高卒と大卒の給料の違いは?【生涯賃金という幻にリスクを取るか?】

生涯賃金



大卒の給料はやっぱり高い

結論から言いますと、大卒で一社に勤め続ければ、平均して、高卒よりも給料も生涯賃金も高いです。

なんせ日本の雇用システムは世界に類を見ない特異な世界です。

  • 新卒一括採用
  • 終身雇用
  • 年功序列
  • 定年制度

 

組織の中で生かせる能力さえあれば入社一年目からかなりの高給が期待できる、そういうアメリカのような国で活躍する人達がこの実態を知ればひっくり返るでしょう。

ところがですね、この日本独自の雇用システムには非常にお金がかかるのです。

  1. 生産性を下回る年取った社員に高給を支払うのですから
  2. 必ず多額の退職金を支払うのですから
  3. どう考査しても不要である社員に「退職してください」と言えないのですから

このような結果、正社員は必要最低限の募集で、不足する労力は派遣などの非正規で補う事が常態となっています。

 

なんで、とにかく大卒であれば平均並み以上の生涯賃金を約束されるなんて、とても言えないのです。

にも関わらず、「大卒生涯賃金」を信じて、経済的能力が不足するにも関わらず、無理して進学させるとどれほどのリスクが生じるのか。

以上のようなことを踏まえこの記事では、学生自身、そして、子を持つ親御さんはどう考え判断していくべきかを考察しました。

 

 

進学率が劇的に上昇

1960年代前半の高卒就職率は60%を超えていました。その頃の大学進学率は10%代です。

これが1988年に逆転をし、それ以来大学進学率はどんどんと伸び、逆に当然ながら、高卒就職率は下がっていきました。ですからグラフで表すと丁度「X」のようになっているわけですね。

  因みに、平成元年は1989年、バブル崩壊は1991年3月から始まっています。

 

そして今や、2018年度の大学進学率は53.3%で、短大も含めると57.9%となり過去最高の水準です。10%から約6倍に。

これに対し2018年の高卒就職率は17.3%と、2010年に20%を割って以来ほぼ低位横ばいといった状態です。60%超えだったが20%と1/3に減ってます。

 

統計上では、大卒の生涯賃金が高卒より多いってでているので、やっぱり大卒に期待するんでしょうね。

実は、統計数字にはからくりが隠されているのですが・・・

具体的な数字に触れる前に、もう少し背景を確認しておきましょう。

 

 

時代の変化が凄まじい

では、1988までと以後では、世の中はどのように変化したのでしょうか。

  1. 経済背景:イケイケドンドンの高度成長 → バブル崩壊を経て安定成長<庶民の実感は成長なし>
  2. 変化速度と多層性:成長速度は速くても社会の変化はゆっくりで単層的 → 変化が早く多層的<あまりに早く、戦略を間違うとあのトイザらスですら破産する>
  3. 就職:終身雇用が当たり前 → 新卒の定着率が極めて悪い<労働の流動化がドンドン進む>
  4. 授業料の高騰:国立大学平均授業料 1975年(昭和50年)を1とすると現在は15
  5. サラリーマン平均年間給料:1975年 205万円 → 2012年 473万円
  6. 子供の数:一家に二人三人は当たり前 → 一家に一人どころか結婚さえしない人口が増加している

※上記サラリーマンの年収は、フルタイムの正社員の平均値で、実感よりは高いかも知れません。年収1千万・1億の人も入れた話なので。

 

何れにしても、世の中はびっくりするくらいに大きく変化をしてきてます、これは間違いない。

ここで親御さんと学生本人が注意すべきは、国立大学の学費が40年ほどの間に15倍と跳ね上がっている事

それに対し、同時期比較で、サラリーマンの平均年収が2.3倍にしかなっていないんですね。

 

 

 

