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池上郷という場所
この記事は台東県の北に位置する池上郷の観光記事です。
日本の台湾観光番組が台東県を紹介することはほとんどありませんが、ごく稀に、知本温泉と池上郷は紹介されています。
知本温泉は有名な温泉として、池上郷は池上米、そして池上弁当発祥の地としてでしょうか。
実際に池上郷に行くとよくわかりますが、一面田んぼです。ここで採れる米が台湾一美味しくて、台南とともに台湾を代表する穀倉地帯です。
池上は、ただの田んぼだらけなだけなのに、その風景はとんでもなく美しいです。そして、この池上米を使った弁当が台湾でダントツに有名で、わざわざそれを食べるためだけにここを訪れる人も多いのです。
またもう一つ、台湾人なら誰もが知っている池上郷のとある場所があります。テレビのCMがきっかけで爆発的に有名なったところです。
とは言えそこにあるのは、延々と広がる田んぼの中にどこまでも真っ直ぐに続く道、そしてそこにぽつんと佇む一本の木だけです。なぜこの場所がそんなに有名になったのでしょうか?
この記事は、池上弁当と田園サイクリングを話題の中心にして展開していきます。
池上郷ってどんなところでしょう? では早速→→→→→
交通手段
台北からだと台湾鉄路の一番早い特急(普悠瑪号)で約3時間半くらいかかります。
ですから日帰りで池上に来ることのみが目的という人はいないでしょう。が、池上に寄ってから台東市に入るという方はおられるかもしれません。
もしくは、飛行機か列車で、先に台東市に入ってから、台東旅行中に池上に来られることはあるでしょうね。
台湾鉄路の切符購入方法や台東への来方、あるいはツアーについては以下の別記事を参考にしてください。↓
台東からのバス
次に、台東市内からバスで行かれる場合について説明します。
時刻表はこちらのサイト(県東客運山線)です。ご覧になる時の注意点として、同一方面の別路線が幾つか表示されているので、間違わずに台東と池上のものを見てください。
時刻表の中の単語で・・・
- 起站:出発駅
- 迄站:到着駅
なので、台東発か池上発かをよく確認してくださいね。
所要時間はだいたい1時間半くらいです。始発乗り場は、台東転運站です。↓
現地に行けばわかりますが、バス乗り場は細長くなって沢山の停留所があって、その中のNo.3が池上方面行きです。
運賃については、時刻表の中の県東客運山線営運区の部分をご覧ください(記事作成時は160元)。
伯郎大道サイクリング
池上が台湾中で有名になったのは、池上米を使った弁当ともう一つ、伯郎大道の存在があります。
それは、水田の中にどこまでも真っ直ぐに伸びる道、そして、道端にぽつんとある一本の木。ただそれだけなんです。いや、実際それだけ。
2つのテレビCMが池上の水田風景を有名にした
この場所が最初に有名になったわけは、台湾を代表するブランド、伯朗咖啡(Mr. Brown Coffee)のCMロケが行われ、その映像美に台湾の人たちが感動したこと。
あまりに美しく、翠綠的天堂路(天へと至る緑の道)と呼ばれるようになりました。とともに、伯朗咖啡のCMに使われたことから伯朗大道とも名付けられたのでした。
この記事を書くにあたり、そのCMをかなり探したのですが、元々伯朗咖啡のCM本数が多いこともあり見つけることができませんでした。
実は伯朗大道が有名になった理由がもう一つあって、それが金城武出演のEVA航空のCMでした。実質的にはこっちの方がインパクト大だったかも。
非常に散文的なCMですが、ちょうど0:50〜1:05あたりが正に池上の伯郎大道、そしてお茶を飲んでいる側に立っているのが金城武樹なのです。
まあ、何回見ても思い出しても美しいということなんでしょうが、実際美しいですね。
とにかく人っ子一人いない雄大な水田風景なのに、そこにだけ人たちが群がっています、そしてEVAのCMと同じように金城武樹の側で腰掛けて写真撮るのがお約束。
台湾を代表する歌手、蔡依林の名をとった木が金城武樹の南200mくらいのところにあります。蔡依林樹がここに遊びに来たことがきっかけで命名されたのかな?
