻の中のある特定の細菌がいなくなると別の細菌に取って代わられます。耐性菌です。
- そういう状態で鼻の中で細菌による感染が起こったりすると、今度は本当に薬が必要なのに、その薬が効かない可能性があるのです。
もう一つ、赤ちゃんを例に取りますと
赤ちゃんのリンパ球は沢山のウイルスや細菌に触れて抗体を作りますが、その時に特に必要な物が腸内細菌です。この時期に作られる抗体はその後の人生にはかけがえの無いものです。
なのに風邪を引いたからと、ウイルスに効きもしない抗生物質を飲ませたら腸内細菌を殺してしまいます。
赤ちゃんではもう一つ。アレルギー抗体を作らず正常な抗体をより多く作るという意味からも腸内細菌を殺してはいけないのです。
ただし、抗生物質を使う場合もあります。それは、例えば高齢者で弱っており抵抗力が落ちていて二次感染を予防しなければいけないと判断される場合などです。
いずれにしても、そういった判断は専門的なものであり、私達がするものではありません。
抗生物質以外にも、素人判断で薬を服用することの危険と意味の無さについて述べます。
- 風邪というと簡単に市販薬を飲む人がいますが、先に述べましたように風邪に効く薬はないのです。「症状の緩和」としか書かれてないでしょう?!
- 市販の風邪薬は多くの症状に対して薬剤が調合されています。あなたの今の症状にあわせているのではありません。風邪の症状三点セットは上記のようにいろんな病気ででます。どんな副作用が発生するかもしれません。
- 更に、解熱剤をむやみに服用するのも良いことではありません。
- 咳や鼻水をむやみに止める薬の服用もよくはありません。
そもそもどうして熱なんか出るのでしょうか?
それは免疫能力を高めるためです。平熱に対して体温が一度上がると白血球の働きは5倍以上にもなるのです。
だから、高熱が必要だという体の判断に対して、むやみに解熱をすることはまずいわけです。
どうして咳や鼻水が出るのでしょう?
風邪の諸症状である咳やどんどん鼻水が出る現象も痰がからむのも、ウイルス排出という大切な理由があるのです。
以上から結論として、
- 一週間以上も症状に改善が見られない時は
- 諸症状が生理的に耐えられない時は
安易に薬をのむのではなく医者に判断してもらうのが一番です。
風邪を引いて薬を飲む医者は、まずいません
それよりも平常から毎日の生活の中でやるべきことをきちんと履行することが大事です。
- 手洗い
- うがい
- 睡眠
- バランスの取れた食事
- 適度な運動
- リズムある生活
などなど。
「そんなのは理想論だ、何の役にも立たない。私は変則勤務で休日も少なくて、睡眠時間も十分に取れなくて、食事をとる時間もまともになくて・・・」とボヤキが出る方もいるでしょう。
大切は事は、現実の生活の中で出来ることをきちんとすることです。手洗いやうがいが出来ない生活はないでしょう。
過酷な労働条件という意味では私も銀行員時代にさんざん経験してますからよくよくわかっています。
不用意に飲む抗生物質の危険
かぶりますが大切なので再度お話をします。
抗生物質はウイルスに効果はありません。飲むと一部の細菌に効果が発揮されます。しかし、これは何を意味するのか?
もともと体は細菌だらけです、腸の中も体の周りも。人体の健康は細菌とともに、という側面があります、「善玉菌」という言葉があるくらいですから。
また、自然は体内外の無数の細菌種類のバランスを保っています。バランスを保っている、というところが大切です。
不用意に抗生物質を飲むことは、この自然バランスが崩れる可能性の発生を意味します。つまり、死んだ菌の代わりに耐性のある菌が置き換わります。
バランスの崩壊ともう一つ怖いのは、こういうことを繰り返すと、耐性のある菌がどんどん増えていき、本当に治療が必要なときに抗生物質が効かなくなることです。
抗生物質信仰
抗生物質を含め、とにかく「薬を飲む」ことが治療だという根深い信仰が日本にはあります。何故そうなってきたのでしょうか?
- その理由の一つは、製薬会社の過剰なコマーシャルです。製薬会社は薬を売るために繰り返し刷り込みを行います。
- 一方、一部の医者もかなり安易に不要な薬を出してきた経緯があります。それは医療制度の根深い問題でもあります。
- 医者が処方しなくてもいいと判断しているのに、「解熱剤をくれ」「抗生物質をくれ」と強引に要求したり、懇願したりと処方されなければ帰らないという患者もいて、医者も辛い立場です。
もしお心当たりがあれば、一度再考してみる必要はないでしょうか?
まとめ
咳と鼻水と痰に関係する身近な病気のお話、どうだったでしょうか。全ては呼吸器・気道の病気です。関連するどの病気も症状がとてもよく似ています。
もし十分な体力や免疫力が普段から備わっていれば、風邪やインフルエンザなどはむしろ病院には行かなくていいのですね。
ということは、健康維持がとても大切で生活の大前提で、やはり普段から「健康4か条」を実践していくことが大切だと思うのです。
しかし、咳や発熱の程度の深さや期間の長さによっては、それが重大なシグナルになっている場合もあるので、そんな時は迷わずに診断を受けることが必要ですよね。
私がそうだったので自戒の念を込めて申し上げますと、仕事第一主義で他のことは全部いい加減という生活は、一旦調子が狂うと無茶苦茶に危険です。
自分のためにも大切な人のためにも一つしかない体を壊さないように気をつけて生活しましょう。
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