学費の高さが半端ない

大学の年間学費が恐ろしいくらいに爆上げされているんですね。上の例のように、国立大学では40年間に15倍とか。

で、その間のサラリーマンの平均給与は2.3倍にしかなってないって、バランス悪すぎでしょ。

 

もう少し具体的な数字を見て考えていきましょか。

平成30年2月に発表された日本政策金融公庫の教育費負担の実態調査によると、大学4年間の入学・在学費用の平均は・・・

697万円

 

で更に、国公立・私立別に見ると・・・・

  1. 国公立:503.2万円(69.2万円<入学費>+434万円<在学費>)
  2. 私立大文系:738.1万円(92.9万円<入学費>+645.2万円<在学費>)
  3. 私立大理系:807.8万円(87.0万円<入学費>+720.8万円<在学費>)

 

金額の大きさに唖然としますね。

もし、子供が三人いて、三人とも大学に行ったら親はどうなるんでしょうね? もはや親は息もできない。

こうやって見てるだけで恐怖心がふつふつでしょ。ゲゲゲの鬼太郎。

 

更に更に、遠くの大学で下宿生活なんてことになると、親は仕送りをしなければなりません。この平均額は・・・

4年間合計 372万円

です。しかも下宿の場合は初期費用も必要ですよ。敷金礼金の類に家財道具代など。これの平均金額は・・・

37.5万円

 

仮に、国公立に入学し下宿生活を4年間すると、その費用の合計は・・・

503.2万円+372万円+37.5万円=912.7万円

となります、一人の子で。誇張でもなんでもなく、これが今現実に必要な金額です。

高校入在学費も忘れないで

高校3年間の平均入在学費用は・・・

238.1万円

なので、高校と国立大学の両方の合計費用は、なななんと・・

1,150.8万円!!!

 

では、このような圧倒的高額な教育費を各ご家庭はどのようにして捻出しているのでしょうか。それを次に見ていきます。

 

 

教育費の捻出方法

平成29年度の調査結果によると、以下のような努力を各ご家庭がされています。

  1. 教育費以外の支出削減:30.4%
  2. 預貯金・保険の取り崩し:22.8%
  3. 在学者本人のアルバイト:19.4%
  4. 奨学金:19%
  5. 残業・パート時間増加:9.7%
  6. 教育ローン:6.6%

 

教育費以外の支出削減の内訳

具体的には以下の項目について節約をしています。

  1. 旅行・レジャー費 61.1%
  2. 外食費 55.3%
  3. 衣類購入費 41.4%
  4. 食費 33%
  5. 装身具 31.1%
  6. 保護者の小遣い 25.9%

各項目とその割合を眺めていると、各ご家庭でいかにやりくりに努力されているかわかろうと言うものです。

 

奨学金破産

そんな中、元銀行員の私が特に気になるのは、奨学金や教育ローンを利用して学費を工面しているケースです。

そういった借り入れに頼ると言うことは、そもそも金銭的にゆとりがない証です。そこに新たな負債がのしかかることになるのですから。


奨学金破産
と言う言葉をご存知でしょうか。返済に苦しんでいる人たちが社会問題になっています。

多くのケースにおいては、最初から返済計画に無理があるのです。

親御さんには親御さんの生活があります。学生本人も社会人になって独立したところで、その生活に追われて返済余力なんて出てこないのですよ。

学生時代にピカイチの能力を身につけて高待遇の会社に就職できればまだいいですが、ローンや奨学金を学費に当てているようなケースでは、在学中もバイトに割かれる時間が多いでしょう。

無理して無理して在学して、そしてごく普通の能力者として卒業して、その後何が待っているか、よくよく考えるべきです。

 

保証のないリスク

2018年のサラリーマンの平均年収は・・・

414万円

仮に、子供が一人の3人家族で手取り月収が約31万円程度だとすると・・・

国公立大学4年間の総費用が912万円でしたから、単純に12ヶ月×4年=48ヶ月で割ると約19万円です。

31万円-19万円=12万円

 