台湾人以外はあまり知らないかもしれませんが、これを機会に覚えておいてもいいかも。
よかったら蔡依林の歌も聞いてくださいね。ヒットした曲はいっぱいあります。
池上郷のサイクリング
さて、今説明したことがあまりにも有名なので先にしましたが、実は、ここでフォーカスしたいのは伯郎大道と金城武樹ではないのです。
それを含めた、池上郷のサイクリングこそ大々的にオススメしたい観光なのです。
池上駅付近には貸自転車の店がたくさんあるので、どこか良さそうな自転車を置いているところで借りて、そしてスタートです。
実に走りやすいサイクリング道が整備されていて、しかも休日でなければほぼ独占状態です。そういえば、伯郎大道のあたりは電柱が一本もない。
サイクリング道でないところも通りますが、全然心配不要です。ゆったりしたもんです。
目前に広がる広大な水田と、目を上げれば西に中央山脈、東に海岸山脈と、その神様がくれたかのような絶妙のバランスですね。
泣きたくなるほど美しい景色の中を美味しい空気を胸いっぱい吸いながらゆったりと走る贅沢は、体験してみなければわかりようがありません。
駅からスタートして大坡池をぐるっと半周し、やがて伯郎大道に到達すれば、また駅まで別の道を戻る。大雑把にいればそんなルートで、だいたい12kmくらいです。
そして、目と心が満足したところで、次に、池上弁当を食べにゆくのです。
駅前で自転車を借りて800m程南東に走ると大坡池が見えてきます。これは人工池ではなく自然の恵みです。
台東県が管理しており、とても美しい風景の一部を担っています。
日本統治時代は約17万坪ほどあったのが、戦後、池の水を利用するために大坡大排水溝を作った影響で水が流れだし、今では6万1千坪ほどに縮小しています。
そうはいえ、きちんとした管理下、自然環境はすこぶる良くて、鳥やカエルや淡水生物の宝庫になっています。
そんな良環境と美しさを保ちつつ、憩いの場として人々に愛されれ、多くの方が植物や生き物や鳥の観察、ボート、釣り、ウォーキングなどを楽しんでいます。
で、我々が観光者として訪れた時は、やっぱりサイクリングです。
池の周辺のサイクリングロードが完璧に整備されていて、綺麗な池を眺めながらゆっくりとペダルを漕ぐのは本当にいいものです。
私は上記の伯郎大道に行く途中ここを通り、あまりに美しくて何回も立ち止まりました。
太陽光が厳しいので、シーズン的には11月〜2月くらいが気温的にちょうどよく、天候も比較的安定しています。
但し、まったく日陰がないので必ずお水を持って、そして気になる方は紫外線対策が必要です。
池上米と池上弁当
台湾のお米の歴史
台湾には、日本統治時代以前から栽培していた長粒米(インディカ米、日本統治時代は「在来米」と呼んでいた)という品種があります。
長粒米は細長い形状で、粘り気が少なくパラパラっとしているのが特徴です。タイ料理なんかに出てくるアレですね。チャーハンにするとうまい。
また長粒米は、台湾名物のビーフンの原材料でもあります。
ところが、日本人が好きなのは水分含有量が多くモチっとした米なので、日本統治時代、それを台湾で作って日本に供給したかったんですね。
そのために品種改良されたコメを当時は蓬莱米(うるち米)と呼んでました。
この蓬莱米が台湾人の口にも合ったために、戦後70有余年にわたって更なる改良が重ねられ、今では台湾の気候風土にあった、病気に強い良品質な品種が多く誕生しています。
この蓬莱米を苦労に苦労を重ね台湾で開発し量産できるように尽力したのが農学博士磯永吉で、彼は敗戦後も請われて台湾に残り、合計実に47年に及ぶ月日を台湾での米開発に尽力したのです。蓬莱米の父と呼ばれています。
歴史には必ず明と暗がありますが、磯博士を悪くいう台湾人はいません。
台湾大学の教授だった彼の胸像が、もう一人の日本人「蓬莱米の母」と呼ばれた末永仁の胸像とともに、今でも台湾大学に置かれています。
その他、台湾人はジャスミンや芋の香りがする香り米も好きなのでこういった米や、台湾料理には欠かせないもち米品種の生産も盛んです。
池上米とは
池上米とは品種のことではなく、池上郷の水田で収穫される米のことで、一種のブランドと言えます。
池上郷で作られている品種は複数あって、
- 高雄139号
- 高雄145号
- 台梗4号
- 台梗9号
- 台東30号
なんかがそうです。
池上米ブランドだけが突出して有名になってしまいましたが、実は、地続きにある関山鎮や鹿野鄉(熱気球で有名)も台東県が誇る台湾有数の米地帯なのです。
いずれにも共通して言えるのは・・・
- 水が汚染されておらず清らかでミネラル成分を豊富に含んでいる
- 土壌も汚染と縁がなく豊かである
- 昼夜の寒暖差が大きい
- 日照時間がたっぷりある
ということで。。。
関山鎮の米は日本統治当時は皇帝米と呼ばれて天皇に献上されていました。
また、鹿野鄉の米は福鹿米と呼ばれ、台湾モスバーガーのライスバーガーの原材料にもなっています。(台湾のモスで一度食べてみてください!)
ということでどれも全然池上米には負けていないのです。しかし如何せん、一旦認められ確立したブランドは強く、結果として池上米だけが飛び抜けて有名になっています。
池上弁当の由来
台湾の東部は昔から交通事情がとっても悪くしかも地形が厳しいせいもあって、なかなか整備がされませんでした。
日本統治時代になってから管制の移民政策事業により、多くの日本人が台湾東部に移民村を作り周囲を開墾していきました。(そういえばハワイやブラジルなんかにも・・)
それがいかに壮絶(風土病や毒蛇など)なものであったかは書物でも映画でも確認することができます。
と同時に、台湾人の中にも東部に移住してくる人が増え、そういう人たちが住み着いた地で活動をしていったわけです。
池上弁当の始まりは、移住者の一人が、茹でさつまいもの潰したものと餅米粉を練って形を整え油で焼いた蕃薯餅を、池上駅で売ったことに由来するとされています。
やがて池上米のおにぎりが販売され、さらに各種おかずと一緒に月桃のでっかい葉っぱに包んだものが売られるようになりました。
そして更に時は過ぎ、月桃の葉っぱが木箱に変わり、それが現在の池上弁当の原型となったのです。
台湾の弁当の普及は凄くて、道を歩いていると、便當や飯包(両方とも弁当の意)の看板を全国どこでも見ることができます。
弁当の中身は日本のようにバラエティに富んでいるわけではなく、だいたい、ご飯の上に大きな肉(ほぼ鶏か豚)を乗せ、その下に、茹で(or炒め)野菜、豆干、魚のすり身天ぷら、香腸、煮卵、泡菜、煮筍などを挟んでいます。
もう一つの特徴は、必ず温められており、これがおいしい大きな大きな要因で、慣れると日本の冷たい弁当は食べにくくなります。
とはいえ、当然ですが、会社ごとにご飯やおかずの味は違います。
さて、その弁当のご飯に池上米を使っているのが池上弁当です。
がしかし、あまりにも池上米がメジャーになり過ぎて、禰子も釈子も台湾中どこでも池上弁当を名乗るようになり(○○池上弁当みたいな)、業者によっては必ずしも池上米を使用していないような話も聞きます。
実は、花蓮から台東に至るまで縦長の穀倉地帯で、それぞれの地方で米のブランド名がついており、池上郷以外は当然別ブランドということです。
池上のすぐ南、關山鎮の米は關山米と呼ばれるけれど、地続きで気候風土ともほぼ同じなのに味がそんなに違うのか?って話です。
だから、絶対に池上郷の米でなければならない、とは思いません。
もちろん、しょうもない業者もいるのでしょう。でもそれは、日本でもどこでも同じことです。
池上弁当 有名な三店舗
池上に行ったら、池上弁当を食べなきゃ意味がないわけですが、そのお店の紹介です。
よく知られているお店は以下の三店です。
- 全美行池上便當・・駅前の通り中正路をまっすぐ南東に50m右手
- 家鄉池上便當・・駅前の通り中正路をまっすぐ南東に50m左手
- 悟饕池上飯包(池上飯包文化故事館)・・駅前の通り中正路をまっすぐ南東に250m、忠孝路と交差する右手
これらの店は日本のテレビでも何回か紹介されていたのを見たことがあります。
一番有名で、よく回転しているのは悟饕池上飯包(池上飯包文化故事館)でしょう。
弁当の中身は上記の通りでどこでも大体似たり寄ったりです。
大体台湾はなんでも甘めに調理し、独特の香辛料も少しは入っています。で、金額は大凡100元までなのでとってもリーズナブルです。
味は・・台湾の弁当って油物のおかずがご飯の上に乗って、それが客の手に渡るまで温められている状態です。