12万円で毎月生活できますか? ここに住宅ローンなんかがあれば、たとえ共働きであっても学生本人がバイトしていても、超カツカツでしょ。(というか無理)

仮に、これでなんとか均衡を保っていたとしても、ほんのちょっとしたアクシデントが発生すれば、たちまち金銭パンクしてしまう状態です。

こんなに大きなリスクを犯すことが果たして正しい選択でしょうか。

 

ここで誤解して欲しくないのですが、お金のある人にだけ入学のチャンスがある格差社会を良いなんて、そんなことは全く思ってもいません。

それはそれで残念な事だけれど、ちょっと足を滑らしただけで家族全体が一生困ってしまうかもしれない選択は、リスクが大きすぎると申し上げているのです。

しかも、大学を無事卒業したところで何の保証もあるわけではないのです。

 

 

大卒と高卒の生涯賃金

下のグラフは、労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計」にある男性の生涯賃金です。

男性の生涯賃金

これを見ると、高卒と大卒の生涯賃金の単純差は・・・

326.4百万円-249.0百万円=77.4百万円

となって、確かに8千万円近くの大きな差が出ています。

 

「やっぱり無理をしてでも大卒でないとダメだな」って思うかもしれませんね。

でもね、このグラフの結果には条件がついていて、それは・・・

  1. 大学を卒業後直ちに就職する
  2. 正社員として一社でフルタイムで60歳の定年まで連続して勤務する
  3. 退職金を受け取る
  4. 退職後直ちに65歳までフルタイムの非正規社員を続ける

以上の四つを全て実現できたとしての結果です。

 

さて、7千7百万円だけが頭の中で一人歩きしていませんか?

現在のように労働の流動化が進み、今後さらにその方向性が鮮明になると予想される中で、上記のような完全終身雇用という前提条件は現実的か?という疑問はありませんか?

それを裏付けるように、大卒後就職して3年以内に3割以上が退職しているのです。たった3年に3割が退職してるのですよ!!!

 

今や、会社側の体制も労働者の意識も大きくカーブして、終身雇用制の時代とは全く別の方向を向いて進んでいます。

もちろん、上のグラフは公の機関が集計作成しているので信憑制がないとは言いませんが、見る側は、それを「普通」と理解してはダメな場合も大いにあると考える必要があります。

 

企業規模別生涯賃金

次に同じく労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計」にあるもう一つのグラフを見てください。

企業規模別生涯賃金

企業の規模別に生涯賃金を表示しています。

 

確かに1,000人以上の正社員を抱える会社において、大卒で勤め上げればそれなりの生涯賃金を得ることができると見て取れますね。

しかし、だからと言って「やっぱり大卒じゃなきゃ」っていうのは再考の余地があります。

全大卒者のうち一体何%がこういった大会社に就職できて、生涯勤めあげられるのでしょうか? 

 

そもそも上記のように、大卒就職者の3割もの人たちが3年以内に退職する世の中です。

この長い棒グラフのような生涯賃金を受け取れる人はそう多くはいない、若しくは、今後ますますそうなっていくと考えることが自然じゃないですか。

 

一方、正社員1,000人未満の会社に就職した大学生はどうなのだろう? ここに目をつけるべきです。

例えば、上の棒グラフで1,000人以上の正社員を持つ会社に就職した高卒者が受け取る生涯賃金と、それ未満の会社に就職した大卒者の生涯賃金を比較してください。

100人から999人の正社員を抱える会社に入社した大卒者の生涯賃金と比較すると、ほぼトントン。

10人から99人の正社員を抱える会社に就職した大卒者との比較では、なんと、先の高卒者の方がかなり多いじゃないですか。

 

しかも、1,000人以上の正社員を持つ会社には大卒と高卒では、どちらが入社しやすいと思いますか? 

大手への就職は大卒者が圧倒的に困難です。有名国立か有名私立の成績優秀者でないと厳しいでしょう。大卒者と言うだけなら幾らでもいるのですから。

 

 

 

大学進学費用と高卒就職収入の差

大卒までにはとんでもない経済負担がかかること、そして、大卒者が必ずしも生涯賃金が上であるわけではないことを解説してきました。

この章では、さらにもう一つ、必ずしも大卒者になることが絶対的選択肢ではないというお話をします。

 

厚労省の賃金構造基本統計調査によると、高卒の初任給は165千円とあります。これに単純に12ヶ月をかけると198万円となります。

ちょっと乱暴ですが、これを元に4年間の給与収入合計を800万円だと仮定します。実際は、もう少し多いような気がしますが、本章ではあまりそこは重要ではありません。

 

さて、4年間国立大学に行った場合の総費用は幾らでしたっけ? 下宿生活だと込み込みで912万円くらいでした。

この912万円のために一家がひっくり返るようなリスクを取るのはどうだろうか?という疑問提示をしましたね。

 

ここでは高卒で就職した場合の、収入・費用の上下差額に着目します。いくらくらい違いますか?

高卒後4年間の収入800万円+大学4年間の総費用780万円=1,580万円

となります。もし「高卒なんて論外」と思っているなら1,580万円を穴が開くくらいみてください。

上下の差が1,580万円て、どれほど大きな金額か想像できますか?

 

少なくとも、既成概念にとらわれて無理に無理を重ねて大学進学をし、結果、親兄弟を含め全員が沈んでしまうリスクを綺麗に消していることに気づきませんか?

 

 

まとめ

この記事では・・・

  1. 大学進学から卒業までの総費用の高騰ぶりが常識を通り越していること
  2. その費用の高騰ぶりがあまりに酷くて従前なら支払えていた家庭でも負担しきれないケースが増えてきたこと
  3. それでも進学させる場合のやりくりが切ないほど大変であること
  4. 支払い能力がないのに無理する事、特に教育ローンや奨学金に頼ることがいかに危険であるか
  5. 公の機関が作成している、大卒・高卒別の生涯賃金集計データが必ずしも実態に即してない事
  6. 高卒就職を選択した場合、家族全員が救われるケースもあると言う事

以上のようなことを説明してまいりました。

 

私は元銀行員であったために、過去、経済的に悲惨な状況を多く目の当たりにしてきました。

なので、「取り返しのつかない事態に発展してはいけない」ということに力点を置いてお話ししてきました。<ここは本当に超超大事です>

※ 経済的に十分恵まれているご家庭で、学生本人もやる気十分で高みを目指せるなら、当然無問題です。従来型の終身雇用型生涯賃金受け取りの対象者になるでしょう。

 

確かに、大卒と高卒のどちらが多く稼げるか?と問えば、単純比較なら大卒でしょう。高卒というだけで面接すらできない会社もあるでしょう。

しかし先にも述べましたが、私の若い頃とは違い、みんな簡単に会社を辞めます。どんどん積極的にリチャレンジする人が多くなってきて、それに対し何の抵抗も持たなくなってきています。

一方、会社は会社で、むしろ労働力の流動化を望んでおり、終身雇用で大過なくやり過ごせば退職金がもらえる場所まで行ける時代は、もはや化石になっていく途中なのです。

本当に欲しい能力を持った人だけ正社員になってくれればいい、というのが本音でしょう。そんな人、大卒者に多くはいない。

 

そういう時代の流れの中で、今後は高卒・大卒の枠にとらわれることなく、スキルを磨く努力を怠らなければチャンスは必ずあります。

学歴よりもスキルという強力な武器を持ち、使えるようにすることが大切です。

大学を卒業して分数の計算すらできない人よりも、4年も早く就職してスキルを磨く努力を継続した人の方がはるかにステップアップできる可能性があるでしょう。起業チャンスも巡ってくるかもしれません。

 

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