そこを勘案すれば、元々ご飯はいけるし、十分に美味しいと思います。それに僅か100元までですしね。
実際、台湾で夕飯が面倒な時は(特に台北に滞在してる時)弁当を買ってホテルで食べることもしばしばです。いつも安いし美味いと思ってます。
温めているだけに、ご飯がダメだと匂いが鼻についたりするのですが、今まで何十回と食べた中で一度もそういう経験はありません。台湾弁当の米は基本的に美味しいです(50〜60元のものは流石に厳しいかも)。
悟饕池上飯包(池上飯包文化故事館)
この建物は2002年にできたので、もうそこそこ経ってますね。台湾好きなら日本のテレビで見た人もいるのではないでしょうか。
お店が見えると真っ先に目に飛び込んでくるのが、引退した台鉄の列車です。
絵になるのか日本のテレビは、列車の中でも食べられますと実際食べている風景を映します。
まあ、雨の降っている日はともかく、熱帯地方の温室状態になるようなところでは誰も食べないって^^
中に入ると右側に注文所があります。机の上に写真があるので、それを指差せばいいです。日本語は全く通じません。
お金を払ってしばし待つと、作りたてのお弁当を渡されます。
奥に席があるので、そこで食べます。側にある大きな入れ物に入っているスープはサービスです。
ここで紹介している他の二店でも同様にスープはサービスです。日本のお茶はサービスと同じ感覚ですかね?
さて、注文所と食べる場所の間にはお土産コーナーがあるので、食後見てください。
但し、お米は台湾政府発行の植物検疫証明書がないと日本の空港で廃棄処分にされます。その他の制限項目もありややこしいので、持って帰らないが吉です。
もう一つ、ここは池上飯包文化故事館というくらいですから、二階はお米や米作に関する歴史資料館になっています。
台湾の方は誰も上がってきませんが、別に料金を取られるわけじゃなし、もし行かれたなら見るくらい見ましょうよ。
まとめ
池上郷のサイクリング観光と池上弁当のご案内記事でした。
文中でも申しましたが、池上郷の田んぼの中をサイクリングする良さを頭で理解するのは、感動がどんなものかを想像するのはなかなか難しいと思います。
だって、田んぼと池って日本でも別に珍しいわけじゃないですしね。「日本の原風景と言われているところとどう違うのか」とかって質問もでそうです^^
これはね〜、実際に体験してみるしかないです。
晴れた日に、台東県が本気出して計画して整備した場所を自転車でゆっくりゆっくり走って、初めてわかる感動なんですね。
確かに台湾は九州くらいの大きさしかないけれど、それにしてもCMの撮影班はいい場所を探し当てますよね。ホント感心する。
そしてもう一つの名物、池上米を使った池上弁当ね。
ちょっと前までは池上駅でおばちゃんが「びえんた〜ん」って大きな声を出して売ってだんですよね。
確かに、日本の駅弁は千差万別でバラエティーに富んでます。全ての駅弁を食べる旅ってできるのか?ってくらい種類も多いですし。
それと比べれば、確かに台湾の弁当はモノトーンっぽいと言えるかもしれません。でも、だから良いとかそうじゃないって話でもないところが面白い。
日本に帰ってきていても「あ〜、あったかい台湾の弁当食べたいな〜」って時々思うから。
もしこの記事を読んで池上郷に感心を持ってもらえたら嬉しいです。ぜひいつかは池上郷に行ってください。
そして、池上郷の風景を見て回って堪能して、そのあと池上弁当を食べてください。二つ食べたって誰も文句言いませんよ〜^^
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